7月13日に放送された『音楽の日2024』（TBS系）に、爆風スランプが出演した。14回目の『音楽の日』は、「hope!音楽のチカラ」をテーマに、14時から8時間の生放送。爆風スランプは、番組の序盤の15時過ぎに出演した。様々な企画が目白押しのなかで、爆風スランプは“希望のうた”中継として、日本武道館をバックに演奏。これ以上ないロケーションも相まって、SNSでも大きな反響を呼んだ。

　爆風スランプは、1984年にデビュー。1999年より活動を休止していたが、デビュー40周年を迎えるにあたり再集結を果たした。そして、今年10月よりライブツアー『爆風スランプ〜IKIGAI〜デビュー40周年日中友好LIVE”あなたのIKIGAIナンデスカ？”』の開催と、26年ぶりとなる新曲をリリースすることを、3月に発表している。

　今回の『音楽の日』で、爆風スランプが日本武道館をバックに演奏するというニュースと共に発表された歌唱曲は、もちろん「大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い」。1989年10月21日にリリースされた、爆風スランプの15枚目のシングルである。よく知られている話だが、表題曲の題名の“大きな玉ねぎ”とは、日本武道館の屋根の上の擬宝珠のこと。歌詞で描かれているのは、日本武道館で行われるライブで会う約束をしたペンフレンドが来なかったという、失恋のストーリーだ（ちなみに“ペンフレンド”とは、文通相手、つまり手紙をやり取りする友だちのこと。ときには、この楽曲のように、なかなか会えない相手に恋愛感情を抱いたらしい……昭和の頃）。“玉ねぎ”という爆風スランプらしいコミカルな表現が用いられているが、楽曲そのものは壮大なバラード。そのギャップも相まって、“日本武道館と言えば大きな玉ねぎ”と音楽ファンを越えて世間に印象付けるほど大ヒットした。リリースから30年近くたった今も聴かれ続け、若い世代にも知られている。2015年からは、九段下駅の東京メトロ東西線ホームの発車メロディとしても使用されている、真の大衆歌＝ポップソングだ。

　『音楽の日2024』がはじまって1時間ほど。江藤愛アナウンサーが「ライブの聖地、日本武道館からお届けします」と紹介した。1966年のThe Beatles来日公演を皮切りに、ライブの聖地となった日本武道館。国内のアーティストには、今も変わらず大きな到達点として位置付けられ、国外のアーティストには、日本でライブを開催したい会場として人気の日本武道館。総合司会の安住紳一郎も「武道館と言えば様々なアーティストが思い浮かびますが」と言っていたが、そんななかでも今回は爆風スランプの登場だ。

　大きな玉ねぎが輝く日本武道館の屋根がよく見えるビルの屋上に爆風スランプのメンバーが立ち、「大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い」がスタート。サンプラザ中野くんは、まっすぐに歌う立ち姿も、伸びやかな歌声も、相変わらず聴き手を惹きつける。ファンキー末吉（Dr）は、表情からも感情が伝わってくるような、エモーショナルなドラミングを披露する。パッパラー河合（Gt）の切々としたギターソロも、どっしりと屋台骨を支えるバーベQ和佐田（Ba）のベースも不動の魅力で、爆風スランプという“バンド”の強さを感じずにはいられない。名曲の輝きも変わらなければ、4人の歌や演奏も変わらないことに感動する。サビでサンプラザ中野くんは、いっそう力を注ぐように眉間に力を込めながら〈玉ねぎ〉と歌った。〈玉ねぎ〉という言葉で、こんなにも泣かせることができる歌は、後にも先にも、これしかないだろう。

　演奏が終わると、スタジオからは熱い拍手が沸き起こった。「いいですね、武道館を背に」と、総合司会の中居正広もニッコリ。中居は世代的にもドンピシャだったはずだ。出演後は、SNSにも「胸アツ」「エモい」「やっぱりいい曲」という絶賛の声が続々とポストされた。さらに“「大きな玉ねぎの下で」と、あの頃の自分”と題したくなるような、楽曲を聴くことで引き出された思い出もタイムラインを席捲。改めて名曲というものは、一人ひとりのなかで、様々な形で根付いているんだなと思わされた。特に「大きな玉ねぎの下で」は、時代と場所が明確に浮かび上がってくる歌詞なので、殊更パーソナルな記憶と結び付くのだろう。ちなみに筆者は「九段下」という地名は「大きな玉ねぎの下で」を聴いて知ったし、初めて武道館に行ったときも「これが『玉ねぎか！』と思ったことを覚えている。

　「大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い」という不朽の名曲、爆風スランプというバンドのパワーを、改めて知らしめることとなった『音楽の日2024』。これをきっかけに爆風スランプに触れた人も、久しぶりの再会だった人も、じわじわと活発化するバンドの動向を見逃さないで欲しい。

■ライブ情報
『爆風スランプ〜IKIGAI〜デビュー40周年日中友好LIVE
”あなたのIKIGAIナンデスカ？”』
【前夜祭！（愛知公演）】
2024年10月31日（木）愛知県 名古屋E.L.L.
2024年11月1日（金）愛知県 名古屋E.L.L.
【兵庫公演】
2024年11月4日（月・休）兵庫県 兵庫県立芸術文化センター
【東京公演】
2024年11月17日（日）東京都 LINE CUBE SHIBUYA

■関連リンク
＜アーティストホームページ＞
https://www.sonymusic.co.jp/artist/BakufuSlump/
＜SNS＞
サンプラザ中野くん X：https://twitter.com/spnk
パッパラー河合 X：https://twitter.com/papalakawai
バーベQ和佐田 X：https://twitter.com/bbqwasada
ファンキー末吉 X：https://twitter.com/satoru93604
爆風スランプINFO　X：https://twitter.com/spnkstyle