サカグチアミ、改名から1年で見つけた“自分らしさ”の答え ミセス 大森元貴から受けた刺激、『who am i?』ができるまで
ミセス、大森元貴から受けた刺激とエールーー「背中をさらにグッと押してもらえた」
――先ほどお話に出た『CEREMONY』では、堂々としたパフォーマンスを披露されていましたよね。手ごたえもあったんじゃないですか?
サカグチ:「どうなるんだろう……」みたいな思いを抱きながら当日を迎えたんですけど、いざ3曲を演奏してみると、自分の楽曲たちがでっかい会場に対して頼りないものではなかったというか。ちゃんと広い会場にも似合うものを作れているんだなっていうことを感じることができました。しかも、Kアリーナで見ためちゃくちゃスケール感のある光景は、アルバムのリードになっている「虎」のアレンジを進める上でも大きな指針になったりもして。すごく特別な1日でしたね。
――あの段階では未発表曲だった「裸(-Naked ver.-)」を弾き語りで披露されたのも大きな話題を呼びましたね。
サカグチ:そうなんですよ。あのイベントは多様なジャンルの方々が出演されていたんですけど、弾き語りでやったのは私だけで。2万人のお客さんの前でけっこう尖ったことやってるなとは自分でも思ったんですけど(笑)、少ない音像で披露したからこそ、あの曲に込めたメッセージがみなさんにぐっさり刺さったところがあったんじゃないかなって思います。それがきっかけで「裸(-Naked ver.-)」を先行配信する流れになったのもすごく嬉しい出来事でしたね。
――『CEREMONY』を主催するMrs GREEN APPLEとは2018年に「Log」という楽曲でコラボレーションをされていましたけど、そこからずっと交流は続いていたんですか?
サカグチ:はい。ちょくちょく連絡を取り合ったりしている関係です。「裸(-Naked ver.-)」に関しても、以前にSNSでちょろっとだけアップしていた動画を大森元貴氏が見てくれて、「フル聴かせてくれない?」って言われたから送ったら、「すごくいい曲だね」って褒めてくれました。私の音楽を気にかけてくれてる感じですね。
――コラボから約8年経っていることを考えると、ミセスのみなさんもサカグチさんの成長に驚いているところがあったんじゃないですかね?
サカグチ:久々にミセスのライブも観れたし、すごく刺激的でした。成長はどうなんだろう。感じてくれたのかな? 3曲目に「裸(-Naked ver.-)」を歌った後、みんなが拍手してくれているときに大森氏が私に向かってグッ!ってサムズアップしてくれたのがすごく印象的で。イベントに出てもらってよかったと思ってくれていたんだとしたら、私としてはすごく嬉しいですね。改名したサカグチアミの背中をさらにグッと押してもらえた気がしました。
――そんな充実した活動の中、ついにアルバム『who am i?』が完成しました。フルアルバムとしては実に6年8カ月ぶりとなります。
サカグチ:前作を出したのは19歳のときだったので、当時はまだセルフプロデュース的なこともできていなかったですし、アルバム制作に対しての責任をしっかり持てていなかったような気がします。もちろん、あれはあれでちゃんと完結したいい作品だったとは思うんですけど、自分的には心残りがあったんです。なので、念願のニューアルバムでは「こんな作品にするぞ!」という心の準備をしっかりした上で臨みました。だからこそ、わりと全体通して、今の自分の好きなことを思いきりやれた感覚があるし、こんだけ強気なタイトルにできたのかなと思います。
――いろんな意味に受け取れるタイトルですよね。
サカグチ:はい、まずひとつは、「私は誰?」という問いに対して、それはこのアルバムを聴いてもらったらわかります、みたいな感じですね。もうひとつは、『who am i?』の“am i”の部分が“ami(アミ)”とも読めるので、「アミって誰?」という意味。私をまだ知らない人たちにも広く届けるぞっていう思いを込めました。スケールの大きい「虎」という曲をリードにしたことも含め、もっと大衆に聴かれる存在になりたいなと思って。
――ご自身に対しての「私は誰?」という問いは、もう存在していない感じですか?
