全国5都市を巡るPSYCHIC FEVERのツアー『PSYCHIC FEVER LIVE TOUR 2025 ”EVOLVE” in JAPAN』が、6月7日より幕を開ける。

　今年2月にはグループ初の北米ツアー『PSYCHIC FEVER FIRST U.S. TOUR 2025』を完走、3月にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催された『SXSW 2025』に出演したPSYCHIC FEVER。彼らのアメリカでの活躍は、現地の音楽関係者から見ても凄まじいものだったという。数々の証言も踏まえつつ、いわば“凱旋ツアー”とも言える本ツアーの前に、ここで一度彼らの海外での歩みを振り返ってみたい。

　そもそもPSYCHIC FEVERの海外展開の始まりは、活動拠点をタイに置き、現地の音楽業界を牽引するラッパー・F.HEROのもとで武者修行を開始した2022年9月まで遡る。およそ1年後の2023年9月にリリースした「FIRE feat. SPRITE」は、現地の音楽番組の週間チャートで2位を記録。年が明けた2024年1月にはデジタルEP『99.9 Psychic Radio』をリリースし、リード曲の「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」がアジア9つの国と地域でSpotify「バイラルトップ50」にチャートインする快挙を達成した。

　「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」のヒットを機に、彼らの勢いは一気に加速していく。2024年3月にベトナム・ホーチミンで開催された『Japan Vietnam Festival in Ho Chi Minh City』出演時には2000人収容の会場に3000人以上の観客が押しかけ、その評判から、5月にはシンガポールで開催された『MUSIC MATTERS LIVE』への出演が決定。さらに、7月には初めてのヨーロッパでのパフォーマンスとなったフランス・パリの『Japan Expo Paris 2024』でも3000人以上がヨーロッパ中から集まり、主催者が過去20年で一番の大熱狂だと評し、そして12月にはスペイン・バルセロナの『MANGA BARCELONA』と、ひとつのイベント出演がまた次への出演と繋がっていった。こうして実現に至ったのが、今年2月の北米ツアーだったわけである。

　ワシントンD.C.、ニューヨーク、シカゴ、ダラス、シアトル、ロサンゼルスの6都市を巡った北米ツアー。なかでも最終日のロサンゼルス公演には、ブルーノ・マーズのバックバンド・The Hooligansのキーボーディストであり、ツアーの音楽監修を務めたジョン・フォシットが特別出演し、JP THE WAVYもスペシャルゲストとして駆けつけるなど、一夜限りの貴重な内容となった。

　このロサンゼルス公演について、現地で長年日本のアーティストを見てきたコーディネーターは、会場に日本人がほとんどいない、現地の観客を大きく熱狂させていることに驚いたという。日本のアーティストの海外公演というと、日本から訪れたファンや現地在住の日本人ファンが客席フロアのほとんどを占めることも珍しくないが、PSYCHIC FEVERは違った。つまり、彼らがしっかりと現地のファンの心を掴んでいることが、このツアーで確かに証明されたのだ。

　また、この一連の海外戦略を担当しツアーにも帯同したグループ戦略本部エグゼクティブストラテジスト・石井一弘氏によれば、ワシントンD.C.やニューヨークは黒人女性が80%を占めていたのに対し、シアトルではアジア系の観客も増えるなど、都市によって客層の違いも感じたという。一口に“アメリカ”といっても都市によって歴史や文化はさまざまで、それらをメンバーは都度学んでライブに臨んでいたとのこと。そうやって多様な文化に合わせられるのは、かつて毎週のように東南アジアの各国を巡ってパフォーマンスをしてきた経験が活きているのではと、石井氏は語っている。筆者自身もこれまでに何度か彼らの海外公演を見届けるなかで、毎回異なる会場の雰囲気を瞬時に読み取り、観客と心をひとつにして最善のパフォーマンスを生み出す凄みを感じていた。そんな彼らのフレキシブルさは、この3年間、海外のあらゆる環境下で活動をするなかで積み重ねてきたものなのだろう。