マイケル・シェンカーらレジェンドが大集結! 『FULL METAL JAPAN』主催者が語る、今メタルフェスを新設した理由

マイケル・シェンカー、POWERWOLFらラインナップの狙いは?

東京音協 三浦由美氏、山本聡氏

ーー記憶する中で、ここまでピュアメタルなバンドだけが揃った大型フェスって、日本では一度も開催されたことがなかったのですよね。残念ながらRAGEが出演キャンセルとなってしまいましたが、彼らの代わりに出演するアーティストは決まっているんですか?(※取材は9月上旬実施)

三浦:まもなく発表できると思うんですが、Vandenbergが出演することになりました(※9月17日発表済み)。最初は就労ビザの関係やチケット売り上げを伸ばすために、もうちょっと王道な日本のバンドを呼んだほうがいいんじゃないかという話もあったんですが、山本が「Vandenbergでいきたい」と言い始めて。

山本:以前から呼びたいという話は出ていたんです。でも、彼らのエージェンシーの間に入っている人に相談したら、「(ギャラが)高いから難しいかも」と言われてしまって。

三浦: でも、今回「やっぱりVandenbergを呼びたい」ということになり、マネジメントに「こういうフェスをやりたいから協力してほしい」と連絡したら快諾してくれて。どうやら、ドイツやヨーロッパではすでに「日本で『Wacken』お墨付きの新しいフェスが行われる」と噂になっているようで、逆に向こうから「出たい」というアプローチもたくさん届いているんです。それもあって、Vandenberg側もすぐにOKしてくれたんでしょうね。

ーーさすがにVandenbergは予想外でした。エイドリアン・ヴァンデンバーグは来年、ミュージシャン活動50周年記念公演を行うことも発表していますし、絶好のタイミングでの来日になりそうですね。改めて、今年のラインナップについてお聞きしたいのですが、初回ということもあり、ヘッドライナー含めてインパクトを与える必要もあったんじゃないかと思います。

山本:まず、マイケル・シェンカーですよね。ちょうど今年1月、UFOのセルフカバーアルバム(2024年発売の『My Years With UFO』)で武道館を含む日本公演を行ったばかりですが、うちとの関係で言ったらマイケルを初回に呼ばないわけにはいかない。それともう1組、Angraも出発点のひとつでした。この2組をヘッドライナーとしてブッキングを進めたんですが、まさかPOWERWOLFをゲットできるとは思いませんでした。決まるまでに結構苦労しましたが、今回呼ばなかったら次はいつになるかわかりませんしね。

三浦:今回のために、彼らのライブを海外に観に行ったんです。彼らは日本ではまだそこまで大きな知名度はないじゃないですか。でも、あのステージを一度体験してしまったら、日本でも観てほしいと思わずにはいられない。ゴシック系といいますか、1本の映画を観ているような演出で、この感動は日本人だったら共有できると思ったんです。単独であのステージを再現することは難しいかもしれないけど、フェスという場所だったら実現できるかもしれない。実際、彼らはフェス向きのアーテイストなので、これがいいチャンスだと思うんです。

山本:あれは映像ではなく、音圧と炎の熱さ苦含めて実際に体験してもらわないと、本当に良さが伝わらないと思うんです。この来日を機に、絶対に日本でも人気が出ると確信していますし、ここで跳ねることができたら次のビジネスにも繋がるんじゃないかなと。

三浦:今回のラインナップって、1つひとつのバンドにみんな意味があって。マイケル・シェンカーは我々がずっと一緒に仕事してきたこともあるし、ホルガーとの出会いのきっかけでもある。RAGEは今回キャンセルになってしまったけど、彼らがフックアップしてくれたから2年前に『Wacken』に行くことができ、ホルガーと再び繋がることができた。Angraに関しても、我々はキコ(・ルーレイロ / Gt)がいない時代にもツアーをやりましたし、キコも単独来日公演を担当していて。それで、Angra側に「せっかくなら日本でキコが飛び入り参加するライブをやってくれないか」という企画を持ち込んだら、今回それが『FULL METAL JAPAN』で実現することになったんです。

山本:エドゥ・ファラスキ(Vo)に関しても、たまたま日本にソロで来ていたときに彼から「久しぶりに会いたい」と連絡が来て。そのときに「これ、エドゥも入れたらもっと面白いんじゃないか」と思って、彼に打診したらOKをもらって、こういうスペシャル編成が実現したわけです。

