『進撃の巨人』もう1人の主人公、ガビ・ブラウンが見た地獄の景色……復讐の連鎖はなぜ止まらない?

海の外でも壁の中でも変わらない残酷な世界

  カヤは4年前に巨人に襲われ、母親を失った孤児の少女。兵団支部から脱走したガビとファルコは身分を隠し、彼女が暮らすブラウス家の厩舎に泊めてもらう。皮肉なことに、ブラウス家はサシャの家族であり、カヤはサシャに救われた過去があった。

  その後、カヤはかつて自分の家があった跡地へとガビたちを導く。そして自分の母が巨人に生きたまま食われたことを語ると、なぜ母がそんな仕打ちを受けなくてはならなかったのかと質問。するとガビは憎悪を燃やしつつ、エルディア人の先祖が過去に犯した罪の重さを指摘していく。

  だが、当然カヤは納得するわけもなく、「じゃあ、今生きている私たちは一体何の罪を犯しているの?」「お母さんは誰も殺してない!」と問い詰める。その怒りに対して、ガビは答える言葉をもたなかった。

  続いてガビはブラウス一家と共に、マーレ人のニコロが働くレストランに招かれることに。ニコロはサシャに強い愛着を抱いていた人物だったため、ガビがやったことを知ると、その命を奪おうとする。しかしもっとも悲しみを抱えているはずのサシャの両親は、彼を止めてガビを守ってみせた。

  その一方で、やさしかったはずのカヤが豹変。「人殺し」「友達だと思ってたのに」と激しく感情をぶつけてくる姿に、ガビはショックを隠しきれない。彼女はいつの間にか命を奪い、奪われる“復讐の連鎖”の真っただ中にいたのだ。

  自分が手にかけた相手にも大切に思う人や、復讐を誓う人が存在するという事実は、ガビの価値観に大きな影響を与えたのだろう。パラディ島奇襲作戦が始まった後には、「悪魔なんていなかった。この島には人がいるだけ。やっとライナーの気持ちがわかった」という言葉を呟いていた。実際にガビの心境は、“悪魔”を人として、仲間として認識したことで心が壊れていったライナーに近かったはずだ。

  しかしガビがライナーと違うのは、「戦士」にも「兵士」にもならず、1人の人間として戦ったことだ。「地鳴らし」発動直後の混乱した街で、ガビは巨人に襲われているカヤのもとに現れ、間一髪で救い出す。逆にカヤも、尋問を受けそうになったガビを「家族」だと言ってかばってみせる。

  そしてガビはカヤに本当の名前を教えることで、初めて対等な関係となり、憎しみによって隔てられていた2人は和解へと至る──。一連のエピソードが示しているのは、命を奪い、奪われる“復讐の連鎖”をいかに断ち切るのかというテーマに対する1つの回答と言えるのではないだろうか。

  アニメ最終話では、このテーマがどのように話に関わってくるのだろうか。エレンやアルミン、ミカサの活躍と共に、ガビの果たす役割にも注目してみてほしい。

Ⓒ諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

関連記事