PSYCHIC FEVER、アジアツアーで広がった可能性 次なる挑戦はアメリカ進出、7人の心境を聞く
アジア3都市を含むツアー『PSYCHIC FEVER ASIA TOUR 2024 “HEAT”』が終了し、アメリカを巡る『PSYCHIC FEVER FIRST US TOUR 2025』の開催を発表した7人組ダンス&ボーカルグループ・PSYCHIC FEVER。彼らがタイのアーティストTAMPを迎えて「TALK TO ME NICE feat. TAMP」をリリースした。メンバー自身もクリエイティブに携わった本曲はグループにどのような影響を与えたのか。日本からアジア、そしてアメリカツアーと挑戦を続けるPSYCHIC FEVERの心境、そしてその軸にある“LDH”というアイデンティティについて話を聞いた。(編集部)
「TALK TO ME NICE feat. TAMP」は“ゴリゴリのPSYCHIC FEVERが帰ってきた”
――『PSYCHIC FEVER ASIA TOUR 2024 “HEAT”』では、国内5都市6公演、アジア3都市での公演を行いました。このツアー全体を振り返って、最も印象に残っている瞬間や出来事を教えてください。
中西椋雅(以下、中西):今回のツアーから初めてDJ RYOGAとしてDJをさせていただいたんですけど、趣味としてやってきたものが一つ形になった瞬間でもありました。ステージからお客さんを見たときの景色や、自分が作ったサウンドを歌ってもらったり、一緒に手を挙げてもらったり、楽しんでいただいた瞬間を見させていただいたことは、時間をかけて作ってよかったという達成感になりました。それが自信にも繋がったので、今後こういった機会があれば積極的にやっていきたいです。そういう見せ方も自分の武器になったと思っていますし、強みとして磨いていきたいです。
――国内公演とアジア公演それぞれの観客の反応の違いについても聞かせていただけますか?
中西:国内公演とアジア公演では、そこまで大きな違いはなかったという印象ですが、日本のファンの皆さんはどちらかというと、音楽をすごく聴いていただけている印象があります。一方で海外の場合は、ずっと僕らと一緒に歌ったり、踊ったりとかその空間を共有している感じがありました。ただ、どちらの楽しみ方が良いとか悪いとかという話ではなく、いろいろな楽しみ方があると思うので、ファンの皆さんそれぞれで僕らの音楽を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
――このツアーを通じて、グループとしてはどのような成長を感じましたか?
中西:今回はある意味初めての挑戦で、アジアツアー自体もずっとやりたいと思っていたので、まずは2年間その実現に向けて、海外でも積極的に活動していきました。その夢と目標がまた一つ叶ったので、僕たちとしてもすごく達成感があります。一方で、一人ひとりがフォーカスされるツアーでもあったので、改めてメンバーそれぞれの魅力やパフォーマンスの可能性が広がったツアーだったと思います。だからこそ、今回の成功がみんなの自信になって、これからの活動に繋がっていくという印象もあり、僕らの強みがより強化された期間になったと思っています。
――新曲「TALK TO ME NICE feat. TAMP」は、タイのプロデューサー NINOさんが監修しています。この楽曲には重低音やエスニックな要素、甘いメロディ、そして終盤にはハードダンス要素も感じられますが、制作背景やコンセプトについて教えてください。
JIMMY:この曲は『PSYCHIC FEVER LIVE TOUR 2023 ”P.C.F”』が終わってタイなど海外でイベントをする中で、もっとアイコニックで踊れるような、知らない人が聴いてもかっこいいと思えるような曲を一つ作りたいということで、NINOさんと一緒に作らせてもらった曲です。僕らもメンバー一人ひとりからこういう感じの音がいいんじゃないかとか、曲のテンポはこれくらいがいいんじゃないかとか、リファレンスを出しながら曲作りにも関わらせていただきました。
実はこの曲はメインスタジオでコライターの方々と一緒に「BEE-PO」を作っている時に、サブスタジオでNINOさんが「今、新しい曲を作っているよ」と言いながら作っていた曲なんです。その時はNINOさんのビート選びの作業にしても、一つひとつ勉強になりましたし、一緒に作業して曲が完成した後にみんなでスタジオで聴いた時には、イメージどおりの超かっこいい曲ができた実感がありました。だから、自分たちとしてもお気に入りの曲です。今回のアジアツアーの初日でこれを披露したんですけど、お客さんの反応も良くて。“久しぶりにゴリゴリのPSYCHIC FEVERが帰ってきた”じゃないですけど、そういう曲に対して、みなさんが喜んでくれている姿が見られたことは嬉しかったですね。
――「TALK TO ME NICE feat. TAMP」は、英語歌詞中心などグローバル展開を意識した楽曲ですが、具体的にどういったところにこだわって制作された曲になっているのでしょうか?
JIMMY:例えば、トラックで使っているシンセの音色をかなりディストーションがかかったゴリゴリした音にすることで、一度聴いただけで耳に残るキャッチーさがあるというか、スマホの小さい音で聴くというよりは、スピーカーでガンガン鳴らしているところをイメージしながら作りました。あと、サビのリフレインで〈TALK TO ME NICE〉という、英語がわからなくても絶対に聴き取れる言葉を使っています。自分たちとしても、最初に聴いた時の感想として、その部分が良いねとずっと言っていたんです。そういう自分たちのリスナー感覚として、「これはいける!」と思いましたね。この曲では、そういったキャッチーさをどう表現するかにこだわりました。
――“自由を受け入れること”が楽曲のメインテーマになっています。その世界観をどのように表現されたのでしょうか?