三浦:Pretty Maidsもボーカルのロニー・アトキンスが何年か前から大病を患っていたんですけど、2年前にAvantasiaの一員として来日してくれて。その後寛解したということもあり、今度はPretty Maidsとして来てくれることになりました。Hibriaもずっとうちでやってきて、初来日のときから「こんなにカッコいいバンドいるんだ、ヤバイ!」と感動しましたが、途中から音楽性もメンバーもどんどん変わってしまって。でも、「このフェスのオープンを初期のメンバーでやってみたら、面白いんじゃない?」という話が出たときに……。

山本:ユーリ(・サンソン。2017年まで在籍した初代ボーカル)がたまたま日本に来ていて。

三浦:Angraのエドゥと同じなんですけど、一緒にお茶をしたときに「ユーリさ、Hibriaに戻ってちょっとやってみたら?」と話してみたんです。そうしたら、「僕はやりたいけど……」と言ったので、そこから各所に話をしたら日本だけの企画ということで決まって。

山本:ユーリはユーリで日本に来たいと言ってるし、HibriaはHibriaで日本に来たいと言ってるし、それぞれに「バラバラじゃ無理だよ」って話をしていたので、だったらくっつけちゃえってことですよね。単にアルバムを出したから日本に来るんじゃなくて、ひとつストーリーを作って来日することに意味があると思うんです。しかも、HibriaもAngraもLOUDNESSと仲が良いから、双方から「なんでLOUDNESSを出さないの?」から言われるわけです。

三浦:特にAngra側から「一緒に出たい」と熱いコールがあって。なので、当日は何が起こるかわからないですよね。そこに関してはこちら側からは特に仕掛けていないので、アーティスト同士でセッションしたいんだったらご自由に、というところです。

山本:セッションとはちょっと違いますが、ガスG.とロニー・ロメロはこのフェスのためだけに特別なことをやってもらうことになっていて。

三浦:ガスG.もFirewindでずっと一緒にやってきて、一緒に京都に遊びに行ったりするくらい仲が良くて。

山本:ロニー・ロメロはマイケル・シェンカーと一緒に活動していたこともあったし。

三浦:そう。しかも、我々はマイケル・シェンカーと同様に、グラハム・ボネットやジョー・リン・ターナーといったRainbow系譜のアーティストともずっと仕事をしてきたので、我々の歴史をこのフェスの中に落とし込む上でもRainbowは重要だなと考え、今回2人にはRainbowの楽曲を演奏してもらうことにしました。加えて、昨年オジー・オズボーンが亡くなったこともメタル界において大きなニュースだったので、オジーと一緒に活動していたガスG.がいるということで、オジーのトリビュートもお願いすることにしました。

「円安には相当苦しんでいます」ーー『FULL METAL JAPAN』の予算事情

東京音協 三浦由美氏、山本聡氏

ーー日本からは先ほど名前が挙がったLOUDNESSと、この夏に『Wacken』にも出演したLOVEBITESが出演します。

三浦:『FULL METAL JAPAN』の企画書に出演アーティストの出身国の国旗を載せたんですけど、なんだかオリンピックみたいな感じになっちゃったんですよね。で、そこに日本代表として国旗とともに名前を挙げるのならば、やはりLOUDNESSしかいないだろうと。Angraからもすごい推薦がありましたし。

山本:LOVEBITESは今、日本ですごく勢いのあるバンドですし、海外でも活躍して話題になっている。先ほどおっしゃったように、彼女たちは今年の『Wacken』にも出演したので、出演するには絶好のタイミングですよね。

三浦:今回、基本的には『Wacken』への出演経験があるアーティストばかりなんですよ。そういうアーティストが日本の『FULL METAL JAPAN』でも演奏するというのは、今年のテーマのひとつでもあるので、LOVEBITESはうまくハマりましたね。

ーーそういうバックストーリーや出演する意味合い、ほかのバンドとの関係性や東京音協との関係性を踏まえて『FULL METAL JAPAN』に参加すると、より深く楽しめそうですね。

山本:そういう意味では、うちとの関わりが深いAcceptも名前が挙がりました。最近、結成50周年記念アルバム(『Teutonic Titans 1976-2026』)も出したばかりだったので、いいタイミングかなと思ったんですけど、ちょっと今回は難しくて。

三浦:元メンバーのウド(・ダークシュナイダー / Vo)がやっているDirkschneiderも呼びたかったんですけど、『Wacken』のグループイベントに『Full Metal Cruise』というものがあって、そちらに出ることが決まっていたので今回は断念しました。

ーー先ほど、ガスG.やロニー・ロメロにオジーやRainbowの曲をやってほしいとオーファーしたと話していましたが、ほかのバンドにも「この曲をやってほしい」という話はしたんですか?

