高橋芳朗 × つやちゃんが語る、PSYCHIC FEVERの凄み「R&Bの流儀に向き合って、この時代に見事に体現している」

いい意味でバラバラで、それぞれの個性が出ていた

ーーファンが喜ぶことを全部やってくれていますよね。今回ライブを観てすごく思ったのは、それぞれの声のキャラクターがすごく明瞭に分かれていて、全員が自分らしい歌い方を確立しているなということでした。7人全員のキャラクター分けがしっかりしていて面白かったです。

高橋:『DIFFERENT』のコンセプトにもある通り、メンバーの声のキャラが立っているのも魅力ですよね。それぞれ固有のチャームがあるから、7人もいながら声がかぶることなく聴き触りがものすごくカラフルで。

つやちゃん:ダンスも個性が際立っていました。ソロのダンスパートでは、それぞれが自分の得意とする、ルーツとしているダンスを披露しているのが伝わってきて。いい意味でバラバラというか、それぞれの個性が出ていましたね。今回のツアータイトルが『THE ROOTS』でしたが、それぞれのメンバーが自身のルーツを探求していくことへのアンサーとして、「自分たちの個性をどう出していくか」というテーマがあったのかなと。歌もそうですけど、ダンスも全員で踊る時は一糸乱れず揃っているのに、個々のダンスのルーツを見せるポイントもしっかり用意されていて、そこが面白かったです。

高橋:確かに、群舞の美しさよりも個々のキャラクター性に重きを置いたようなダンスパフォーマンスでした。

つやちゃん:そこがK-POPのグループとは少し違うアプローチだなと感じました。

ーーメインボーカルの小波津志さんはブレイクダンスを得意としていますね。あんなに歌が上手いブレイクダンサーは、おそらく志さん以外に存在しないのではないかと(笑)。

高橋:そうですね(笑)。その志さんとWEESAさんのR&Bシンガーとしての地肩の強さには大いに魅了されました。甘さを抑えた曲やヒップホップ要素が前に出た曲でも、彼らが僅かな出番でR&Bのフィールをしっかり残していく。これはPSYCHIC FEVERの強みですよね。

つやちゃん:あと、渡邉廉さんもすごく歌が上手くて驚きました。アカペラ始まりのパートもありましたし、今回すごく存在感が出ていた印象があります。

高橋:JIMMYさんのラップも強烈な個性があって耳に残りました。彼に限らず、ラップのマナーとしては日本語ラップのスタンダードな系譜を踏んでいる印象を受けましたね。それがまた楽曲トータルでの聴きやすさにつながっているのかもしれません。

つやちゃん:そのJIMMYさんが今回、椅子に座って歌う演出を提案されたらしいですね。メンバーからそういうアイデアが出ているのも面白いですし、クリエイティブな部分にも積極的に参加しているんだなと驚きました。

ーーEXILE TRIBEのグループは、メンバーが自発的にクリエイティブに携わる伝統がありますね。PSYCHIC FEVERも、さらに個々のクリエイティビティが発揮されるフェーズにありそうです。

高橋:特にJIMMYさんは制作面でも存在感を増してきていますね。最近では元RIIZEのXngHan&Xoul(スンハン)が9月30日にリリースした新曲「Who Knew?」にフィーチャーされていましたが、彼は今後こういう機会が増えていくのではないかと。この曲がまたR&B心のあるディスコポップで、PSYCHIC FEVERのイメージにぴったりでした。

Who Knew?

ーーファッション的な部分もこだわっていましたよね。90年代のヒップホップをイメージしたような衣装があったり、全員が白で統一された衣装だったり。最後のカジュアルな私服風のスタイリングもすごく良かったです。

つやちゃん:そうですね。あの白い衣装は、ああいうグループで全員が色を揃えてくると、一体感を見せるためのものだと最初は思うじゃないですか。でも見ているうちに、さっきのダンスの話とも通じますけど、「個々の違いを見せるための白」なのかなと思い始めて。みんな同じものを着ているようでいて、よく見たら細かいアイテムは結構バラバラなんですよね。フードを被っているメンバーがいたり、グローブをしているメンバーがいたり。パッと見はまとまって見えるけど、細部を見るとやっぱり違う。ダンスと同じような個性の立ち方が、服装にも表れているのかなと。

Y2KのR&Bを2026年の音として解釈している

ーー今回のアルバム『DIFFERENT』もそうですが、メンバーそれぞれの個性を見せていくというコンセプトは明快で、まさにPSYCHIC FEVERの強みだと感じています。アルバム『DIFFERENT』も非常に完成度の高い作品でした。

