SixTONESの田中樹は、非常に稀有なアイドルだ。多くのアイドルが群雄割拠する昨今、それぞれが“キャラ立ち”することを求められているが、なかでも田中の立ち位置は誰にも真似できない唯一無二感がある。力強いラップで魅了する雄々しさもありながら、大多数の人が見過ごしてしまいそうな些細な部分にも気を配る繊細さ、そして愛する人たちの期待に応えようとするストイックさ……そんな“田中樹らしさ”が、7月6日はよく表れていたように思う。

　この日、田中は『THE MUSIC DAY 2024』（日本テレビ系）にSixTONESとしてだけでなく、個人としても“世界的ラップソングトリビュートコラボメドレー”に参加。そして同日の深夜にはラジオ『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』（ニッポン放送）にて、コラボメドレーのステージを振り返った。

　「エミネムさせていただきました！」と、ちょっぴり照れた声で切り出した田中。なかでも、三代目 J SOUL BROTHERSのELLY、BE:FIRSTのRYOKIと共に歌ったエミネムの「Lose Yourself」は「僕の音楽のルーツでもある」と言い、その思い入れの強さゆえにプレッシャーを感じていたと明かす。

　驚いたのが田中は当日に別のフェスに出演していた関係で、リハーサルには参加できていなかったということ。さらに、一昨日のリハーサルでは「一言もラップできなかったのね」「〈Snap back to reality〉のあとは一つも言えなかったの」と言い、「できないかもしれない」「歌詞をミスるかもしれない」と不安でいっぱいだったそう。

　しかし、その懸念もエミネムへのリスペクトが強いからこそだと田中自身も気付いたのだろう。最後は「HIPHOPの愛だけ、バイブスだけ伝えてくるわ」と楽屋にいたSixTONESのメンバーに伝え、ステージに向かったという。本番では一瞬だけ歌詞が危なくなりかけたそうだが「“もう、勢いで行け！”って、熱量で行ったら間違えなかったの」と歌いきったときの心境を赤裸々に語った。

　そんな田中に、共にラジオ出演した髙地優吾からは「今だから言うけど、お前マジ楽屋でうるさかったからね。どんだけ歌うんだよって（笑）」「俺らからしたら“もう、そんなやんなくてもイケるだろ！”って思ってたから」とツッコミが入る。

　しかし、「今だから言うけど」と、直前まで歌い続けていた田中を静かに見守っていたということも明かしている。そして「知らないと思うけど（SixTONESメンバー）全員でモニター見に行ってたからね」と緊張していた田中を陰ながら応援していたことも。

　そのメンバーの優しさは田中にも十分伝わっていたようだ。田中が実際のパフォーマンスを確認するためにマネージャーが楽屋のモニターを録画していたのだが、「お前らが“ウェイ！”とか言ってんの動画に入ってるわけ」と笑いながらも「俺、涙出そうになった」と感謝と喜びをしっかりと言葉にしていたのが印象的だった。