山本:すべてのアーティストに対して言及したわけではないですが、Hibriaには初期の3枚(2004年の『Defying The Rules』、2008年の『The Skull Collectors』、2011年の『Blind Ride』)を中心にとお願いしました。もちろん、現在のメンバーも一緒に来るので、新譜(2026年発売の『On the Shortness of Life』)からもやると思います。Stratovariusは確か『Episode』(1996年)発売から30周年なので、そのあたりの曲は積極的にやってくれるんじゃないかな。Angraもエドゥが参加してくれるので、『Rebirth』(2001年)や『Temple Of Shadows』(2004年)の頃の曲を多くやるつもりみたいです。

三浦:この手のアーティストの人たちって、自分たちに何が求められているかわかっているので。やっぱりお客さんを喜ばせたいから、新曲をガンガンやりよりも代表曲を積極的に披露してくれると思いますよ。

ーー改めて今年のラインナップを確認すると、LOUDNESSとLOVEBITES以外はすべて非アメリカ圏のアーティストなんですよね。そこにもほかのメタル系フェスとの違いを感じます。

三浦:もともと、うちはそんなにアメリカのアーティストをやっていないですよ。

山本:Impellitteriぐらいかな。

三浦:そうですね。クリス・インペリテリ(Gt)にも昨年、一応このフェスの話をしてみたんですけど、ご自分のビジネスも忙しいようでした。

山本:結果的には、ラインナップにおいて過去のメタルフェスとの差別化ができたので、独自の色が出せているんじゃないかと思います。

ーーある一定以上の年齢層に響くこのラインナップ、ぜひ若い世代にも楽しんでもらいたいですよね。

山本:せっかくなら、親子で来てほしいですよね。例えば、今のメタルやラウド系のバンドが好きな若い子とその親御さんが、「今のラウドな音楽は、あの人たちが作ったようなものだよ」と話しながら楽しみながら観てもらうのもいいですし。もちろん、若い方同士でメタルのオリジネーターの凄みを体感していただいて、互いに語り合うのもいいですし。特に最近は日本のメタル人口がどんどん減っていて、そこをなんとかしてもっと広げないとこのまま終わってしまうんじゃないかという危機感もあります。それに……言い方は悪いですが、レジェンドたちもいつまで活動できるかわからない。このフェスでも大変お世話になっている(音楽評論家の)伊藤政則さんがよく言っているように、観られるときにちゃんと観ておかないとあとあと後悔することもあると思うので、こういう機会を逃さないでほしいです。

ーーちょっと話題が脱線しますが、つい最近『NHKスペシャル』(NHK総合。9月6日放送)で円安について特集され、その中で今年の『SUMMER SONIC 2026』でヘッドライナーを務めたThe Strokesの出演料が15年前と比べて2倍になったという話がありました。海外アーティスト中心の音楽フェスの場合、現在の円安問題は必ずつきまとうものですが、『FULL METAL JAPAN』を開催する上でもそのへんはネックになったりしたのでしょうか。

三浦:もちろん、円安には相当苦しんでいますし、最初に立てた予算からだいぶかけ離れてしまうことも少なくないです。ただ、『FULL METAL JAPAN』の場合はPOWERWOLF以外、過去に何度もお仕事している気心知れた相手ばかりなので、「これぐらいだったら引き受けてくれるかな?」という金額を提示して、皆さん快諾してくれるんです。加えて、皆さん日本に行きたがっていることも大きくて。日本のことが大好きで、日本の文化や食事が大好きだから、我々が提示した金額で引き受けつつも、自腹で延泊したり家族を連れてきたりして、日本での生活を満喫してくれる。そこも含めて、いい関係性で成り立っているので、ほかのプロモーターさんと比べたら予算をだいぶ抑えられているという自負はあります。

