王道のラブソングに仕上がった「たった一人の君」の歌詞世界。冒頭の〈この広い世界で、君と出会って／少しずつ僕の世界が変わって〉というフレーズから純粋な愛が語られていく。そして〈君を愛するために／生まれてきた僕は／君だけを愛して生きていくよ〉というサビのフレーズで永遠の愛を宣言するのだ。純愛のテーマがストレートに歌われているこの楽曲。この愚直とさえ思えるほどのストレートさが、リスナーの感情をとらえ、幅広い支持を集めている理由のひとつであろう。

　また楽曲のエモーショナルさを支えるのが、ボーカルの質感だ。澄み渡るようなボーカルで歌い上げられることが多かった王道ラブソング。ところが「たった一人の君」のボーカルには、オートチューンがかけられている。情熱的な愛の言葉が並ぶ歌詞に対して、やや無機質なボーカルが乗ることで、その心地よい良い違和感が心の琴線を刺激するのだ。これはヒップホップやR&Bで使われる手法であり、J-POP由来の王道ラブソングとは一線を画すような仕上がりとなっている。

　Dani.自身が発表時に「皆さんに幸あれ」（※2）とコメントしたように、この楽曲は聴き手に幸福感を与える力を持っていることは間違いない。特にクリスマスを控えたこの時期において、恋人や大切な人と過ごす時間を彩る楽曲としてDani.のシンプルでまっすぐなメッセージがさらに多くの人々に届き、愛されることを期待したい。

※1：https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2024-11-27

※2：https://www.youtube.com/watch?v=tQZ_rH8WMjk