imase × Yaffle対談:“ポップである”とはどういうことなのか? 自分自身へのカウンター、挑戦が広げる可能性
Yaffleの目に映ったimaseの姿「転換期だったと思うんです」
——そもそも「サービスエリア」のアレンジ、サウンドプロデュースをYaffleさんに依頼したのは、どういう経緯だったんですか?
imase:個人的な印象なんですけど、Yaffleさんはダンスミュージックの要素を上手く加えながら、ポップに仕上げているイメージがあって。「サービスエリア」は、ボトムがしっかりしたかっこいいサウンドにしたかったので、ぜひお願いしたいな、と。そうしたら想像の100億倍くらいよくしてくださって。
Yaffle:「100億倍」、見出しでお願いします(笑)。たぶんimaseくんも転換期だったと思うんですよ。これまでやってきたこと、つまりモダンな作りで、3分で効率よく楽しめるようなものではなくて、自分自身へのカウンターになるようなものを作りたいんじゃないかなって。
imase:たしかにそういう感じはありましたね。今回のEP全体を通してそうなんですけど、ジャンル感、楽曲構成、コード感を含めて、今までやったことがないことにチャレンジしたくて。そこはずっと意識してました。
Yaffle:そう思った動機は何ですか? 今までやってきたことに飽きた?
imase:以前から、いろんなことをやってみたいと思ってたんですよ。でもパブリックイメージみたいなものもあったし、責任感じゃないけれど、みなさんが求めてくださることをやったほうがいいのかな、と。
Yaffle:なるほど。
imase:自分としてはずっと新しいことを続けていきたいし、活動休止を挟んで、いろんなことにチャレンジできたのはよかったかもしれないです。
Yaffle:そういう動機を持っていたんですね。それこそパブリックイメージとしては、音楽をツールとしてとらえている印象があったというか。露悪的に言えば、「音楽っていうのはこうやったらバズるんだよ!」みたいな。
imase:はははははは!
Yaffle:ずっと音楽の勉強をしてきた人が譜面を書いて、ミュージシャンを集めて演奏して……ということではなくて、「頭の5秒でアテンションは決まるんだよ!」というか(笑)。そういうアプローチに飽きて、やり切った感じもあったのかなと。どっちがいいという話ではなくて、imaseくんが「新しいことをやりたいけど、イメージもあるしな」ってミュージシャンシップ的な葛藤を抱えてるタイプだったのが面白いし、興味深かったです。
imase:「こうやったらバズるんだよ!」というノリも大事にしたいですけどね(笑)。
Yaffle:imaseくんと同世代のミュージシャンって、そういうロールを担わされてる感じもあるんじゃない?
imase:そうかもしれないです。でも、こちらの狙いがリスナーのみなさんにバレてる感じもあって。最近はわりと「ピッチをあまり直しすぎない」とか、今までとは違うやり方になってるような気もします。今回のEPはまさに“やりたいこと優先”で制作できたので楽しかったです。「サービスエリア」のバリトンギターもよかったですよね。
Yaffle:たしかに!
imase:エレキギターでも録ったんですけど、イントロとかコードバッキング系はバリトンギターを使ってるんですよね。
Yaffle:オチサビの裏のバッキングとかね。ギターとベースの間くらいの音域の楽器で、有名なところだと『007』のテーマ曲だったり、カントリーの曲なんかでよく使われているんですけど、「サービスエリア」で使ってみたらすごくよくて。ハイ(高い音域)が落ちて、キラッとしすぎない感じになるんですよね。それによって、楽曲全体の説得力にもつながってるのかなと思います。時代の要請というか、トレンド的にも低音のほうに広がってる傾向があって。
imase:レコーディングの時にもその話をしてましたよね。
Yaffle:Mk.gee(アメリカのシンガーソングライター/プロデューサー)もそうですけど、弦楽器の低音域を活かしたサウンドメイクが注目されていて。まあ「サービスエリア」に関しては、トレンドを意識したというより、ミュージシャンシップ的なところが大きいような気がします。でも、ほとんどの人はわからないじゃないですか、どんな楽器を使ってるかということは(笑)。
imase:たしかに(笑)。
Yaffle:TikTokのバズみたいなこととかも関係なくて、バリトンギターを使うことで何かしらの価値が生まれるはずだと思えるかどうかが大事で。
imase:そうなんですよね。使ったことがない楽器を取り入れるとシンプルに楽しいし、「この音色、いいな」みたいな根源的な部分は制作にも活きてくると思うんですよ。
Yaffle:imaseくんのポップ性のおかげということもあると思います。声もそうだし、存在自体もブライトな印象があるから、オケはそこまで明るくしなくてもいいのかなと。ダークポップとかウォールオブサウンドも意識してましたけど、imaseくんが歌えばそこまで暗くならないというか。
imase:うれしいです。たとえば、ライブもそうだと思うんですけど、自分自身がポップでいられれば、ライティングや衣装はそんなに明るくしなくても成立するような気がして。むしろ、ちょっと暗いところを取り入れるほうがコントラスト的にもいいんじゃないかな、と。それは今回のEPの制作でも感じてましたね。
Yaffle:スイカにかける塩みたいな?
imase:甘さが際立ちますからね(笑)。