10-FEET、斬新なセトリに込められた“変わらない願い” 寂しさで爆走し、優しさで包み込んだツアー『壊れて消えるまで』

 10-FEETの表現の根底にあるものと聞かれたら、やはり“寂しさ”ではないかと思う。孤独や後悔に苛まれたとき、否応なく別れを強いられたとき、未来へ続く道が見えず不安に襲われたとき、ふいに心を覆う寂しさ。だが、寂しいからこそ、それを目いっぱい誤魔化して阿保なふりだってできるし、どうにか明日を生きる糧に変えることだってできる。そして、寂しさを知っているからこそ、誰かに対して優しくなることができるのだ。10-FEETのライブに行くたびに胸を打たれるのは、人生には必ず寂しさがついてくるけれど、粘って粘って生きていれば、時にはそれが前へ進ませてくれる力になり得るということを思い出させてくれるからである。

 今年3月にリリースされたシングル曲「壊れて消えるまで」は、今なお10-FEETが大きな寂しさを抱え、それを燃料に突っ走っていることを感じさせてくれる楽曲だった。それを携えてのツアーだったからかもしれない。『10-FEET “壊れて消えるまで” ONE-MAN TOUR 2026』、9月16日のZepp Haneda(TOKYO)公演は、人生いろんなことがあるけど、今日くらいは本気で叫んで、笑って帰ってほしい――そんな願いがアンサンブルやセットリストの随所に強く滲み出たライブだったように思う。

TAKUMA(Vo/Gt)
NAOKI(Ba/Vo)
KOUICHI(Dr/Cho)

 例えば、オレンジの明かりに照らされ哀愁の響きすら帯びた「太陽4号」、「大切な人になるべくたくさん会いに行けや」というTAKUMA(Vo/Gt)の叫びが一層の説得力を生んだ「アンテナラスト」、行き場のない感情を跳ね返すようにTAKUMAがでっかい音でハーモニカを吹いた「淋しさに火をくべ」。セットリスト5〜7曲目、比較的早いタイミングで訪れた感動的な流れは、この日のライブの“色合い”を決定づけたと言ってもいい。時が経ち、現実に慣れるほど無垢な心を失っていく自分を、TAKUMAは〈つまらないや〉(「太陽4号」)、〈つまらぬ男になりました〉(「アンテナラスト」)、〈つまらなくなっただけ〉(「淋しさに火をくべ」)と歌う。足早に過ぎ去る日々に追いつこうとすればするほど、見て見ぬふりをしたり、物事を早く解決しようとばかり考えてしまう。必死に生きている証なのだから悪いこととは言い切れない。しかし、そうやって擦り減らして生きていった果ての自分を、かつての自分が見たらなんて言うだろうか。後悔や悲しみを抱きしめ、せめて本当に大切な人の前でだけはかっこよく生きること。誰かが自分にそうしてくれたように、それだけは最後まで見失ってはいけない。そして、見失いそうになったらライブに来いということだ。「優しさは想像力」とTAKUMAは言ったが、本当にそうだと思う。それを信じて貫いている男の歌がZepp Hanedaに鳴り響く。

 曲を追うごとに、そんな剥き出しの感情が3ピースのアンサンブルでより立体的になっていく。「BPMが速いって意味じゃなくて、“この楽曲なりのスピード感”がうまく出ればいい」(※)とインタビューでも語られた「スパートシンドローマー」では、まさに速さだけでも音のデカさだけでもない、“奥行き”を感じさせる演奏でグルーヴィな余韻を残し、アウトロにかけてのNAOKI(Ba/Vo)のうねるようなベースラインもクールに決まった。その後を任された代表曲「VIBES BY VIBES」も、空間を広く活かし、リズムの緩急を自在にコントロールした技ありな演奏で魅せる。KOUICHI(Dr/Cho)のドラムの切れ味が抜群に気持ちよかったこともそう感じた要因だろう。

