THE BAWDIESがデジタル全盛に放つロックンロール 独立を経て辿り着いた自由、結成22年目の新機軸
2025年にそれまで19年所属していたSEEZ RECORDSから独立し、自身が設立したHOT DOG RECORDSを拠点に心機一転を図ったTHE BAWDIES。2000年代のロックンロールリバイバルをきっかけにロックンロールと出会い、そのルーツであるブルースやリズム&ブルース、ソウルから、発展形であるガレージロックやビートロックを掘り下げながら、その豊かな音楽文化を広く伝えるべく長らく活動してきた彼ら。独立後、初となるアルバム『THIS IS THE PARTY』はバンドにとって再スタートのフレッシュなマインドが伝わってくる瑞々しい作品だ。
22年にわたる活動を通じて、一貫してロックンロールにこだわり続けてきたことで、そのアウトプットは簡潔さと多彩さが共存し、一切のブレも感じさせない。そして、そのスタイルの不変性があるからこそ、フォーマットを超越した演者のとんでもない熱量やパッションが聴き手の心を沸き立たせる。過去のあらゆるアーカイブに即座にアクセスできるようになったことで、過去の音楽スタイルのリサイクルやその消費が加速し続けている今、彼らはいかにして熱とパッションを膨らませ続けているのだろうか。そのマジックの一端を探るべく、結成以前からの友人である4人のメンバー全員に語ってもらった。(小野田雄)
独立1年、自分たちですべてを作る喜びと加速するアイデア
ーー2025年3月25日にSEEZ RECORDS独立、新たなにHOT DOG RECORDS設立から1年が経ちました。この期間の活動を振り返っていかがですか?
ROY:ただただ充実していました。振り返ってみると、今着ているスーツを作った独立のタイミングから、ワクワクドキドキが始まっていたんだなって。今まで周りのスタッフに整理していただいていたものを、自分たちで一からやらなきゃいけないというドタバタはもちろんあったんですけど、イベントや企画など、何をやるにも自分たちでアイデアを出し合って決めて、その過程や失敗を含め、すべてが楽しかったです。
ーー革ジャンを身にまとって小規模の会場でガレージパンクバンド然としたライブを行った『BLACK LEATHER INVASION』や、真夏にテーラードスーツでロックンロールを演奏した『真夏のテーラード』といった企画ライブ。さらに、The KaisersやThe Chatsといった海外のガレージバンドとの対バン、ソウルやブルーズといったバンドのルーツを掘り下げたビルボードライブでのパフォーマンスなど、この1年の活動は多岐にわたっていて、4人がその状況を心の底から楽しんでいるように感じられました。
ROY:深く考えず、自分たちのやりたいことを全部やる。いただいた話も基本的には受けるスタンスで動き続けたら、結果的にそうなっただけなんです。気持ちの赴くままに動いたからこそ、明るく楽しく活動していると受け取ってもらえたのかなって。
MARCY:独立してから対バンの機会が増えましたね。今までやってきたバンドもいますし、初めて会うバンド、それこそこの間一緒になったSurvive Said The Prophetのように、ジャンルという意味では全然違うところにいるバンドと対バンするなかで、お客さんがどう捉えるかは実際に演奏してみないと分からないけど、対バン相手がTHE BAWDIESのことをかっこいいって言って誘ってくれているんですよ。ストレートなロックンロールをやっていて、それがアーティストに刺さっているというのは、すごく嬉しいことだなって。
ーーストレートなロックンロールという意味でTHE BAWDIESのアウトプットは単純明快だと思うんですけど、そもそも原点である50年代のロックンロールはリズム&ブルースやブルース、ゴスペル、カントリーが融合したものですし、実は多面的な音楽ですよね。
TAXMAN:THE BAWDIESはインディーズ時代からモッズのイベントにも呼ばれるし、ロッカーズやガレージパンクのイベントにも呼ばれる。特定のシーンに属しているわけではなかったんです。50年代、60年代の音楽のいろんな部分を持っているバンドだから、「THE BAWDIESはこういうこともできるんだよ」っていうのを見せたほうがいいんじゃないか、と。たとえば、革ジャンを着て、スリーコードのロックンロールをバシバシやったり、ビルボードライブでゲストに鍵盤やベースを呼んで、ROYのソウルシンガースタイルとソウルアレンジの演奏を聴かせたり。そういういろんな側面をもっとみんなに見てもらった方がいいんじゃないかと、個人的には前々から思っていました。
ロックンロールを信じ続ける不変のアイデンティティ
ーーTHE BAWDIESが2000年代のロックンロールリバイバルや、そのルーツであるThe Sonicsに触発されて、結成時からロックンロールにこだわり続けている一方で、この20年で激変した音楽シーンや音楽環境についてはどう見ていますか?
ROY:僕らがロックンロールに夢中になった時、日本ではロックンロールが再評価されていたわけではなかったですし、海外では10年に一度くらいのタームでロックンロールの再評価が起こるのに、日本でそうならないのは、まだまだ根付いていないからなんじゃないかって。だから、結成から22年活動してきて、自分たちの音楽が日本の音楽シーンにフィットするタイミングは一度もきていないというか、「まだきてない」という感覚なんです。シーンがどう移り変わろうが、自分たちの音楽をやり続けているだけ。メジャーデビューのタイミングでプロデューサーに迎えたLOVE PSYCHEDELICOのNAOKIさんと出会ったことで、「ロックンロールはこうあるべき」というインディーズ時代の固定観念が取っ払われたんですよ。ロックンロールを知らない人にその魅力を伝えるための現代的なアイデアを得て、視野は広がったと思うんですけど、感覚的には何も変わっていないというか、ロックンロール以上に魅力的な音楽に出会っていないので、「変わらずにロックンロールが大好きだ」と言い続けていますね。
ーー個人的には、ストリーミングの普及で逆にレコードが再評価されたように、DTMのクオンタイズでバンドサウンドすら整然と鳴らされている現代であるからこそ、グリッドからはみ出るように鳴らされているTHE BAWDIESのサウンドはいい意味で異質というか、結果的に時代のカウンターになっているとは思います。
TAXMAN:時代のカウンターになる音楽を念頭に活動しているわけではないんですけど、潜在的にはそういう意識もあるというか、デジタル全盛の今だからこそ、自分たちの音楽は響くだろうなと思っていますね。僕らもレコーディングの知識がまったくなかった昔は、クリックを聴きながら演奏していたんですけど、やっぱり違うよなと思うようになって、何年か前からレコーディングでクリックを使うのを止めたんですよ。それによって曲の熱量も上がったし、本来THE BAWDIESが持っているよさをレコーディングで収められるようになった。まあ、でも、最近の曲だとドラムが走っちゃってるものもあったりするんですけど(笑)。
ーー一定のテンポを刻む正確性をよしとするのか、走ったドラムから感じられるパッションをよしとするのか。
JIM:演奏の正確性を度外視するわけではないんですけど、僕たちが触発されたのはロックンロールから感じられるパッションだったし、パッションを感じられる音楽に憧れてバンドを始めたので。それに僕たちは、面白い音楽を通じて繋がった4人ではないし、ましてプロフェッショナルであることを志して集まった集団でもない。言ってしまえば、“ただの友達”なので、そういう4人が楽しめる音楽を共通の物差しに、一緒に育ったところがこのバンドの強みだと思うんですよ。上手い人たち、時代に合った音楽を作れる人はたくさんいるけど、僕たちのような在り方のバンドは他にはいないと思うので、自分たちが心の底から楽しんでいる様が作品、演奏から伝わればいいんじゃないかなって。