(sic)boyが、3rdアルバム『HOLLOW』から2年ぶりとなる最新作『DOUKE』を11月26日にリリースする。前作リリース以降も神奈川KT Zepp Yokohamaで行われた自身最大規模のワンマンライブ『HOLLOW』のみならず、アニメ『怪獣8号』の劇中歌「Scream」への参加、初のワンマンツアー『(sic)boy Angel!! TOUR 2024』、初主催となるイベント『blacknails』、『CHAOS TAPE』の5周年イベントの開催などなど、枚挙にいとまがないほどの活動を展開してきた彼は、次にどのような世界を描くのだろうか。本稿では一足先に内容を聴かせていただいた筆者が、『DOUKE』の魅力や聴きどころを解説していく。

　先に結論から述べておこう。先行公開されたトラックリストを見ればわかる通り、全20曲という圧倒的なボリュームを誇る『DOUKE』に詰め込まれているのは、(sic)boyのこれまでの集大成であり、同時にこれまで築き上げた(sic)boyサウンドを大胆に更新した、新たなる一手だ。

　アルバムを再生してまず耳に飛び込んでくるのは、これまでの(sic)boyサウンドの代名詞とも言っていい、プロデューサー・KMとのタッグ曲たちだ。これまでの彼のサウンドのイメージーーロックとヒップホップを独自に掛け合わせたミクスチャーサウンド、キャッチーなトップライン、テクニカルなフロウーーを踏襲しつつ、ビートスイッチで緩急に磨きをかけたタイトルトラック「DOUKE」から、巧みにスイッチするフロウの冴える「Life is nightmare」で勢いに乗り、「HIBANA」で重厚なサウンドを展開。さらに「blacknails feat. MERI」「Hello feat. SALU」でコラボ曲が続く。この20曲に及ぶアルバムの導入部は、KMによるプロデュース曲が並んでいることによって、これまでのリスナーを離さず、なおかつ進化を提示するこれ以上ないオープニングとなっている。

　そして、『DOUKE』は一つ目のハイライトへと向かう。ティナーシェやENHYPEN、King & Princeなどと仕事してきた世界的プロデューサー、Tidoの手がける「DISTORTED 世界」だ。浮遊感のある美しいギターフレーズがきらめく中、(sic)boyの歌声が響く。〈生き続けたい僕がここにいたんだよ〉。ここには、最新作『DOUKE』のテーマの一つが明示されていると言ってもいいだろう。つまり、彼はこの世界で苦しみ、迷い続ける自分はなぜ生きているのか、その答えを手にしているのである。クソったれな世界で孤独に生きる苦しさや虚しさに寄り添いながら、それでも生きていく中で見える希望や、その間にある葛藤を歌い続けてきた(sic)boyが、活動を通して自らの輪郭を掴むことで到達した新境地であり、DOUKE＝道化師として、ステージの上でときに滑稽に踊る姿を観客に観られる存在としての覚悟とも呼べるものだ。

　実際、その覚悟が痛いほどに伝わってくるのが、次にくるChaki Zuluのプロデュース曲が並んだパートだ。〈もう疲れたよ〉とラッパーとしてはあまりにも赤裸々に吐露する「Take Me Home」に始まり、「疑心暗鬼」では1990年代後半から2000年代前半に脚光を浴びたネプチューンズサウンドでもって新たなフロウを創出。それに続くのは、なんとLOVE PSYCHEDELICOが2001年に発表した名曲「Last Smile」のカバー（！）。タイムレスな曲の輝きと自らのスタイルを掛け合わせることで、自身の可能性を引き出すその試みが見事に成功した、まさに(sic)boyの新章を象徴する1曲だ。

