ArakezuriがO-Crestから学んだもの  白井竣馬×室清登、「目の前の人に伝える」バンドとライブハウスに共通する信念

「常に前向きにチャレンジしていく姿が、すごくいい」(室)

ーー全国のいろいろな場所でライブをやり続けている中、O-Crestならではの魅力として感じていることはありますか?

白井:言語化しづらいんですけど……好きなんですよね。

室:多分、人のフィーリングが合うというのもあるんじゃないかな?

白井:たしかに! 考えることの方向が自分たちに合う場所なのかもしれないですね。

室:おそらく竣馬が目指しているバンド、好きなバンドたちが過去にやってきた箱でもあるんだと思います。だから自然と頭の中や身体の中にある「バンド像」みたいなものと合致しているのかもしれない。

白井:その通りだと思います。

室:バンドとライブハウスとの距離の取り方もそうだろうし。

白井:僕が初めてO-Crestに足を運んだのは、ソウルフードのワンマンライブだったんです。「これがO-Crestかあ!」ってなりました。あと、『ムロフェス』(『MURO FESTIVAL』/室清登が主宰する音楽フェス)に出演してるバンドも、好きで聴いてきたのが多いので。

ーー室さんはたくさんの音楽に日々触れていますが、Arakezuriの魅力はどのようなところにあると感じていますか?

室:竣馬の書くすごく等身大な歌詞ですね。「今」という時代を切り取ったところに自分の等身大を投影して、リスナーがそれに反応するっていう、すごくわかりやすい図式を確立しているのかなと。それはライブで一緒に歌ってもらったりすることにも繋がっていますけど、それとはまた別の部分にも良さがあって。例えば、去年末に出したアルバムの曲だと「時代」とか。

白井:「時代」は「THE Arakezuriの方針」というか、そういうことを歌っていると思います。歌詞カードを見なくてもライブでちゃんと言葉が入ってくるような工夫は、他の曲も含めて常に心掛けていますね。

室:「時代」もTikTokのこととかがフックになっていて、すごく歌詞が入ってきやすいんですよね。

ーーTikTokといえば、Arakezuriはコロナ禍の影響でライブができなくなった時期にSNSを通じた発信を積極的に始めましたよね。

室:そうでしたね。コロナ前は、SNSとライブハウスは結構分断されていたんです。SNSで人気が出てもライブが良くなかったりするバンドが多くて。コロナを経てリンクするようになってきた感じがあります。

白井:僕はコロナ禍でライブができなくなった中、「逆にこれはチャンスだな」というのも思ったんです。そう捉えたからこそ「SNSも頑張ってみよう」と思えたんですよね。あの時期がなかったら今の環境はなかっただろうなと実感しています。

ーーSNSを使った発信を積極的にすることに対して迷いはなかったんですか?

白井:バンドがSNSを積極的に使うことに対してあんまり良いイメージで捉えていない人がまだ多かったからこそ、「ここはあえて頑張ってみよう。みんながまだ躊躇しているからこそ目を引くんじゃないかな?」と思っていました。だから1日中SNSを眺めながら、「どんな動画がいいんだろう?」とか考えたりもして。そういう中で生まれた考え方や信念は、「時代」にも表れています。

ーーライブハウスとしては、平時のような形で営業できないコロナ禍の時期をどのように捉えていましたか?

室:生き延びていくためにやれることをひたすらやる時期でした。それこそ壁のペンキ塗りとかも含めて。カメラマン、スイッチャーとかを発注するお金もなかったので、自分たちで生配信をできるようにしたり。お客さんを入れられなかったので、無観客配信とかやってましたね。そういう中で心掛けていたのは、「腐らないでやる」ということでした。

白井:僕らとしても新しいことを始める面白さもあったし、反応をもらえるようになった嬉しさがありました。その積み重ねの1つの結果が、Crestのワンマンのソールドアウトでしたね。今、勢いよく活動しているバンドは、あの時期にいろいろ試行錯誤をした人たちが多いのかもしれない。腐らずにやり続けてきたバンドが最近、咲き始めているように感じます。

室:Arakezuriも腐らずにやってたし、「5週連続企画ライブ」とか、他の人たちがしていないようなこともいろいろやってたんですよね。「誰もやってないから、俺らがやろう」みたいな、常に前向きにチャレンジしていく姿が、すごくいいんです。チャレンジしていく若手バンドは、かわいいですよ。まあ、今のArakezuriが若手なのかは置いておいて。

白井:若手の顔をしておきます(笑)。

ーーArakezuriは、挑戦を重ねながらどんどん集客を増やしていますよね。

室:とにかくめっちゃ嬉しいですよ。嬉しい反面、寂しさもありますけど。でも、これが難しいところでもあって。Crestっていう場所はおそらくお客さんがついてこないと、ずっと出続けられる箱ではないと思うんです。上がっていってくれないと、ずっと付き合っていくことはできない。だからArakezuriがステップアップしているのは嬉しいです。たまにCrestでライブをやってくれるのも嬉しいし。

白井:去年は1回しかやれなかったんですけど。

室:1回だけだっけ?

白井:はい。9月の1回だけです。

室:そうか。

白井:なかなかタイミングが合わず。

ーー大きな会場でやるようになってもO-Crestは特別な場所であり続けているんだろうなというのは、いろいろなバンドの最新のポスターとかがこのライブハウスの壁にたくさん貼られているのからも感じます。

室:昔みたいに毎月出ることができなくても、20周年、30周年というようなタイミングで力を貸してくれたりするんです。そういうのは、すごく嬉しいです。

白井:Arakezuriにとって、Crestはそういう場所ですね。

関連記事