山本:でも正直、支払う前に円高にならないかなとは思いますよ(笑)。ただ、うちはヨーロッパ圏のバンドが多いからドル建てが少ないので、そこで多少助けられているところもあります。もちろん、経費がどんどん膨らんでいくことはある程度見越していて、最初はPOWERWOLFのステージでパイロを使わずCO2で乗り切ろうかと考えたこともあったんですよ。

三浦:バンド側も「それでも日本に行きたいから」と言って、それをOKしてくれたんです。でも、実際のショーを観たら山本が「やっぱり(CO2だけは)無理だ。パイロがなかったら成り立たない」と言って、結局は使うことになって。

山本:もちろん日本の消防法的に、海外と同じようにはいかないですけど、予算内で可能な限りやりたいなと。そこも含めて、チケット代も可能な範囲内で収めているつもりです。

ーーまずは『FULL METAL JAPAN』が起爆剤になって、日本のメタルシーンがどんどん盛り上がっていくことを願っています。

三浦:『Wacken』自体がそういう存在になりましたものね。実際に『Wacken』に行っていいなと思ったのが、バックヤードのグリーンエリアでエージェンシーだとかマネジメントがそこでビジネスの話をしていること。最初はただの音楽好きのおじさんが2人で始めたのかもしれないけど、今やマーケットの中核を担っているし、そういう部分でいうと今回はまだ1回目だからそこまでの余裕はないかもしれないけど、将来的には日本のマーケットをしっかりと維持できるように、いろいろと協力できる存在になりたいなと思っていて。実は今回、向こうのマネジメントサイドの方々が自腹で遊びに行くと言ってくれているんです。世界からいろんな人たちが集まって、そこに日本のレコード会社の人たちも加わってビジネスの話をしてマーケットを広げていくっていう。『FULL METAL JAPAN』も最終的にはそういう場所になればいいなと思っています。

ーー今回は間に合わなかったけど、将来的にこういうことができたらいいなという要素は、ほかにもありますか?

山本:今回は会場の規模的に難しかったんですが、最初のアイデアとしてオクトーバーフェスティバルも併催したいなと思っていたんです。例えば公園エリアを作って、そこでドイツビールやドイツの郷土料理を提供するんですが、フェスに来たお客さんだけでなく、たまたま横浜に遊びに来た方、地元の方にもドイツを楽しめるという。音楽は聴かないけど、ここに来たら楽しいよという催しにできたらなと考えていたんです。

三浦:そういう話をしたら、ドイツ商工会議所とドイツ大使館にも後援してもらうことがすぐに決まって。「ああ、『Wacken』だったらいいよ」と。できる限りで、ドイツの色をだしています。

山本:ただ、いまやオクトーバーフェスティバルはあちこちでやっているので、なかなか難しいところもあって。

三浦:今回はキッチンカーを入れることで、その要素をなんとか維持しています。

山本:やりたいことはたくさんあるんだけど、1回目だからなかなか勝手がわからないところも多くて。

三浦:会社の方針としては、まず最初はステージをしっかり見せようと。なので、今回はそこにフォーカスを当てて、来年以降は……ブッキングに関してはこの路線を維持しながら、着実に継続させていけたらと思っています。

■開催情報
『FULL METAL JAPAN 2026 ~Powered by WACKEN~』
日程:2026年10月24日(土)・25日(日)
会場:ぴあアリーナMM
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-2-2
開場/開演:12:00/13:00

<出演>
DAY 1|10月24日(土)
MICHAEL SCHENKER GROUP
STRATOVARIUS
LOVEBITES
VANDENBERG
Gus G. & RONNIE ROMERO

DAY 2|10月25日(日)
POWERWOLF
ANGRA feat. KIKO LOUREIRO & EDU FALASCHI
LOUDNESS
PRETTY MAIDS
HIBRIA featuring Iuri Sanson & Renato Osorio

<チケット>
SS席:28,000円
S席:23,000円
A席:20,000円

主催:FULL METAL JAPAN 実行委員会
後援:ドイツ連邦共和国大使館/在日ドイツ商工会議所/BAYFM
問い合わせ:東京音協

公式サイト:https://fullmetaljapan.com/

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