リアルサウンド連載「From Editors」第70回:『ウルトラマンアーク』が教えてくれる“想像力”の大切さ 王道と斬新の見事な融合!
「想像力を解き放て!」は現代社会を生きるためのキーワード
ここまで映像面をメインに書いてきたのですが、やっぱり『ウルトラマンアーク』最大の魅力はドラマ面ではないかと思います。キーワードは“想像力”。放送された7話分を観る限り、一見すると解決困難な事象に思えたり、選択肢が1つしかないように見える問題に対して、別角度から光を当てることで解決に導いていくストーリーが多い印象です。そこで大いに役立つのが想像力。第5話「峠の海」は思い込みにとらわれずに疑ってかかることで、小さな発見を見逃さない大切さを、第2話「伝説は森の中に」や第6話「あけぼの荘へようこそ」は相手の立場に立って信じ抜くことで、忘れていたことに目を向ける大切さを思い出させてくれるお話でした。
そして、最も象徴的だったのが第7話「満月の応え」。高度情報化社会となった現代において、データはあらゆるシミュレーションで必要不可欠なもの。SKIP(怪獣防災科学調査所)や地球防衛隊の作戦行動もあらゆる怪獣のデータをもとに決定されますが、そこで、表面的な数字にとらわれすぎることによって物事の本質(=怪獣の行動理由)を見失っていないか、という問題意識を我々に訴えかけます。調査を重ねた理詰めの作戦が、あるきっかけによりストーリーの後半で思わぬ方向へと覆っていくのは『アーク』の見どころと言えそうで、第7話では特に秀逸な展開でそれが描かれていました。『ウルトラマンダイナ』(1997年)第21話「発熱怪獣3000度」と『ウルトラマンコスモス』(2001年)第27話「地球生まれの宇宙怪獣」の合わせ技のようなストーリーも魅力的で、歴代シリーズのファンであればあるほど「おお!」と叫んだのではないでしょうか。
予告編を観ると、次週の第8話「インターネット・カネゴン」でも2024年に照準を合わせたウルトラマンを楽しめそうな予感。王道と斬新を見事なバランスで掛け合わせた『ウルトラマンアーク』。現代のウルトラマン、かくあるべし! めちゃくちゃ期待しています。
※1、2:https://animageplus.jp/articles/detail/59489/1/1/1
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