RADWIMPS、映画『汝、星のごとく』を彩る2曲で描いた愛の深淵 過酷な運命に寄り添い、痛みの先の美しさを捉える眼差し

 横浜流星と広瀬すずがW主演を務める映画『汝、星のごとく』が公開中だ。監督は『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む6部門を受賞し、そのほかにも『ヤクザと家族 The Family』『正体』など、数々の話題作を手がけてきた藤井道人。主題歌はRADWIMPSの「夕星-ゆうづつ-」だ。

 藤井監督とRADWIMPSおよび野田洋次郎のタッグは、映画『デイアンドナイト』(2019年)から始まった。主題歌「気まぐれ雲」の作詞作曲、プロデュースを野田が担当。その後、RADWIMPSとして映画『余命10年』(2022年)の主題歌「うるうびと」を手がけたほか、2024年には野田洋次郎名義で映画『パレード』(Netflix)の劇判と主題歌「なみしぐさ」を制作。さらに、RADWIMPSのアルバム『あにゅー』(2025年)収録曲「筆舌」のMVも藤井監督が手がけいる。

 また、野田にとって初めてのドラマ出演・主演作となった『100万円の女たち』(テレビ東京系/2017年)を手がけたのも藤井監督だ。野田は当時のことを、「『これを伝えるためにはどんな言葉を用いるべきか』といった考えがすごく明確でしたし、圧倒的なセンスも感じました」「初めて会った8年前から『この人とは将来一緒に作品を作っていくのかな』という予感がありました」(※1)と回想している。

 その予感は、現実のものとなった。『汝、星のごとく』は、小説家・凪良ゆうが2022年に発表し、第20回本屋大賞を受賞した同名の恋愛小説が原作。瀬戸内のある島に転校してきた男子高校生・櫂(横浜流星)と、島で生まれ育った暁海(広瀬すず)。ともに家庭に恵まれず、孤独を抱える二人は、互いに唯一の心の支えとなり、恋に落ちる。漫画家になる夢を叶えるために櫂は上京。一方、夢を抱きながらも、夫が愛人のもとへ去ったことで心を壊してしまった母のため、暁海は島に残る。幾度となく苦難に襲われながらも、互いを求め続ける二人の15年にわたる大恋愛が描かれている。そんな物語を彩る主題歌が「夕星-ゆうづつ-」だ。

主題歌はRADWIMPS「夕星-ゆうづつ-」|『汝、星のごとく』予告②

 どこかファンタジックなサウンドプロダクションのなか、〈地球の裏側は まだ昨日だから 今走れば間に合うかな/昨日のあの言葉を破り捨てて君を つかまえに行くよ〉という言葉が響く。お互いの孤独や傷を埋めるように惹かれ合った櫂と暁海。しかし、上京し、人気漫画家となって夢を叶えた櫂は巨万の富を得る一方で、仕事に追われ、瀬戸内に住む暁海と会う時間がなかなか取れない。久々に会えたとしても、暁海の話に心ここにあらずで、頭のことは仕事のことばかり。そんな櫂に対して、暁海は距離を感じ、別れを選ぶ。だが、この歌い出しが聴こえてきた瞬間、過酷な現実によって離れ離れになっても、心の奥底では互いを求め続けてきた、分かちがたい二人の絆を想起させる。

 櫂に起きた不幸を聞き、暁海は櫂のもとに向かう。その想いは強く、たとえ〈地球の裏側〉だとしても、暁海は櫂の元に向かうのだろう。そんなことを一瞬で想起させる、曲中、何度も繰り返される〈すきだ〉という言葉。約15年という長い時間を、さまざまな荒波にさらされながら生きてきた櫂と暁海。その深い愛が、これ以上ないほどシンプルな言葉に集約されている。さらに、〈大丈夫だよ 君が信じた夢は 誰にも奪えやしない/それをただ伝えるために 生まれてきたのだとしても〉という歌詞。二人でいることを選んだ櫂と暁海の選択。美しく、高潔で、温かなバラード「夕星-ゆうづつ-」が映画のエンドロールに流れた瞬間、櫂と暁海が抱えてきた想いは、静かに、揺るぎなく肯定される。

RADWIMPS - 夕星 -ゆうづつ- / Yuzutsu [Official Music Video]

 詞曲を手がけた野田は、撮影地である瀬戸内を実際に訪れ、楽曲を制作したという。そして「夕星-ゆうづつ-」だけでなく、映画と同じタイトルを冠した「汝、星のごとく」も書き下ろした。藤井監督から主題歌のオファーを受けてから数カ月。脚本や映像を何度も見返しながら制作を進めるなかで、野田が藤井監督に最初に渡したのが「汝、星のごとく」だった。

 深い影を帯びたギターのアルペジオに野田の歌声が重なり、〈壊れない理由のわからぬ舟の上に二人/生き方よりも諦め方が同じもん同士〉という歌詞が耳に入ってくる。男性と酒に溺れる母のもとで育った櫂と、愛人のもとへ去った夫によって心を壊してしまった母と暮らす暁海。過酷な家庭環境に加え、たちまち噂が広がり、何かと好奇の目を向けられる島の閉鎖的な空気。〈壊れない理由のわからぬ舟〉というワードは、そんな場所で生きる二人の姿を想起させる。

 〈例えば/子供が見れば笑い転げるほど無様にすれ違い続けた僕たち/この世こそ出逢ったその時から 二つ分まとめて 飽きるほど一緒に生きようよ〉という歌詞は、互いを思い続けてきたにもかかわらず、東京と瀬戸内、そして、人気漫画家と男女差別によって思うような報酬が得られない地方の会社員という、出会った頃とは変わってしまったお互いの距離と立場を受け入れられなかったことで、すれ違い、別れてしまった二人のことだろう。でも、来世はその過ちは繰り返すことなく、ともに生きると歌うということは、現世での櫂と暁海が添い遂げられなかったということだ。映画『汝、星のごとく』の結末をも示唆する非常に雄弁な楽曲だ。

 大サビの後、野田は〈痛みの先だけがあなたへと 続く道なら喜んで飛び込むよ/嘲笑う誰かの声さえ 祝福にも聞こえてくる気がするの 今は〉と確信を込めて歌う。さらに〈讃えようがない 情け容赦ない こんな世界 だけど言えるよ/あなたがいた この世界は ただそれだけで美しかった〉と。櫂と暁海の美しい純愛を切り取ったのが「夕星-ゆうづつ-」だとすれば、「汝、星のごとく」は、二人が背負ってきた過酷な家庭環境や運命を鮮烈に描き、〈あなた〉を求めざるを得なかったヒリヒリとした切実さ、その痛みの先にある美しさを描いた楽曲だ。光と闇のような、表と裏のような、切っても切れない関係にある2曲だと言えるだろう。

※1:https://natalie.mu/music/pp/theparades03

■リリース情報
「夕星-ゆうづつ-」
10月2日(金)配信リリース
配信リンク:https://lnk.to/rad_yuzutsu

「汝、星のごとく」
10月16日(金)配信リリース
配信リンク:https://lnk.to/RAD_YouLikeaStar

■作品情報
映画『汝、星のごとく』
2026年10月9日(金)〜公開中
出演:横浜流星 広瀬すず
松村北斗 中村アン 濱田岳/尾野真千子 木村佳乃
石田ゆり子 長谷川博己
原作:凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社文庫)
監督:藤井道人
脚本:安達奈緒子
音楽:大間々昂
制作プロダクション:TOHOスタジオ ドラゴンフライ
配給:東宝
(C)2026「汝、星のごとく」製作委員会(C)凪良ゆう/講談社

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