【漫画】ネットゲームにログインしたらもう一人の自分が? WEB漫画『この名前は既に使用されています。』が怖い

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

すみれちゃん:本作は2023年の5月に開催されたコミティア(一次創作物の即売会)に出展する合同誌へ寄稿した作品です。合同誌に寄稿する他の作家さんの雰囲気から、不思議で怖いお話の方が合っているかと思い、ホラーテイストの物語を描こうと思いました。

 また自分はネットゲームが好きなのでこの題材を選びました。キャラクターネームを決めようとするとき、よくある名前だと他のユーザーと重複してしまう現象は多いかと思います。ただ、もしも他の人と被らないような、パーソナルな情報を含んだ名前でも重複してしまったら……それって怖いことだし、ある種面白いことでもあると思いながら、物語をつくりました。

ーー印象に残っているシーンは?

すみれちゃん:母親と会話するシーンですね。自分の母親もネットゲームをしていると怒鳴りつけてくる人だったので、ゲームをする日常のリアリティを描くことができたかと思っています。

 ボイスチャットを接続しながらネットゲームをしていると、相手側の音声から突然ドアが空く音や母親から怒鳴られる声が聞こえてくることがあります。一般的に“親フラ”と呼ばれていて……。自分に降りかかったら災難な出来事ですが、ネットゲームをするなかで親フラは面白いイベントとして感じています。そんなことの一部をこのシーンで表現できたかと感じています。

ーー母親だけでなく友人との会話からもリアリティを感じました。

すみれちゃん:とくに高校時代は友人が多いタイプではなかったので、母親との会話とは異なり原体験がベースにあるシーンではありません。ただ、こういった会話を漫画やアニメで見かけることがあり、淡々としゃべる様子は2人の関係やそれぞれの個性が明確に伝わるシーンだと感じます。そのためフィクションを見るうえで会話劇はよく見ていますね。

ーー強烈に照り付ける光やセミの鳴き声など、夏特有の空気を感じた作品でした。

すみれちゃん:自分の実家は田舎な地方なのですが、夏にはセミがミンミンと鳴き、少し肌寒さを覚える頃にはカナカナと鳴くようになり……。そんな原体験も影響しているかもしれません。

 商業施設が立ち並ぶ都会な場所もありましたが、1kmほど郊外へ歩けば田んぼの広がった景色になって。都会と田舎とでは景色とともに光の当たり方も異なりますし、水の流れる音や虫の鳴き声など、なにより耳に入ってくる音が変わってくる。都会な場所と自然が多いところで、光や音の変化を感じる地方だったと感じています。

ーー漫画を描きはじめたきっかけは?

すみれちゃん:漫画を描き始めたのは2022年であり、制作歴は1年ちょっとです。それまでコミティアに参加者として足を運んでいたのですが、好きな作家さんの作品がすごく良くて。その作品をきっかけに自分も描いてみようと思ったことがきっかけです。

ーー初めてコミティアに出展した作品は100ページちかくの大作だったかと思います。

すみれちゃん:漫画を描くまでイラストは描いていたので、漫画を描こうと思ったときにまずは絵と漫画っぽいものを数ページ混ぜた“闇鍋”のような本をつくり、コミティアに出展できたらうれしいなと考えていました。

 漫画を描こうと思いインターネットで漫画の描き方を調べ、プロットというものをつくったのちに、ネームという下書きを描いて、ペンを入れることを知り……。結果として100ページちかくの作品となってしまったので、漫画だけの同人誌として初めての作品を描き上げ製本しました。

ーー漫画を描くなかで感じた印象は?

すみれちゃん:ページ数の多い、長い作品となってしまったので大変なことも多くありました。しかし構想段階でこの場面とこの場面と、この場面は描きたいという思いはありました。その場面までのページは苦行のごとく描き、描きたい場面にたどり着いたらうれしいと思う。その場面を描き終えれば再び苦行は始まってしまいますが、頑張れば描きたい場面が現れるから楽しい……。

 そんな波を繰り返しながら描いていったら、なんとか作品として形になりました。

ーー今後の目標を教えてください。

すみれちゃん:もともと国家公務員として働いていたのですが、副業ができない状況だったので、今年退職し漫画連載の準備をしています。食いっぱぐれることのないように、仕事を辞めてよかったと思えるようになりたい、というのが正直な気持ちです。

 

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