世界各国のフェスをヘッドライナーとして回るフェスティバルツアーを開催中のマネスキンが、ついに今週末8月17日・18日に東京・大阪で開催される『SUMMER SONIC 2024』のヘッドライナーとして日本にやって来る。

　彼らの『サマソニ』初出演は、初来日となった2年前の2022年。あの時のことは今でもはっきりと記憶に残っている。世界から「ロックの救世主」と期待されていたバンドだからこそ、観る前は自分の中のハードルが高まり切っていたが、それを軽々と越えたロックアクトを展開。とにかく圧倒された。その前日には豊洲PITでワンマンライブが開催されていたが、それを加味しても、おそらくあの時MARINE STAGEにいた人のほとんどが初めてマネスキンのライブを観たはず。にもかかわらず、4人はその場にいるオーディエンスを問答無用で巻き込み、瞬く間にスタジアムを制圧してみせた。ライブが終わった後、MARINE STAGE全体を満たしていた熱気と高揚感は本当に凄まじいものだった。筆者自身、それまで毎年のように『FUJI ROCK FESTIVAL』や『サマソニ』に参加していろいろなステージを観てきたけれど、世代を超えて集まった多くのオーディエンスが、あれほどまでに激しく熱狂していたロックアクトは稀だったと思う。しかも、その熱狂の渦中にいるのは、これまで何度も来日しているベテランのロックバンドではなく、初来日の4人。もはや、“伝説”として語り継がれるステージになると確信した。

　あれから2年を経て、今年の夏はヘッドライナーとしての出演だ。彼らの来日は、今回が3回目。2回目は、2023年12月に計4日間にわたって開催された『RUSH! WORLD TOUR』の日本公演。筆者は12月5日の東京ガーデンシアター公演を観た。ワンマンライブということもあり、2022年の『サマソニ』を遥かに凌ぐ熱狂と一体感が会場を満たしていたのをよく覚えている。あの夜、筆者はいつかフェスのヘッドライナーでマネスキンを観たいと思った。だからこそ、今回のヘッドライナー決定のアナウンスが出た時は胸が高鳴った。近年の『サマソニ』のヘッドライナーとしては圧倒的に若く、その意味で大抜擢であるとも言えるが、異論を唱える人は少ないだろう。楽曲の幅をさらに広げたアルバム『RUSH!』（2023年1月）以降もさらなる快進撃が続く中、マネスキンと『サマソニ』の物語が“ヘッドライナー公演”という美しい形で結実したことに歓喜した人は多いはずだ。

　今やワールドワイドな存在として世界各国に熱狂を巻き起こしているマネスキンだが、日本のファンへの思い入れは一際大きい。その証左であるアイテムが、7月31日、CDのみという形でリリースされたライブアルバム『LIVE IN JAPAN - RUSH! WORLD TOUR -』だ。同作は、この2年間、数々の来日公演を通して絆を深め合ってきた日本のファンのために、バンドが特別に用意してくれた日本限定の作品である。収められているのは、先述した2度目の来日ツアー時の有明アリーナ公演の模様。ライブ全編を収めた23曲を通して改めて浮き彫りになるのは、生粋のライブバンドとしてのマネスキンの真価だ。確かな技術に裏打ちされた、並々ならぬ気迫と包容力に満ちた歌＆演奏に痺れる。また、スタジオアルバムと比較して聴くと、随所にライブ特有のアレンジが織り込まれていることに気づかされる。

　そして、ライブアルバムならではの魅力としては、観客の拍手や歓声、歌声がしっかりと収められていることだ。筆者が東京ガーデンシアター公演を観た時、歌はもちろん、ギターリフやベースリフも口ずさむ観客が多いことに驚いたのだが、そうした観客の熱量が手に取るように伝わってくるし、特に「HONEY (ARE U COMING?)」のコール＆レスポンスは圧巻。また、数十人の観客をステージに上げるのが恒例となっている「KOOL KIDS」も凄まじく、アウトロにおける混沌とした轟音は、あのツアーの会場を満たしていた熱気や景色を鮮明に思い起こさせてくれる。まさに、マネスキンと日本のファンが共に作り上げた興奮と高揚の一夜。その全てを余すことなく収めた今作は、後年、初来日時に次ぐ新しい“伝説”の記録として重宝されることになると思う。何より、今年の『サマソニ』の予習にも最適な一作だ。