majiko×みきとP、刺激と影響を与え合う10年来の関係性 ライブや楽曲制作に対するスタンスを語る

 majikoのデビュー10周年を記念し、関わりの深いアーティストを招いた対談シリーズ第二弾はみきとPが登場。みきとPは、majikoが2019年にリリースしたメジャー1stフルアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』収録の「レイトショー」を提供している。

 本対談では、両者の出会いから「レイトショー」の制作エピソード、そして新作EP『GOLDEN JUNKIE』から先行配信されている「NA TTE NAI」「なんで?」「ピエロ」をテーマに、それぞれのコンポーザーとしてのセンス、楽曲の魅力などをたっぷりと語り合ってもらった。(森朋之)

みきとPとのライブが“第一次自分改革”

majiko×みきとP

ーーmajikoさん、みきとPさんの初対面はいつですか?

majiko:確か2014年の『ETA』(『LIVE PLUS+EXTRA 〜EXIT TUNES ACADEMY 2014 in 調布〜』)のリハですね。

みきとP:覚えてる。下高井戸のスタジオだよね。

majiko:そうそう。他にもいろんなアーティストの方がいらっしゃったんだけど、「みきとPさんにお会いできる!」って。太めのジーンズにオレンジ色のごついブーツを履いてたよね?

みきとP:そうだった(笑)? majikoのことはあまり知らなかったんだけど、当時は“まじ娘”という表記で、その字面がすごいインパクトで。

majiko:そのときも言ってたよね。「平仮名と漢字っていいね」って。

みきとP:ニコニコ動画の有名人っぽい名前だなって思いました(笑)。リハが終わった後の「楽しかった!」みたいな表情もすごく印象的でしたね。「バンドと一緒に曲をやれて幸せ」という感じのオーラが出てて。

majiko:うん、幸せだった。

みきとP:リハのときはどうしても「バンドのノリが」とか「ここのキメが」って細かいことを考えがちなんだけど、majikoはそうじゃなくて、音楽自体を楽しんでて。そういうことだよなって思ったんだよね。

majiko:すごいミュージシャンの皆さんが演奏してくださって、そのなかで歌えて。そういう機会は初めてだったし、感慨深いというか、とにかくうれしかったんですよ。イベントの本番もよく覚えてますね。あんなに大勢の前で歌ったことがなかったから、緊張もしたけど、すごく楽しかった。“とみき”(みきとP)の「世田谷ナイトサファリ」を歌わせてもらったんですよ。

ーーmajikoさんが歌う「世田谷ナイトサファリ」、カッコいいですよね。

みきとP:カッコいいです。

majiko:曲がカッコいいんで。

みきとP:majikoが推してくれたことで、「いい曲だな」と思えたところがあって。ありがとうございます。

majiko:いえいえ、こちらこそ(笑)。ずっと家に引きこもって歌ってたから、「人前で歌うって、こんなに気持ちいいんだ」って初めて思って。あのときのライブが“第一次自分改革”だったんですよね、私にとって。その後もいろんなステージでご一緒したんですよ。

みきとP:いろいろやったよね。『ETA』にも何度か出たし、majikoのライブにもお誘いいただいて。アコースティックライブもやったよね。

ーー2016年に京都と東京で行われた公演ですね。ライブでのmajikoさんの印象は?

みきとP:信頼感というか、安心感がありましたね。majikoが歌えば何とかなるというのかな。だからこそ、こっちも自由になれる感じがあって。

majiko:支えられつつ、支えつつ(笑)。

みきとP:メンタル的に崩れないんですよね、majikoは。ライブ中にミスすると、どうしてもそっちに気分が引っ張られたり、テンパったりすると思うんですけど、そういうことにも左右されないというか。

majiko:そう思ってもらえてたのはすごくうれしいです。ただ、精神的に左右されてた時期もあるんですよ。気分的なものが喉に出ちゃって、すごくナーバスになって。最初の『ETA』のときみたいに「気持ちいいぜ!」という感じが、どうあがいても出なくなって、そのときはズーンってなってました。

みきとP:そうなんだ。

majiko:うん。落ち込んで「もっとこうしなきゃダメだ」って自分を追い込んでたんだけど、それを全部投げ捨ててしまえ! ってなってから、ちょっとずつほぐれてきて。誰かが言ってたんだけど、ライブって“いかに力を抜くか”が大事なんだよね。難しいけど、それが真理なんだなって。

みきとP:ライブって難しいよね。リハの段階である程度詰めても、本番は本番というか。

majiko:本当にそう。私はアドリブも好きだから、余白を残しておきたくて。PAや照明の方には申し訳ないけど、リハでやったことを本番でやりたくない自分がいるんですよ。

みきとP:サプライズだ。

majiko:ぶっつけ本番みたいな感じが好きなんだと思う。

みきとP:わかる。リハと同じことを本番でやってると、なんか照れくさいんだよね。

majiko:そう! お客さんも自分自身も驚かせたいので。

みきとP:majiko、本番に強いよね。

majiko:どうなんですかね? でも、そう言われます。

みきとP:それが標準というか、本番に強くないと(アーティストとして)やれないよね。

majiko:経験も大きいよね。「こういう場合はこうする」という答えを何個か持っているのが理想だし、そのためには経験を積むしかないので。

みきとP:majikoのなかで「あれは失敗した」みたいなこともあるの?

majiko:今のところないかな。あったとしても「それもまた一興」みたいな(笑)。

みきとP:その考え方いいね。俺、この前のライブのアンコールで、バラードを歌ったんだよ。中国語で歌ったから歌詞を紙に書いてて。アウトロでその紙を紙飛行機にして投げたんだけど、ポトって落ちちゃって(笑)。

majiko:(笑)。みんなどんな感じだったの?

みきとP:苦笑かな(笑)。それですごく落ち込んじゃって。

majiko:それをやろうとしただけでも、お客さんはうれしかったんじゃない?

みきとP:ありがとう(笑)。

majiko:「やってみよう」がすべての原動力だからね。めっちゃ準備して、それでも失敗しちゃったら「それはそれ」というか。気持ちはみんなに伝わると思うんだよね。

みきとP:前向きだね。

majiko:そうじゃないとやってられない(笑)。特にライブについては、1回ズーンと落ちちゃったから。今はもう100%前向きな気持ちでやってます。

ーーみきとPは2019年、majikoさんに「レイトショー」を提供しています。

majiko:「レイトショー」の制作のとき、とみきのスタジオで歌ったよね?

みきとP:うん。「こういうメロディをmajikoが歌ったらどうなるだろう?」ということなんだけど、データのやり取りだと時間差も出ちゃうし、他のアイデアをパッと試すこともできない。なのでスタジオに来てもらったんだと思います。当時は作曲の仕事が多くて、ほとんどデータのやり取りばかりだったんですよ。もっと人間味が欲しかったし、一緒の空間でクリエイティブをやりたかったのかな。

majiko:そのほうが楽しいしね。……今思い出したけど、そのちょっと前に、とみきがマイクを貸してくれたんですよ。すごくいいマイクで、「これで歌を録ってみて」って言われたんだけど、自分の部屋でセッティングして録ってみたら、なぜか音量が小さくて。「これ壊れてるよ」って返したんだけど、その後、前と後ろを逆にセッティングしてたことに気づいて。

みきとP:コンデンサーマイクには前・後ろがあるからね。

majiko:で、とみきが「こいつに任せちゃダメだ」って思ったんじゃないかな(笑)。

みきとP:ハハハ(笑)。

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