 さらに、TAKUMAが「今なんかうまく行ってないなっていうヤツ、どれくらいいる!?」「今日は全員で笑って帰ろうや!」とフロアに投げかけて「RIVER」へ。性別も、年齢も、職業も、育った境遇も異なる人たちによる〈誰も独りで生きていけない〉の大合唱。何度観ても美しい光景だ。ライブハウスで聴くと一層ヘヴィに感じる「第ゼロ感」、“助走=イントロ”を長く取った分だけ熱く熱く盛り上がった「back to the sunset」を経て、「ここできたか!」と思わず身を乗り出したのが「壊れて消えるまで」。全25曲中の18曲目。なかなか演奏されないと思っていた矢先、お待ちかねである。人生の無情をありのまま鳴らしたロックンロールだが、この日はどこかパンキッシュな衝動性を帯び、オーディエンスの声を借りて懸命に寂しさに抗っているようにさえ聴こえた。「ヒトリセカイ」「蜃気楼」「その向こうへ」……と続く怒涛のラストスパートをこじ開ける1曲として、これ以上ない役割を最新曲が担っていたのも嬉しかった。

 「CHERRY BLOSSOM」「goes on」で終幕するかに思えたライブは、「1sec.」「DO YOU LIKE…?」まで呼び込み、これでもかとフロアを汗だくにして大団円に。事前に用意されていたのか、アドリブでの追加なのか、定かではないところはさすがの一言。ちなみに筆者は前月のKT Zepp Yokohama公演も観ていたのだが、トータルの印象もだいぶ変わっていた。「太陽4号」〜「淋しさに火をくべ」が序盤から大きな見せ場になっていたり、ラストスパートの定番曲「back to the sunset」の披露が早かったり、「壊れて消えるまで」が主役級の存在感を放っていたり……ツアー終盤に差しかかったこともあってか、より新鮮味の多いセットリストになっていたように思う。終演後、3人に尋ねてみると、NAOKO&KOUICHI案の曲順をベースに、TAKUMAが随所でアレンジを加えたことで、定石にとらわれないセットリストになったのだとか。約30年間これだけライブ数を重ねながら、何度観ても毎回違っていて、なおかつメッセージの軸は驚くほどブレない。10-FEETにしかできないワンマンライブの濃さに改めて脱帽した。

 それに、ロックバンドとしてのフィジカルの強さにも驚かされた。近年のインタビューやライブレポートでも言及してきた通り、ギター・ベース・ドラムによるタイトな演奏のキレがますます研ぎ澄まされてきている。「みんな幸せでいてほしい!」という願いを一点に見つめて駆け抜けたパンキッシュなライブに、演奏面がまったく振り落とされていないのは、3人それぞれが一音一音のクオリティを追求してきた研鑽の結実だろう。

 とはいえ、“真顔”だけで終わらないのもまた10-FEETらしさ。「淋しさに火をくべ」から一気に流れを変えた「我主我主我主~Oh!Soccer!~」でミスしたTAKUMAが、「お詫びに聴きたい曲ある?」とリクエストを募って「LICENSE」「FUTURE」「the guide」「my pet theory」という初期曲尽くしのレアな流れができ上がったり(NAOKIボーカル曲が立て続くのも久しぶりな感じだ)、終盤はノンストップで畳み掛けるかと思いきや、いきなりCHAGE and ASKAの「YAH YAH YAH」を歌い出してフロアの爆笑をかっさらったり。どこか照れ隠しのように笑わせてくれる一面もまた、10-FEETが長く広く愛され続けてきている所以だ。

「大切な人にちゃんと想いを伝えるには、恥ずかしさを乗り越えて、ぎゅーーーーーっとしろ。それが一番や!」(TAKUMA)

 最後はマイクも通さず、ありのままの気持ちを叫んで、10-FEETはステージを後にした。こんなにも真っ向からピュアな気持ちを伝えてくれることなんて、もはやドラマの1シーンでも滅多に見かけなくなった。でも、一番大事なことってやっぱりそれに尽きる。大切な人の前だけでもヒーローになれたら、誰かの寂しさを想像して抱きしめてあげることができたら、世界はもう一歩だけ優しくなれる。数年先の安心すら想像しづらい時代だからこそ、10-FEETがくれる温かさを素直に信じて生きていきたい。

(※)https://realsound.jp/2025/10/post-2178618.html

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