Vaundy「しわあわせ」が映画主題歌起用で再注目 今改めて胸に響く、目に見えない“本物の繋がり”を描いた普遍性
Viral Hits Focus
話題のバイラルヒット曲を毎週収録するSpotifyによる日本向けエディトリアルプレイリスト「Viral Hits Japan」(※1)。同プレイリストより、本記事ではVaundyの「しわあわせ」をピックアップする。
「しわあわせ」は2021年4月に配信リリースされ、2ndアルバム『replica』(2023年)にも収録されたバラードナンバーである。もともとは首都医校・大阪医専・名古屋医専の2021年度テレビCMソングとして書き下ろされた楽曲であり、その壮大なサウンドと人と人とのつながりを描いた歌詞によって、広く親しまれてきた。そんな同曲が10月2日に全国公開された映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』の主題歌に起用。10月14日からは過去のライブ映像を6日間連続で公開し、再び注目を集めている。
映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』は、21歳でステージⅣの大腸がんを宣告された女性の闘病中の手記をもとにした作品だ。川口春奈演じる遠藤和は、夫・将一(高杉真宙)に支えられながら、限られた時間のなかで出産という選択に向き合い、いつか我が子が読む日のために日記を綴っていく。そこに記されていたのは、病と向き合う苦しみだけではない。家族と過ごす一瞬一瞬への愛おしさと、たとえ自分がそばにいなくなっても、変わらぬ愛情を伝えたいという切実な願いだった。
こうした映画のテーマと深く響き合うのが、「しわあわせ」に込められたメッセージだ。タイトルからは“幸せ”と“しわを合わせる”の二つの言葉を想起させ、歌詞では〈僕〉と〈君〉の二人の心臓を合わせて生まれる〈しわ〉が、ともに過ごす時間や未来の価値を象徴するものとして描かれている。しわを重ねるという行為は、長い歳月をともに生きることの比喩としても受け取れるだろう。しかし、映画の物語と重ねると、その言葉はさらに深い意味を帯びてくる。たとえ同じ時間を長く生きることが叶わなくても、触れ合った記憶や分かち合った感情は消えることなく残り続ける。そんな想いが、楽曲から改めて浮かび上がってくるのだ。
サビで繰り返される、変わることなく互いの手を握り続けようとする言葉も、和と将一の姿に自然と重なっていく。病と闘いながらも、二人は互いを想い、ともに生きる道を模索し続けた。そして、和が我が子に残した日記もまた、時間を超えて愛情を伝えるための大切な手段となっている。Vaundy自身、今回の主題歌起用にあたって、「目には見えない形でも何があろうと続いていく、本物の繋がりの深さや強さを描いています」とコメントしている(※2)。2021年に生まれた楽曲の歌詞が、5年後の映画のために書かれたかのような説得力をもって響くのは、そこに描かれた感情が特定の物語や時代にとらわれない普遍性を備えているからだろう。
そうした歌詞の説得力を支えているのが、Vaundyの緻密なサウンドメイクだ。作詞作曲からアレンジまでを自ら手掛ける彼の手腕は、「しわあわせ」においても存分に発揮されている。序盤では心拍を思わせるビートと、親密な距離感のボーカルが、聴き手を楽曲の内側へと導いていく。その穏やかな音像は、まるで大切な人に向けて胸の内を語りかけているかのようだ。しかし、曲が進むにつれて音の厚みが増し、サビではエモーショナルで力強いドラムやベース、壮麗なストリングスが一体となって楽曲のスケールを押し広げていく。特に印象的なのは、ダイナミックな展開と呼応するVaundyの歌声だ。序盤の抑制された歌唱から、サビで感情を解き放つような力強い高音へ。その声の変化があるからこそ、胸の奥にしまわれた個人的な思いとささやかな祈りが、最後には大きな生命讃歌として響くのだ。
公式YouTubeチャンネルでは、2022年の日本武道館公演から2026年のドームツアー、さらには現在開催中のアジアアリーナツアーまで、異なる時期の「しわあわせ」のライブ映像を公開。2021年のリリース当時から現在まで、同じ楽曲がそれぞれの時代、それぞれのステージでどのような響きを獲得してきたのかを比較できる点にも面白さがあるだろう。映画の主題歌への起用に加え、こうした企画からも、リリースから5年を経た今、同曲が改めて注目を集めていることが窺える。
近年、数年前にリリースされた楽曲が映画やドラマとのタイアップ、あるいはSNS上のUGC(ユーザー生成コンテンツ)などをきっかけに再発見され、新たなヒットへとつながるケースは珍しくなくなった。ストリーミングサービスの普及によって、音楽はリリースされた時点の流行に縛られることなく、さまざまな文脈のなかで繰り返し聴かれるようになっている。リスナーにとって重要なのは、必ずしもその曲がいつ生まれたかではない。今自分が抱えている感情とどれほど深く結びつくか、ということなのだろう。
2021年にリリースされた「しわあわせ」が、2026年の今、映画の主題歌として再び注目を集めている背景には、楽曲に備わっていた普遍的なメッセージと、新たな物語との幸福な出会いがある。人と人とが手を取り合い、限られた時間のなかで想いを紡ぎ、次の誰かへと残していく。そんな営みの尊さを描いた「しわあわせ」は、これからも時代や世代を超えて、それぞれの人生の物語と結びつきながら聴き継がれていくはずだ。
※1:https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DWZZbpkxU5t9L
※2:https://www.mamaseka-movie.com/


























