JASRAC、音楽使用料徴収額が過去最高を記録 徴収額756億、対価還元分配額は741億円に
日本音楽著作権協会(JASRAC)が、2026年度上半期事業報告会見を10月21日に赤坂にあるJASRAC本部にて開催した。事業報告を行なったのは、今年6月に新役員人事で理事長に就いた中戸川直史氏だ。
2026年度上半期の音楽使用料徴収額は756億円。前年度比は+2.8%、20.5億円の増額で、上半期としては過去最高の使用料収入となった。中戸川氏は過去最高額ではあるものの、「JASRACは文化と経済の交差している部分があると思っており、その意味ではこの数字が表すのは、創作の価値、そして音楽の価値。それを社会が認めている指標の一つであると考えています。そういうつもりで数字を考えます」と受け止めを明らかにした。内訳としては、インタラクティブ配信、演奏などの伸長が継続しており、カラオケでの使用も増加している。
演奏等の分野だけでの徴収額は156.9億円。前年度比4.4%、6.5億円の増で、特に上演・演奏会は74億円の実績額、105.1%の増となっている。これはドームやアリーナ大型公演といったコンサートの活況があり、こうした管理ができているのはコンサートプロモーターズ協会(ACPC)のおかげであると中戸川氏は感謝を示す。
インタラクティブ配信は327.3億円で、前年度比の8.7%、26.2億円の増加。音楽サブスク市場、動画配信の広がりに触れながら、中戸川氏は「ネット市場の成長がそのままクリエイターの還元につなげられるように努めてまいります」と話す。
対価還元では、分配額が741.4億円に達し、こちらも過去最高の還元額。分配対象作品数は約321万曲にものぼる。
JASRACは中期経営計画「2026-2028」として、“創作”の価値を高めるという経営ビジョン「Vision2030」を発表している。これはJASRACが2028年度までに年間使用料の徴収を1650億円、分配総額を1630億円、そして分配する対象の著作物、音楽作品を400万曲とする目標を掲げるものだ。その3年計画の初年度にあたる2026年の目標は1530億円。現時点で年間の使用料収入額は1500億円台半ばを見込んでいるという。
「海外からの著作物使用料拡大に向けた取り組み」の話題では、海外の著作権管理団体からのJASRACを通じた入金額を増やすためには、クリエイター自身によるJASRACとの直接契約が不可欠であることを中戸川氏は訴えた。
「生成AIに対する向き合い」については、JASRACは8月と9月にかけてクリエイターにリサーチ会社を通じてアンケート調査を行なったことを明らかにした。アンケート内容は、「経済的な影響について伺った」として、その結果は年明けを予定している。そのほか、AIで作られた曲を見分ける技術、そのテストを始めており、JASRACは法整備や改正を求めているが、一方で現行の中でどのような対応ができるかということも専門家との検討を始めているとしている。
日本政府は5月15日、音楽CDや配信音源が、レストランや店舗などでBGMとして利用された場合などに、アーティストなどの実演家やレコード製作者へ適切な対価を還元できる仕組み「レコード演奏・伝達権」の創設を盛り込んだ著作権法改正案を閣議決定した。「大変喜ばしいことだと思っています。JASRACが管理代行するような予定はありませんが、関係する皆様とは協力できることはしてまいりたいと考えています」と中戸川氏は受け止めながら、最後に「JASRACは未来の音楽を作り発祥する時代にクリエイターの権利を守る活動を支えることで、新たな音楽が生まれ続ける、人々が楽しみ続ける世界を目指してまいります」と今後に向けてのコメントを述べた。
質疑応答では、KENDRIXについて話題が挙がる。KENDRIXはJASRACが提供する、音楽クリエイター向けの無料の権利DXプラットフォームで、音楽クリエイターが安心して楽曲を発表でき、適正な対価還元を受けるための各種手続きのハードルを下げることを目的としている。2022年にローンチ後、3400を超えるユーザーがアカウントを作成し、21000件を超える音源が登録されている。今後はAI生成楽曲を見分ける機能の実装、すでに機能として実装されている、楽曲制作における一連のアクションや進捗を時系列で記録・可視化できる「おとログ」を推奨した。
さらに質問は生成AIの話題に集中。生成AIを見分ける技術を準備する、その根源には生成AIで作られた楽曲の増加、その脅威や危機感があるのか、といった問いかけに対して、中戸川氏は「問題意識としては生成AIがどのくらい侵食していくかについてで、JASRACでもある程度の脅威を持っていますので、今後増えていくであろうという想像はつきます。今後チェックをすることが全くできないよりかはできたほうがいい、といった考えです」と明言。JASRACは完全に生成AIだけで作られた作品は管理をしないことをガイドラインに示している。JASRACは音楽の著作権を管理するのが仕事であり、疑うことは仕事ではない。そこは問題があった時に対処できるようにするのが目的であり、見分けるテストにて「極端な結果が出た場合には、作家にお伺いすることも可能かもしれません」とJASRACとしてのスタンスはクリエイターの権利を守ることにあると明らかにした。