坂道グループで広がるセンターの選択肢 一ノ瀬美空、谷口愛季、大野愛実らが映す世代交代と楽曲表現の広がり
世代交代を支えるセンター経験とグループの厚み
一方、日向坂46では、センター経験者の広がりがそのまま世代交代の進行とも重なっている。デビューシングル『キュン』から4作連続で小坂菜緒がセンターを務めたように、初期はグループを象徴する存在が明確だった。そこから現在は、正源司、藤嶌、大野と、4期生、5期生のメンバーが相次いで表題曲の中心に立っている。なかでも大野は、5期生が初めて表題曲に参加したタイミングでセンターを務めており、新世代を早くからグループの中心に据える象徴的な起用となった。
これは、センターを経験すること自体が、その後の成長につながるということでもある。グループの看板を背負う経験を重ねることで、次の中心メンバーとしての存在感も増していく。センターというポジションそのものが、メンバーの新たな一面を引き出し、次のエースを育てる場所にもなっているのだ。
そもそも、センターを務めることで得られる経験はとてつもなく大きいだろう。MVやジャケットで中心に立つだけではなく、歌番組ではカメラに抜かれる機会が増え、ライブでも客席からの視線が集中する。そのシングルだけでなく、グループを代表する存在として見られることになるわけだ。その経験を複数のメンバーが持つことは、そのままグループのバラエティの豊かさにもつながってくる。
長く活動するアイドルグループにおいて、複数のメンバーがセンターを務めることは、グループのイメージと人気をひとりの存在に依存させないことでもある。絶対的なエースがいることはグループのわかりやすい強みやアイコンになる一方で、そのメンバーが卒業すれば、大きなイメージチェンジを迫られることにもなる。だが、複数のメンバーがセンターを経験していれば、世代交代を迎えた際にも、次世代へバトンを渡すための選択肢は広がっていくだろう。
また、こうしたセンター起用ができる背景として、グループそのものの安定感があることにも触れておきたい。特定のひとりに人気や注目を集中させなくとも、複数のメンバーを中心に据えられるだけの層の厚さが今の坂道グループにはあり、だからこそそれぞれがセンターとして成立する。センターを固定しなくてもグループの魅力が揺るがないこと自体が、現在の強さを示しているとも言えるだろう。
今後、誰が新たにセンターへ立つのか。そして、そのメンバーが中心に立つことで、グループにどんな新しい表情が生まれるのか。センターの選択肢が広がったからこそ、その一作ごとの変化も、これからの坂道グループを追いかけるうえで大きな楽しみになりそうだ。