ホラー漫画家・洋介犬が語る、恐怖の体験談「作品を描くと現実に同じような事件が起きるのです」
事件発生を預言者の如く的中させた!?
――アニメの放映前に似たような事件が起きてしまい、放映延期になった例があります。洋介犬先生も、漫画の内容に酷似する出来事が起こった体験はあるのでしょうか。
洋介犬:ありますし、僕の場合、厄介なことに原稿を入稿してから起こるんですよね。知らず知らずのうちに数週間の先読みをしてしまっているのか、更新の3日前に似た事件が起きることは普通にあります。
――そんな預言者のような出来事が!
洋介犬:例えば、『外れたみんなの頭のネジ』で、主人公の中学生ミサキが拉致される回が更新される3日前、中学生の拉致事件が発生したことがありました。警官による容疑者射殺が起きたときは、『反逆コメンテーターエンドウさん』でもほぼ同じ話を描いていて、ネットでは「洋介犬は預言者だ」と言われたことがありますね。
――あらゆるパターンの事件が起こっていますね。
洋介犬:女性の怪物を出したら、そのあとにデビューした女性VTuberと同じ名前だったり、戦争を過度に恐れる少年の話を杞憂といなす漫画を描いたら、ロシアのウクライナ侵攻で杞憂ではなくなったりと、挙げだすときりがありません。
――漫画の内容が現実になりすぎていて、怖いですね。こういった出来事が実際に起きたら、どうするんですか?
洋介犬:修正が間に合うならセリフを調整しますし、支障がない範囲内で内容を改めることもありますね。例えば、著名人の自殺が起きたとします。キャラクターが自殺するネタだったら失踪のネタに換えるなど、少しずつ調整するんです。
――大変な作業ですね。
洋介犬:でも、幸いなことにホラー漫画家は調整がうまいんですよ。作中で残酷な描写もあるわけですが、少し表現を変えることで規制を回避するというか。そういう時には、直接的な描写がなくても、直接描くより怖い間接的な描写のスキルを駆使できることが役に立ちます。
人の死を描くホラー漫画ゆえの難しさ
――ホラー漫画は、推理漫画以上に人の死を描くことが多いですよね。センシティブな内容であることから、ホラー漫画家は細かな表現にも気を使っていると感じます。
洋介犬:気を使うといえば、ホラー漫画家は自殺のシーンを描く機会が多いんです。現在、自殺は年間2万件ほど起こっていますから、傍にある死といえます。なので、いつニュースになるのかわからない。読者の感情に与える影響も大きいですから、描くときはかなり気を使います。
――なるほど。年間2万件となると、漫画の内容と瓜二つになる可能性も高いわけですね。
洋介犬:『外れたみんなの頭のネジ』で自殺をテーマにした新章を開始し、入稿を終えたら、その直後にある著名人の自殺がニュースになりました。漫画では、主人公の兄が自殺願望を持っているという話でした。これは先ほどお話した自殺を失踪に変更した例ですね。更新の1週間前に修正して、事なきを得ています。
――それって、当初考えていたストーリーと全然別物になってしまうんじゃないですか?
洋介犬:そこはなんとか、失踪願望に変えてから急カーブで内容を調整して、無事に着地させました。漫画アプリでは自殺を幇助する話はなかなか描けないんですよ。だから、テーマに選んだ時点で危ない橋ではあったのですが。