AKB48、新たな全盛期の幕開けは近い? 伸びるCDセールス、躍動するセンター 伊藤百花 記録づくしの最新作が映す現在地

 AKB48が8月19日にリリースした68thシングル『好きish』が、8月31日付の「オリコン週間シングルランキング」で初登場1位を獲得した(オリコン調べ/※1)。2009年リリースの『RIVER』から55作連続のシングル1位。「シングル通算1位獲得作品数」では、これまで嵐と並んでいた歴代1位タイから単独1位となるなど、いくつもの記録を更新するシングルとなった。

好きish / AKB48 68th Single【公式Music Video】

 こうした記録とともに目を引くのが、近作のセールスの伸びだ。Billboard JAPANの週間シングルセールスチャート「Top Singles Sales」では、20周年記念シングル『Oh my pumpkin!』が初週52万6581枚、その次の『名残り桜』が62万2607枚、そして『好きish』は76万5977枚を記録。CD売り上げだけでファンの増減を断定することはできないものの、20周年で高まった注目が、その後の2作でも失速することなく続いていることは、現在のAKB48を考えるうえで重要だろう。

 昨年の20周年イヤーでは、前田敦子、高橋みなみ、小嶋陽菜、指原莉乃が「Oh my pumpkin!」に参加したほか、日本武道館での周年記念コンサートにも多くのOGが集結した。かつてAKB48を追っていたファンにとって、再びグループへ目を向ける大きなきっかけになったことは間違いない。一方で重要なのは、その視線を“今のAKB48”へ移すための動きが、その後も途切れていないことだ。

 今年4月の国立代々木競技場 第一体育館公演では、向井地美音の卒業コンサートに続いて、「私たちだけじゃダメですか?」と題した『AKB48 春コンサート2026』を開催。そのうち「Part1:Again」は、昨年末の日本武道館20周年記念コンサートをきっかけに“今のAKB48”に興味を持った人も楽しめる公演として、「重力シンパシー」「回遊魚のキャパシティ」といった往年の楽曲から近年の「カラコンウインク」までを披露。さらに「Part2:Kokokara」「Part3:Beyond」では21年目以降を意識した構成を打ち出している。20周年を懐かしさだけで完結させず、そこから現在のメンバーを知ってもらう導線がしっかりと作られてきた。

 そうした21年目のAKB48を象徴する存在のひとりが、19期生の伊藤百花だ。2024年に加入し、「まさかのConfession」で初選抜入り。「名残り桜」で初めて表題曲センターに抜擢され、「好きish」では2作連続でセンターを務めることになった。同一メンバーが2作連続で単独センターを務めるのは、2014年の「ラブラドール・レトリバー」「心のプラカード」でセンターを担った渡辺麻友以来、約12年ぶりとなる。小栗有以や倉野尾成美といった現在のグループを支えてきたメンバーがいるなかで、加入3年目の伊藤を2作続けて中心に据えたことも、21年目のAKB48が新たな顔を打ち出していることの表れだろう。

名残り桜 Music Video / AKB48 67th Single【公式】

 さらにグループ外の仕事を見ても、8月だけでも『LIFE!夏』(NHK総合)や『#プロフェッショナルランキング』(TBS系)に出演し、雑誌『mini』(宝島社)にも登場。ラジオでは冠番組『AKB48伊藤百花のひと“花”咲かせたいっ!』(文化放送)が放送されるなど、テレビ、ラジオ、雑誌と活動の幅を広げている。グループとしても『LuckyFes’26』への出演など、普段AKB48に触れていない層の目に留まる機会が増えている。

 筆者もこれまで伊藤に何度かインタビューしているが、今年『アップトゥボーイ』 vol.364(ワニブックス)で話を聞いた際には、自身への注目が「AKB48やアイドルを知らない方にも見て頂けるきっかけになっているのが嬉しいです」と語っていた一方で、「バズって終わりではなく、劇場に足を運んで頂けるきっかけになれるように頑張りたいです」とも話していた。SNSや個人での露出を入口にしながら、その先でAKB48そのものに興味を持ってもらう。伊藤自身が以前から意識してきたそうした役割が、現在の幅広い活動、そしてAKB48への注目にもつながっているのだろう。

 そして、「好きish」という楽曲そのものも、現在のAKB48の勢いを支える大きな要素になっている。作曲を手掛けたのは、嵐の「Love so sweet」や乃木坂46の「I see…」などで知られるyouth case。振り付けは、FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」やCUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」などを手掛けてきた槙田紗子が担当している。“ish”=“~っぽい”、“~かも”という言葉を使い、まだ好きとは言い切れない曖昧な恋心を、爽やかな疾走感のあるサウンドに乗せた楽曲だ。サビではタイトルが繰り返され、振り付けにも“モンキーダンス”を取り入れるなど、一度観ただけで引っかかりを残す仕掛けが多い。MVは、伊藤の脳内で展開される“恋愛ゲーム”と“プロム”をモチーフにしたポップな世界観で、発売前の段階ですでにYouTube再生回数1000万回を突破していた。

 9月26日、27日には、約2万席を備えるKアリーナ横浜で3公演を開催。「新曲『好きish』コンサート」「全員『好きish』コンサート」、メンバーごとの“推し席”を設けた「推しが『好きish』コンサート」と、それぞれ異なるコンセプトが打ち出されている。なかでも27日の「推しが『好きish』コンサート」はチケットが完売。結成21年目のグループがこの規模の会場で3公演を行うことも、現在の勢いを示すひとつの材料と言えるだろう。

 55作連続1位という記録以上に興味深いのは、結成から20年を超えたグループが、ここにきて再び数字を伸ばしていることだ。長く活動するアイドルが世代交代を経て再評価される例はこれまでもあったが、40万枚台まで落ち着いていた初週セールスが70万枚台まで上昇するケースはそう多くない。しかも、それが周年イヤーの一時的な盛り上がりではなく、その後の作品でも続いているのはあまりにも異例と言っていいだろう。「好きish」が残した数々の記録は、AKB48がこれまで築いてきた歴史だけでなく、グループが再び上を向き始めている現在地を映すものでもある。

※1:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2026-08-31/

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