声優・礒部花凜は“可愛い”で満足しない 「みんなが“自慢の推し”だと思えるような、求心力のある言葉を」

 人気コンテンツ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の月岡恋鐘役や『ウマ娘 プリティーダービー』のダイイチルビー役などで知られる、声優/女優・礒部花凜の1st写真集『私めく』が9月19日に発売された。

 大阪芸大在学中の2015年にTVアニメ『Go!プリンセスプリキュア』のオープニング主題歌担当に抜擢されて芸能活動を始め、ミュージカル『薄桜鬼』などの2.5次元舞台への出演を経て、2017年にTVアニメ『Just Because!』で声優デビュー。今春にはポルノグラフィティの新藤晴一が原案・作詞・作曲を手掛けたミュージカル「ヴァグラント」に出演するなど、声優・女優と様々なフィールドで活動し、「プライベートはほぼないです」と明るく笑う彼女の“表現”に対する熱すぎる思いを聞いた。(永堀アツオ)

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作品への愛を伝えるために

——初の写真集を出すにあたって、「芸能活動を始めてからのひとつの節目になるような、今の私を詰め込んだ大切な大切な一冊になっています」というコメントを出されていましたが、これまでを振り返ってみて、どんな20代でしたか?

礒部花凜(以下、礒部):あっという間でしたね。でも、本当にいろんなことを経験させてもらって。自分の中でも価値観や仕事に対する思いがすごく変わったなって思います。

——何がどう変わりましたか?

礒部:もともと私は舞台がすごく好きだったので、好きなものが学生のときに仕事になったっていう感じだったんですよ。でも、お客様に時間を割いていただいて観てもらう以上は、やっぱりプロとしてやらなければいけないことじゃないですか。だから、最初は、“仕事”と“自分の好きなもの”の境を見つけることがすごく難しかったですね。

——どこかで意識が変わるきっかけはありましたか。

礒部:声優を始めてから劇的に変わったなって思っています。声優を始めるまでは舞台の仕事がメインで、自分自身として——礒部花凜という名義を全面に出して、公の場に出ることはあまりなかったんです。でも、声優のお仕事を始めてからは、アフレコだけではなく、自分自身が配信に出演したり、インタビューを受けたりとか、イベントでコンテンツのことを語ったりなど、自分の言葉で話す機会はすごく増えて。そこで、「あ、このままじゃいけないな」と思ったんですね。もともと人前で話すのがうまいほうではなかったんですけど、好きなものをただ好きと思っているだけでは、作品への愛が伝わらないんだなっていうことに気づきました。思っているだけじゃなく、ちゃんと言葉にして発信していかないとダメだなって思ったことが、自分が変わる転機になったと思います。

——好きが仕事になって、作品の魅力を自分の言葉で話すようになって、何か感じたことはありましたか。

礒部:より楽しくなりましたね。ただ、最初の頃は戸惑いもありました。言葉にはすごく責任が生じるじゃないですか。でも、私たちみたいな職業だと、全部が全部、ちゃんと伝わるわけではない。言葉や文字だけだと、どうしても自分が思っているとおりの100%は届かないことが多いなと感じています。やっぱりニュアンスって難しくて、それに対する責任っていうのをすごく考えてしまって……。言葉にするのが怖くて、あまりにも言葉を選んでしまい、言葉が出てこなくなった時期もあったんですけど、ファンの皆さんが上手に喋れない私を温かく見守ってくれて(笑)。そこで、また“変わりたい”というか、ちゃんと届けたいなと思うようになりました。

 若いときは、今よりも自分がこう見られたいという意識が強かったんですよ。もちろん、今でもいい意味で、どう見られたいかという意識は持ってなきゃいけないとは思うんですけど、無駄なこだわりはどんどんと捨てることができたし、自分が思っているよりも、みんなはなんでも受け入れてくれるんだってわかったりして(笑)。それから自分から発信したり、喋ったりするのがすごく楽しくなりましたね。自分が怖いって思っているものが、ちょっとずつ減っていったから、そのぶん楽しくなったなっていう感じはあります。

「可愛く見られたいと思ってました!」

——20代前半のデビュー当時はどう見られたいと思ってました?

礒部:もちろん、可愛く見られたいと思ってました!(笑)

——(笑)。可愛く見られてるじゃないですか。

礒部:私、女子校育ちなんですけど、女子校の中でも「ぶりっ子」って言われていたくらい、もう根っからのぶりっ子なんですよ(笑)。ほんとに可愛く見られたいっていうタイプなんですけど、今はカッコいいところも見てもらいたいし、みんなが“自慢の推し”だって思えるような、求心力のある言葉を発信していきたい。みんなが一緒に歩きたいと思ってくれるような、言葉に力があるような人になりたい。言葉だけじゃなく、みんながそう思ってくれるよう存在になりたいんです。もちろん、今も可愛いって思われたいけど(笑)、それだけじゃない、プラスアルファの部分が自分の中では大きくなったかなって感じです。

——自分の言葉で発信することで、素が見えていくことには抵抗はありましたか?

礒部:そうですね。最初はやっぱり自分の思う可愛い像みたいなものを、崩したくないっていう思いが強かったので。

——逆に可愛くない部分はあるんですか? 自分で思う、普段の礒部花凜の可愛くないところは?

礒部:みんなが思ってくれているよりも大雑把です(笑)。でも、今は抵抗もないですし、みんなに見せているのが全部だから、逆にもっといろんな面を知ってもらいたいなって感じですね。

——仕事に対する意識が変わっていく中で、好きという思いは変わらなかったですか。

礒部:まったく変わらなかったですね。どんどん好きになってます。自分の人生になくてはならないものです。本当に大好きだから、一生この仕事をしていたくて。この仕事を一生するためには、今、どうすればいいんだろうとか、何を頑張るべきなのかとか、そういう気持ちが年々強くなっていってますね。

——理由はないかもしれないんですけど、どうしてそんなに好きなんでしょうか。

礒部:ステージに立って、袖にはけた瞬間に、「私、生きてたな!」って思うんですよ。みんなが熱い気持ちで応援してくれたり、食い入るように見てくれていて…。自分の表現やパフォーマンスにみんなが夢中になってくれてるっていうことが、私の中ではとても特別なことだし、生きている中で充実感があるものなんですね。それは、ライブで自分に対するものだけじゃなくて、その作品に熱くなってくれていたり、何かを感じてくれる、とか。そういうのってすごく…何て言ったらいいのかわからないけど、本当に生きてたなって思うんですよ。すごく説明が難しいんですけど。

——それは自分とは違う役柄を演じている時とか、ステージでスポットライトを浴びてる最中ではなく?

礒部:ステージ上では思わないんですよ。でも、袖にはけて、「ああ……」って一息ついたときに、「今、生きてた!」ってエネルギッシュに感じる瞬間があって。そういう瞬間はやっぱり特別だし、みんなが求めてくれていることにも喜びを感じていて。年々、私のことを知ってくれる人も増えているなっていう実感があるし、そうやって応援してくれる声にも応えたいし、その期待をさらに上回っていきたいっていう気持ちは常に持ってる。だから、“好き”が揺らぐ時間がないんですね。そんなことを考えるような時間が私にはないっていう答えのほうが正しいかもしれない。そんな次元じゃなく、もっともっと超えていきたいものがあるとか、やりたいことがあるっていう感じです。

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