高橋:文句なしに最高傑作ですね。ここにきて音楽的にぐっと洗練されてきたのに加えて、R&Bの濃度も過去イチでしょう。特にThe Neptunes風の3曲、「Masterpiece」「Diamonds」「Uh Oh」の充実ぶりにしびれましたね。アトランタ・ベースに続くグループの新しい軸になりそうなほどの手応えを感じました。こうしたThe Neptunesタイプの楽曲やティンバランド系の「I Got Ways」も含めたY2KなR&Bだったり、アフロビーツを取り入りた「Cinderella pt.2」や「Into You」など、R&Bをベースにしながらも近年のトレンドをきっちり押さえていることで良い意味でポップな体裁になっているところはあると思いました。『PCYCHIC FILE II』の「Love Fire」ではジャージークラブを導入していましたが、こうした流行の音に貪欲な姿勢は維持し続けてほしいです。R&Bの基盤がしっかりしているから、基本的に何をやってもブレることはないと思うので。

PSYCHIC FEVER - Love Fire (Official Music Video)

つやちゃん:アルバム全編を通して聴いて思ったのは、ベースに2000年代のR&Bがすごく色濃くあって、その感覚を持った上で2026年の音として新たに提示しているような感じがして。思った以上に、2000年代の音楽が下地にある。その確固たるベースがあるグループって、今あまりいないんじゃないかと思うんです。曲単位でY2KのR&B的なことをやるグループはいますけど、アルバム全体にその時代の香りが漂っているのが面白い。単に、Y2Kをリファレンスにしました、という感じではない。

高橋:Y2Kのサウンドを単にトレンドとして消費するのではなく、R&Bを拠り所とするグループとして正面から真摯に取り組んでいますよね。90年代~00年代のアメリカの男性R&Bグループの流儀にしっかりと向き合って、いまこの時代に見事に体現している。そんなグループが日本に存在している事実に興奮します。

つやちゃん:制作陣のクレジットを見ていてちょっとびっくりしたんですが、収録曲の「I Got Ways」にはChris BrownやH.E.R.のプロデューサーとして知られるRykeyzが関わっていたり、「Dream Flight」にはw.a.uのKota MatsukawaとVivaOlaが関わっていたり、他にも様々なプロデューサーが参加していますよね。普通だったら同じ一作のアルバムに並ばないようなクレジットというか。東京のオルタナティヴR&Bの文脈にいる人もいれば、ラップ寄りの人もいて、USのR&Bマナーの人もいる。それが違和感なく一枚のアルバムに同居しているのが、結構すごいことだなと思います。

高橋:絶対的なプロダクションパートナーを設けるのではなく、いろいろなクリエイターと積極果敢に組んでいくスタンスなんですね。繰り返しになるようですが、これだけ多様なビートを取り入れながらも最終的にちゃんと自分たちのカラーにまとめ上げているのは、やっぱり確固たる音楽的ヴィジョンがあるからこそだと思うんですよね。

つやちゃん:『DIFFERENT』は、国内のヒップホップやR&Bリスナーにもぜひ聴いてみてほしいですね。自分がPSYCHIC FEVERを本格的に追いかけるようになったのは、やっぱりJP THE WAVYがプロデュースで入った「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」からなんです。ヒップホップ/R&Bの文脈から深く聴いてくれるリスナーが増えてくれたら嬉しいですね。

PSYCHIC FEVER - Just Like Dat feat. JP THE WAVY (Official Music Video)

高橋:僕もご多分にもれず「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」がきっかけでした。2024年にTBSラジオのレギュラー番組でアトランタ・ベースのリバイバルの特集を組んだとき、TWICEの「Moonlight Sunrise」やDrakeの「Rich Baby Daddy feat. Sexyy Red and SZA」などと並べてオンエアして。こういう企画で日本のアーティストの曲を一緒にかけられることがすごくうれしかったんですよ。当時すでにK-POPのガールグループや欧米の女性アーティストを中心にアトランタベースのソフト化が進行していましたが、そういう状況下でPSYCHIC FEVERはR&B表現のひとつとしてアトランタ・ベースを打ち出していたのが新鮮でした。これに味を占めて、去年の夏にもまたアトランタ・ベースの特集を組みまして(笑)。そのときにはXGの「Is This Love」やTyler, The Creatorの「Don't You Worry Baby feat. Madison McFerrin」などと共に「What's Happenin'」を選曲しました。

PSYCHIC FEVER - What's Happenin' (Official Music Video)

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