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『私のジャンルに「神」がいます』真田つづる

 フォロワー数や作品ジャンルの規模、同人誌の部数や席の場所など、人気があからさまに可視化される同人の世界。そんな同人界の天才字書き·綾城さんを中心にうずまく嫉妬、羨望、自己顕示欲などの感情を切り取った真田つづるの作品。

 二次創作で同人誌などを制作する同人界隈には、そこにしか発生しない特殊な関係性や感情が存在することを、同人界隈にいたことのある人ならばなんとなく感じていたことだろう。その混沌にメスを入れ、的確に切り取り、キャラクターに落とし込み、「これは自分だ」と読者に思わせた作者の手腕が凄まじい。そして、それらの感情を収束させ、呑み込んでいくブラックホールのような存在「おけけパワー中島(おけパ)」を生み出したこと。これはもう、ひとつの発明と言っていいだろう。

 この作品は、作者の真田つづるが「同人女の感情」というタイトルでSNSに投稿し話題となったもの。Twitterに新作が投稿されるたびに、作品を読んだ同人活動者が登場人物に自分を重ね、自分にとっての綾城さんやおけパについて語ることで、毎回トレンド入りするほどSNS上でカルト的人気を博すこととなった。『ルックバック』もそうだが、真に影響力のある作品というものは、ただ読んで「おもしろかった」で終わらせず、読んだ人を現実に動かし、語らせる力があるのだと教えてくれる作品でもあった。

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