ちいかわ、中国でも大人気 背景にあるのは経済停滞と社会不安による“癒し”の欲求?

中国でも長蛇の列『ちいかわ』ストアにファン熱狂

  中国での『ちいかわ』の人気ぶりが話題となっている。きっかけとなったのは、今年の3月29日から上海、4月1日からは北京と、それぞれ期間限定でオープンしたポップアップストアの大盛況を伝えるニュースだ。

 『ちいかわ』は日本のイラストレーター、ナガノが2020年からX(旧・Twitter)で連載を開始した漫画。動物をモチーフとした二頭身のキャラクターたちの日常を楽しく、かわいく、時に切なく描く作風に国内でファンが続出し、単行本『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』(講談社)は累計部数270万部以上を突破。2022年からアニメも開始され人気がさらに拡大し、関連グッズや多彩なコラボも大ヒットしている。

  中国での『ちいかわ』人気はSNSを中心に広まり、中国語版コミックスやアニメも多くのファンに観られていたが、中国国内での公式なグッズ販売はまだ実現していなかった。中国のファンが『ちいかわ』グッズを手に入れる手段はネット上での購入しかなく、値段も決して手頃とは言えなかったそうだ。

  そうした事情もあってか、上海会場の初日は開店前からファンが長蛇の列となり、入場制限もかかるほど。さっそく完売したグッズが続出しているとファンがSNSで投稿している。

  そんな盛況を伝える情報が多い中、『ちいかわ』とコラボした中国の雑貨小売り大手「名創優品」が、公式動画アカウントでコラボグッズを紹介した際に「不適切な表現」で炎上。同社は公式に謝罪し動画を削除、さらに責任者が解雇されたことも明らかとなった。

  また、作者のナガノ氏が過去の漫画の中で台湾について「台湾…いい国だなあ…」と書いたコマが切り取られ、中国のSNS上で賛否両論を巻き起こしているというニュースも伝えられている。こうしたネガティブな騒動も、逆に中国における『ちいかわ』の注目度の高さを象徴しているといえるだろう。

なぜ今、中国で『ちいかわ』が人気なのか?

  それは日本国内の『ちいかわ』ファンにとっても興味をそそられる疑問となっているようだ。この現象を中国文化に詳しい専門家はどう見ているのか。

  中国の流行なども取り上げる月刊中国語学習誌『聴く中国語』(愛言社)の編集長・謝辰氏は「あくまで個人的な見解ですが」と断ったうえでこう話す。これまでも中国ではサンリオ、スーパーマリオなど日本発の「かわいい」キャラクターが流行したことはあったという。

 「キャラクターの人気は、日本とタイムラグはほぼありません。(中国に限らず)世界の人々は“日本のキャラクター”と意識しているのではなく、かわいいから、魅力的だから好きになっているのであり、それは中国人も同じです。日本のアニメや漫画キャラクターは、かわいい系からかっこいい系までいろいろタイプがあって、それぞれ中国人にも多くのファンがついています」(謝辰氏/以下同)

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