【漫画】もしもギャルが書店員だったら? 国語辞典の「アプデ」を見つける姿に好感

――本作は「ギャルと書店員」シリーズのなかの1話ですが、まず「ギャル」と「書店」を組み合わせようと思ったのはなぜでしょう。

野中かをる(以下、野中):もともと自分も書店員をやっておりまして、書店漫画の連載もやっていたことがあるんですよ。久しぶりに書店をネタに描いてみようかなと思った時に、ギャップになる何かがほしいなと。それから編集者さんに「令和に書店漫画をやる理由が必要だよ」とアドバイスをもらって、今の時代を表すとしたら何かなと考えていたら「ギャルだ!」と閃いたんです。

――野中さん自身がギャルに何か感じることなどはあるのですか?

野中:一緒に働いたことがありました。裏表のない性格だったり、自分が知らないことに対して真正面に受け止めてくれるところは印象的で。こだわりの強い人だと未知のことに身構えたり、斜に構えたりしますが、ギャルの子は心がストレートで。だから漫画のキャラクターとして登場させたらいいかなと。あとはTwitter漫画でギャルが登場する物語を見かけるので、自分も書きたいなと思ったのもありますね。

――実際に描いてみて感じたことはありますか。

野中:僕自身はギャルではないので(笑)、感情移入が難しいなとは思います。自分だったら見栄を張るようなシーンで、ギャルならどうするのかと考えたり。あとはキャラに自分ができないことをやらせたり、言わないことを言わせるというのはありますね。逆に男性キャラの紙屋君なんかは、自分を反映させているところがあります。

――描いたギャル(令華)の挙動で、思い入れ深いものなどがあれば教えてください。

野中:辞書の改訂について「アプデはいってる!」と言うコマです。これは今時の人しか言わないだろうなと思って入れたセリフですが、気に入ってますね。

――なるほど。キャラデザイン的にはいかがでしょう。

野中:社会人系のキャラを描くことが多いのもあって、正直まだハマりきれていないところがあります。今思えば黒ギャルにしてもよかったかな、でもそれだと派手すぎるかな、など色々と考えたり。だから、もしかしたら物語が進んでいくうちに黒ギャルになる可能性もあります。

――「焼いてきました!」みたいな感じで(笑)。つまり方向性は流動的なんですね?

野中:このシリーズ自体が実験中なところもあって、試行錯誤しているところなんですよ。そもそもは紙屋くんが主人公のドラマになる予定でしたし。でも模索するうちにギャルを中心に描いた方が楽しくて、話としても成立しやすくて、こういう展開になりました(笑)。

自分の思い描いているテーマや展開にキャラを沿わせるよりも好き勝手に動いてもらう方が話がまとまったり、キャラが活き活きするんですよ。

――現在「ヤングキング」で連載されている『煙の先の敷島さん』と比較して、自身のなかで描き分けなどはあります?

野中:どちらも自分の好きなものを描いているので、本質的には変わりません。でも『~敷島さん』は自分の好きなもの、「自分はタバコが好きで、こういうヒロインがいいと思っている」ということを読者に伝えている感覚があります。

一方で「ギャルと書店員シリーズ」は「活字は小説以外にもありますよ、こういう楽しみ方もあるんですよ」とプレゼンしている感じ。本を最近読めない人に、短歌とか国語辞典など違う読書を提案したいと考えています。

――最後に今後の展望などがあれば教えてください。

野中:商業誌の原稿を描きながら、年4回おこなわれる同人誌即売会「コミティア」に合わせてオリジナルマンガを更新していきたいと思います。個人活動に関しては実験的だったり、商業ではできないテーマを扱っていきたいですね。この「ギャルと書店」シリーズは、何本か続けて、もっと手応えを掴めたら商業誌でも描けたらと考えています。

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