LAUSBUBが魅せた“規格外”に完成されたショー 原点と進化が交差する『society | lazy』渋谷WWW公演

 LAUSBUBのメジャーデビュー作『society | lazy』のリリースツアー東京公演の会場は、2人にとって念願だった渋谷WWW。チケットはソールドアウト、フロアには物理的に踊れないほど観客が集まっていた。

 まだ20代前半ながら数々のタイアップをこなしてきた2人のパブリックイメージを形にしたディスク1、ハイファイ/ローファイ問わず無数のテクスチャーを編み合わせたエクストリームで実験的なサウンドが展開するディスク2、というLAUSBUBの二面性を体現した『society | lazy』は、“メジャーデビュー”という言葉につきまとうありがちなイメージを見事に蹴散らした快作だった。それを携えたリリースライブも当然、素晴らしかった。

無数のネットミームを高速で投射するVJ、その空間で華を振り撒くMei

 ステージ上に現れたのは、キャスケットにサングラス、Tシャツとデニムにジャケットをラフに合わせた確信犯的スタイルのRico、パールのネックレスにドレッシーな装いでファム・ファタル的魅力を放つMei。そのビジュアルも展開されるサウンドも、数々の偉大な先達を参照してアップデートしたような、ヴュジャデな新鮮さがある。

 Meiの立つステージ上手にはムスタングベースとSP-404MKⅡ、Ricoのいる下手には対称をなすようにムスタングギター、そしてKORGのMS-20 miniとminilogue xd、Ableton MoveがMacBookに繋がれ、中央にはひとりがけのソファとテーブルランプが置かれている——。その作り込まれた空間は静謐で美しいが、しかしフロアの密集度合いも相まって、今のLAUSBUBには400人キャパほどの会場はすでにショートスケールだと言ってもいいかもしれない。

 ライブ本編のスタートはアルバムのオープナー「higher」。Footworkの高速ビートに合わせて横ノリで揺れながら歌う2人はキッチュで、シュールなユーモアを振りまく。

 ステージ上でとりわけ目を惹くのはMeiの仕草と存在感だ。サウンドプロダクションの中核を担うRicoが共同プロデューサーの網守将平と音のやりとりをしている最中、Meiはステージングのアイデアやイメージに考えを巡らせていたという。制作ではRicoが手腕を振う一方で、ライブの華は間違いなくMeiだ。そのことを改めて思い知らされる。

Rico
Mei

 Meiはハンドマイクでひらひらと身体を動かし歌ったかと思えば、「Sweet Surprise」で這うようなベースラインを弾きながら歌い、「game」では豪快なダブベースを打ち鳴らし、「Solaris」後の約10分間にわたるインストゥルメンタルセクションや「imagine」「concert」などではステージ中央のソファに腰かけて、脱力したままサンプラーを弄ぶ。対してRicoは同期音源に頼らず、シンセサイザーを手弾きしたりサンプラーを手打ちしたり、ときにギターを手にして線的/点的フレーズを奏でる。サングラスをかけたり外したりとあくまでクールに、淡々とライブに集中しているようだが、「Sweet Surprise」のギターソロではステージセンターに歩み寄るなど目にも楽しい。

 MeiとRicoが対照的な瞬間もあれば、「static crosswalk」ではステージ前方に出た2人がボーカルをかけ合い、「scanning shadow」では2人でマイクを取って歌って踊る場面も。今のLAUSBUBのステージはエンターテイメントとして仕上がっており、ステージ上からは目が離せない。「higher」ののち軽い自己紹介を挟んでひと繋ぎで展開されたライブは、ひとつの完成されたショーのようであった。

 それはバックに投影された映像との相互作用も大きくあった。VJのeijinが送り出す乱雑だがリズミカルな映像。ドリフトするY2Kなスポーツカーやドナルド・トランプのネットミーム動画など、画角も解像度もバラバラなネットからぶち抜いた無数の映像や写真の羅列は、常時接続でバグった脳内風景を可視化したようだ。グリッチして歪みながら倍速で生々流転し、ときにヴェイパーウェイブを通過したアンドレイ・タルコフスキー、あるいはハイパーポップ化したデヴィッド・リンチを彷彿とさせる。

 ポスト・インターネット時代の悪夢のように流れ込む視覚情報は、一見ステージ上の2人とは関係なさそうに見える。しかしゆるやかにリズムを共有したり、「bad pingpong」や 「game」、「lazy」で楽曲やアルバムのアートワークをモチーフにした映像を投射されるなど、表層的な話にとどまらず、レフトフィールドな感性でLAUSBUBのサウンドと深く共鳴している。RicoとMeiの映像を投影し、ステージ上の2人と二重映しにすることで楽曲のコンセプトを一瞬で知覚させた「scanning shadow」、そしてアルバムのクライマックスを飾る「white breathe」の映像はeijinがこのライブツアーのために制作していたものだという。

 そうした映像と、ステージ上のRicoとMeiの佇まい、実験的ながらエンターテイメントショウとして作り込まれたサウンドパフォーマンスが同居する空間はシュルレアリスティックで、まさに、解剖台の上でミシンとこうもり傘が偶然出会ったように美しい、と形容したくなる。

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