サカグチ:確かに「私らしさって何だろう?」「私の強みって何だろう?」みたいなことは、改名前からずっと探ってる問題ではあったんですよね。でも、それを考えながら曲を作り続け、今回アルバムを完成させたことで、今はその“?”が消えた感じです。自分の中ではもう、自分らしさが明確になったというか。だから今度は聴き手にその問いを投げかけられるようになったんだと思います。
ーーアルバム全体の印象としては、前作からの歌声、表現力の変化が目覚ましいですよね。
サカグチ:それは自分でもめっちゃ感じますね。声がもう全然違う。なんかね、きしめんがほうとうぐらいになった感じ(笑)。
――だいぶ太くなって(笑)。
サカグチ:あははは。以前の歌を聴くと、「まだまだきしめんやなー」みたいな(笑)。前作は大学受験で一時的に音楽活動をセーブした後すぐのレコーディングだったので、いろいろ探り探り歌っている感じがあるんですよね。その青さが逆にいいのかもしれないですけど、自分では恥ずかしくてあんまり聴けない(笑)。そういった変化が生まれたのは、この6年半の間に47都道府県弾き語りツアーをやったことが大きく影響している気がしますね。あのツアーは本当に修行だったんですよ(笑)。弾き語りだとごまかしが効かないし、会場のコンディションがあまり良くなかったとしても、どうにかして自分で補っていかなきゃいけなくて。それによって歌うこと自体がすごく鍛えられたし、どんな状況であっても自分の表現をもったいぶらずに出しきることも身につきました。
ーーではアルバム曲のお話を伺いましょう。まず3曲目の「カラクリ」。クボタカイさんがフィーチャリングされていますね。
サカグチ:この曲の制作を進めている途中で、「これ、ラップを入れてもおもしろいよな」と思い、カイくんにオファーしたところ、二つ返事でOKをいただけました。カイくんとは私が以前、大阪でやってたラジオにゲストで来ていただいたことがあるくらいの繋がりだったんですけど、私のEP『名前』を絶賛してくれていたみたいなので、コラボするならカイくんがいいなと。私も彼の曲がすごく好きだったので。がっつり会ったのはレコーディング当日だったんですけど、お互いの楽曲を好きで聴いていたこともあって、「ほぼ初めましてだけど、いろいろ知ってるよね」みたいな雰囲気があって、作業はすごくスムーズでしたね。
――Aメロのサカグチさんパートにもちょっとフロウっぽいニュアンスがありますよね。それはクボタさんとのコラボで引き出されたものなんですかね?
サカグチ:この曲は3、4年前にはあったんですけど、その時点でちょっとラップっぽさはあったんですよ。だから他の人のラップを入れてみようっていうアイデアが出たんだと思います。ただ、カイくんはポップスにラップを入れ込むのがすごく上手いので、ちょっと影響を受けているところはあるかもしれないですね。今までの自分は1人だけで作品を完結させた思いが強かったんですけど、この約6年半で少し考え方が変わったところがあり、女性アーティストの楽曲に男性の声が入ってくるのって新鮮でいいなって思うようになったんです。それが今回実現できて嬉しかったですね。
――4曲目は「支度中」。終わった恋への未練から一歩踏み出す決意を歌ったラブソングですね。
サカグチ:EPの場合はどれもリードにできるくらいの曲を詰め込むことが多いんですけど、アルバムになるとちょっと箸休め的な曲があってもいいよなと思っていて。なので、アレンジャーの(ひぐち)けいちゃんに、「ライトな感覚で聴いてもらえる曲にしたいです」っていうお話をした上で、楽曲選びから一緒にやっていった感じでしたね。他にも候補はあったんですけど、「この曲だとリード感があるから今回はやめとこう」みたいな。
――そういう選び方はおもしろいですね(笑)。
サカグチ:「ちょっといい曲すぎるからやめよう」みたいな(笑)。もちろん、この「支度中」もめっちゃいい曲なんですけど、アルバムとしての曲の並びを重視したうえでの選曲、アレンジにしましたね。いい緩さがあって、私は大好きです。歌に関してもリード感が出ないようにめちゃくちゃ力を抜いて歌った結果、いいテイクが録れました(笑)。
――この曲のラストにはドアが閉まる音が入っていますよね。で、次の曲「絆創膏」には〈二人の思い出に蓋をした音だった〉というラインがあるので、ちょっと繋がりを感じたところがあったんですよね。
サカグチ:うわ! 鋭い! そうなんです。ドアを閉める音で終わるのは「絆創膏」とは関係なく決めていたんですけど、曲順を考えている段階で、「あ、この2曲は繋がってくるよな」ってことに気づき、連チャンで並べることにしたんですよね。
――そういうリンクは他にもありますよね。“満月”というワードが出てくる曲がいくつかあったり。
サカグチ:あ、ほんとだ! そこは気づかなかった(笑)。確かに繋がってますね。自然とやってたのかな。次のインタビューから言います、それ(笑)。