　その後も『RAPSTAR 2025』の審査員も務めるヒップホップシーン切ってのラップ巧者、OMSBとの新鮮なコラボ曲「SAY GOODBYE feat. OMSB」、ラジオを聴きながら過ごすオフの姿も描いた「lights on」、レイドバックしたフロウで魅せる「Shaggy White」、気心知れた盟友・vividboooyと共に代表曲「Heaven's Drive」の5年後を歌うような「Chrome Hearts」（ちなみにvividboooyは今年7月に同名の曲をリリースしたばかり。そんなのあり？）と(sic)boyの新たな表情が次々に現れていく。「色のない夜」は、そんな(sic)boyのアンセムになりうる1曲だ。(sic)boy流の「Welcome To The Black Parade」とでも言おうか、ジャズボーカル風のフロウも効果的に用いられ、ダークかつ壮大に広がっていく(sic)boyワールドに、がっつり引き込まれていく。

　もはやここでアルバムが締めくくられても決して違和感などないのだが、さらにその先でもリスナーを楽しませるのが『DOUKE』の大きな魅力の一つだ。(sic)boyと同い年のプロデューサー、uinとの「Tsubasa」「Dream」では、生々しく美しい(sic)boyのボーカルを堪能できる前向きな2曲で、KM、Chaki Zuluとはまた別の(sic)boyが顔を出している。

　KMとの普段の関係性の見えるスキット「Drown Intro」から繋がる「Drown」はファンにとっては堪らないパートとなっており、次の「Hide&Seek」では〈まじ気に食わないことばっか〉と(sic)boy節が炸裂。ラストは昨年のワンマンツアーのタイトル曲「Angel!! 」で、次のツアーでの再会に向けて、疾走して去っていく。

　なんという見事な構成だろう、20曲という圧巻のボリュームは、途中でダレてしまうことも予想できたが、『DOUKE』はそれを回避しつつ、これまでのアップデート、さらには新境地まで詰め込まれているのだ。(sic)boyの集大成かつ新たなる幕開けとなる『DOUKE』が、リスナーにどのように受け止められるのか、聴き終えた今は楽しみでならない。とはいえ、どのように受け止められたとしても、(sic)boyはその歩みを止めないだろう。なぜなら『DOUKE』は、たとえ笑われようと歌い続ける覚悟のこもった作品でもあるからだ。その力強い覚悟に、大きな拍手を送りたい。

■SNS先行配信リリース情報
(sic)boy「疑心暗鬼 (Prod. Chaki Zulu)」
配信リンク：https://sicboy.lnk.to/suspicion

■リリース情報
(sic)boy 『DOUKE』
Release Date：2025年11月26日（水）
配信リンク：https://sicboy.lnk.to/DOUKE

＜収録曲＞
1. DOUKE (Prod. KM)
2. Life is nightmare (Prod. KM)
3. HIBANA (Prod. KM)
4. blacknails feat. MERI (Prod. KM)
5. Hello feat. SALU (Prod. KM)
6. DISTORTED世界 (Prod. Tido)
7. Take Me Home (Prod. Chaki Zulu)
8. 疑心暗鬼 (Prod. Chaki Zulu)
9. Last Smile (Prod. Chaki Zulu)
10. SAY GOODBYE feat. OMSB (Prod. Chaki Zulu)
11. lights on (Prod. Chaki Zulu)
12. Shaggy White (Prod. Chaki Zulu)
13. Chrome Hearts feat. vividboooy (Prod. Chaki Zulu)
14. 色のない夜 (Prod. Chaki Zulu)
15. Tsubasa (Prod. uin)
16. Dream (Prod. uin)
17. Drown Intro (Prod. KM)
18. Drown (Prod. KM)
19. Hide&Seek (Prod. KM)
20. Angel!! (Prod. KM)

■ライブ情報
『(sic)boy TOUR 2025』
2025年12月3日（水）宮城・仙台 MACANA
2025年12月14日（日）香川・高松 MONSTER
2025年12月19日（金）福岡 Be-1
2025年12月21日（日）石川・金沢 AZ
2025年12月25日（木）名古屋 CLUB QUATTRO
2025年12月26日（金）大阪 Yogibo METAVALLEY
2025年12月28日（日）東京 Zepp Shinjuku

★チケット：一般発売中！
チケットのお申し込みはこちら：https://sicboy.lnk.to/DOUKETOUR2025TICKETS

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