JIMMY:今回は、タイのアーティストのTAMPに参加してもらっていますが、彼はNINOさんと同じレーベルの新人アーティストです。実は「To The Top feat. DVI」の頃からソングライターとして制作に関わってくれていることもあって、以前から仲良くさせてもらっています。そういう気心が知れた仲なので、今回も英語の部分を含めて歌詞に関しては本当にお任せしています。それを自分たちで解釈して表現しているという感じなんです。
本当に「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」の勢いをきっかけに、自分たちに興味を持ってもらうための最初の扉が開いたと思っています。同時に自分たちの個性的で確立した部分もグループでの役割も固まってきたので、そういった部分で「俺らはここから世界に飛び出ていくんだよ!」みたいな、少し挑発的でありつつも、宥めるような余裕感も意識しながらレコーディングした曲ですね。
海外を視野に英語で歌う上で意識する発音
――先ほどの歌詞の話もありましたが、改めてTAMPさんとコラボレーションしてどんなところに彼の役割の大きさを感じましたか?
小波津志(以下、小波津):レコーディング前からTAMPくんのパートに関しては、完成する前のバージョンも聴いていたのですが、彼の歌にはPSYCHIC FEVERというグループにはない要素があると思いました。例えば、僕らが少しダークな感じだとしたら、彼は天使が降りてきたようなニュアンスがあるというか。そういう要素はMVにも反映されているのですが、TAMPくんがそこを担ってくれたことで、この曲のイメージがより固まったと思っています。曲の展開としては、それがオチメロの部分に入り、そこからまたアップリフティングになっていくんですけど、そういう緩急のバランスがうまく表現できたと思っています。
剣:MVもそうですし、本当にエネルギーがある曲に仕上がっているので、その感じをボーカルとダンスで表現して、一つの作品を作りたいという気持ちがあります。だから、ダンスの面ではコレオグラファー選びにもこだわりました。今回お願いした方は初めてご一緒させてもらったのですが、自分たちが常にチェックしているくらいパワフルなダンスを踊るダンサーです。リハーサルから超エネルギーがあるパフォーマンスができましたし、歌をレコーディングする時からステージを意識していただいたので、ライブで盛り上がる部分をしっかり作り込むことができました。特にダンスでは、クランプというジャンルの表現をヒップホップの視点で解釈してくれたり、音楽を聴いて感じる気持ち良いグルーヴの中にも意思を通して表現するという構成作りがおもしろかったですね。MVではいろいろな表現をしているので、ライブパフォーマンスではそこに注目してほしいですね。
――日本語だけでなく英語詞を中心としたリリック制作にも取り組んでおられますが、このアプローチに対してどのような課題や手応えがありますか?
渡邉廉(以下、渡邉):一番は発音ですね。通じないと理解してもらえないので、まずはそこをしっかりすることを意識しています。次に声質や発声、各々の声のポジションを意識しています。特に「TALK TO ME NICE feat. TAMP」はほぼ英語詞だけなので、発音をすごく気にしながら、そこに自分のキャラを入れるという感じだったので苦戦はしたんですけど、何とかうまく乗り越えました。
小波津:ただ、僕の場合は英語だと少しキャラがクールになってしまうというか。今後は日本語と同じ感覚で表現できるようにするのが課題の一つです。僕は日本語を第一言語としているからこそ、日本語の場合は発音をちょっと変えても伝わることが理解できます。でも、英語の場合だと変えたくても、変えたら意味は伝わるのかなと思うことがあります。それを考えながら歌うとトーンが下がったりすることもあって。英語で歌う良さはありますが、そういった二面性はあると思います。ただ、英語でも日本語と同じように表現できるようになれば、より素直な感情を曲に乗せることができると思っています。
「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」で得られた達成感
――「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」は、TikTokでの総再生回数が2億5,000万回を突破し、Spotifyのバイラルチャートでもアジア9カ国でチャートインするなど大きな成功を収めました。この成功は皆さんにどのような影響を与えましたか?
WEESA:この曲のおかげで海外に挑戦するチャンスをもらったと思っています。この1年間、パリに行かせていただいたり、初めてアジアツアーに行かせていただいたりしましたが、この曲がなければそういったことは実現できていなかったはずです。例えば、タイでもいろいろな人がこの曲を歌ってくれていますし、まだ行けていない国の人でも歌ってくれている様子をTikTokなどのSNSで見かけます。だから、すごく達成感がありますし、海外へ挑戦するための名刺代わりの曲になったと思っています。
――海外でもヒットした理由をどのように分析されていますか?
WEESA:僕たちとしてはこの曲のMVが大きかったと思っています。MVではメンバー一人ひとりのパートが長く、それぞれの表情やダンスにフォーカスするなど、僕らのパフォーマンスが際立つ内容になっています。またメンバーの中には海外にルーツがあるメンバーがいるので、その多様なメンバー構成がMVを観ている人にわかりやすく伝わったと思っています。あとは、2000年代にフォーカスしたメロディやサビのキャッチーさなど、いろいろな要素が積み重なったことで、結果的に多くの人に刺さるものになりました。そういう意味では僕らとしてもMVの見せ方の面で一つのフォーマットができたと考えています。