ももいろクローバーZ、16年目の4人が向き合う“アイドル”とは? アルバム『イドラ』と現在地を語る
ももいろクローバーZが、最新アルバム『イドラ』をリリースした。2年ぶり7枚目となる今作タイトル『イドラ』は、ラテン語で「偶像」という意味。「アイドル」の語源のひとつとされている言葉だ。すでに配信リリースされている8曲に加え、リード曲「Heroes」や約8年ぶりの楽曲提供となる清竜人が手がけた「Friends Friends Friends」、ラップチューン「桃照桃神」など、インスト音源を含む新曲7曲の全15曲が収録されている。昨年の結成15周年ツアーを振り返りながら、アルバム『イドラ』に込めた思い、今あらためて振り返る“アイドル”としての自分たち自身など、語ってもらった。(編集部)
「私たちがステージに立つ意味と重なる」――“ヒーロー”冠したリード曲
――ももいろクローバーZの7thアルバム『イドラ』が完成しました。
佐々木彩夏(以下、佐々木):『イドラ』はラテン語で“偶像”という意味なんです。英語のidol(=アイドル)の語源になったとされる言葉でもあって、今回のアルバムでは私たちなりのアイドルというものをヒーローに喩えていて。アイドルはかわいかったりきらびやかなイメージもあるけど、強かったりみんなを励ましたり、そういう力強い部分もアイドルらしさであって、そうした勇者の冒険みたいなものをアルバムで表現しました。アルバムの新曲6曲、インストを含めると7曲が軸となって、ストーリー性を感じながら一枚を通して聴いてもらえるなと思ってます。
――リード曲は、まさにその姿を表した「Heroes」ですね。
高城れに(以下、高城):今回のアルバムのテーマが“英雄(ヒーロー)の冒険”なので、モノノフさんや何か新しいことを始めようとしてる人、道に迷っている人とか、そうしたみなさんの背中を押せるような曲になってます。「Heroes」はメロディも歌詞も前向きで爽やかですね。特に、私は2番のサビ〈キミが笑うならば/それが全て/ここにいる理由だと思えた〉という歌詞がとっても好きなんです。今まで15年以上やってきて、どんなことがあってもモノノフさんが笑ってくれるならそれがすべてだなと本当に思うので、今の私たちにぴったりな曲だなと思いました。
玉井詩織(以下、玉井):私もそこの歌詞が好きです。いいですよねえ。〈キミが笑うならば/それが全て〉って、とってもストレートな言葉だし、私たちがステージに立つ意味と重なるなって。見てくれている人が笑顔でいてくれたら、それ以上の理由はないって素直に思いますね。
佐々木:この曲は、私が珍しくAメロの頭を担当させてもらっていて、それもうれしいです(笑)。〈ほら 手を握る/そこには/嘘なんてひとつもないよ〉って歌詞は、みなさんそれぞれが通ってきた道に対してのアンサーでもあるし、そういう言葉を言ってあげられる優しさを持ったヒーローでありたいという自分の気持ちだったり、いろいろな思いが感じられて素敵なフレーズだなと思いますね。
百田夏菜子(以下、百田):私は〈神頼みは最終手段〉というフレーズが好きです。メロディも含めて、このフレーズはインパクトが強いと思うんです。今回のアルバムは、自分たちが神さまを連想させるようなビジュアルのキャラクターになっていたり、とても壮大なスケールで描かれている作品でもあるなか、頑張りながらも「テヘ!」って笑って最終手段で神頼みしちゃってる感じがして、なんか人間味が感じられて好きなんですよね。
――身近なヒーロー感も、ももクロっぽいですよね。日本郵政とのコラボレーションで生まれた「MEKIMEKI」など、新曲についてはいかがですか?
佐々木:私たちが日本郵政グループスポーツ応援アンバサダーを務めさせていただいていて。その一貫で「カラダうごかせ!ニッポン!」プロジェクトで、体操のためのバージョンが先に公開されていて、そこにアレンジを加えて歌詞を乗せたものが「MEKIMEKI」なんです。曲調は体操のための曲なので、テンポが上がったり急にゆっくりになったり、面白い展開だと思います。体操自体は覚えやすくてとても簡単なはずなのに、MV撮影の翌日は筋肉痛になりました(笑)。ぜひみなさんにも覚えていただいて、ライブでも全員でトライできたらいいなと思っています。
――「桃照桃神」では、ラップも取り入れていますね。
百田:サビがすごくキャッチーで、かっこいいラップ曲ですよね。“ももてらすももみかみ”という造語が、アルバムのコンセプトとも馴染んでいるなと思います。メンバーみんなのラップに勢いがあってかっこいいし、「モノノフ」という言葉がダイレクトに歌詞にも入っているし、ライブでより盛り上がれる曲。「今日は勢いつけていきたいな」という時なんかには、ぜひ聴いてほしいです。
高城:私は最近ラップの曲をよく聴いているので、個人的にも「桃照桃神」は好きな曲です。それに、私たちが歌うかっこいいラップ曲というのも新鮮だなと思っていて。アルバム自体が壮大な世界観であるぶん、この曲がいいスパイスになってるなって。かといって、構えず気楽に聴ける曲調でもあるので、すごくお気に入りです。
――「追憶のファンファーレ」はいかがですか?
玉井:「追憶のファンファーレ」はアルバムのストーリーのなかで挫折を表してる曲で、スローテンポな曲調。私が歌い始めを担当しているんですが、〈なんだか疲れちゃった/ずっと戦ってきたから〉という、少しネガティブな歌詞から始まるんです。でも、過去の自分からエールをもらったり、今の苦い経験がのちの自分にとってはエールになるかもしれないし、背中を押されて「また一歩踏み出してみよう」「また前に進んでみよう」と思えるような楽曲になっています。
個人的にサビの歌詞が、逃げてしまったり、恥をかいたこと、失敗や嫌なことも全部が未来の自分につながっていくから前に進んでいこうというメッセージが込められていて、大好きなんです。誰しもが人生で苦しい思いをしたことがあると思うし、それをただ「頑張ろう」と奮い立たせるのではなく、「わかるよ、疲れちゃったよね」って寄り添って励ましてくれてる感じがするんですよね。スローではあるけれど暗すぎないテンポ感とメロディで、気持ちを前に向けさせてくれる優しさがいいなと思います。
佐々木:「Friends Friends Friends」は、友達はもちろんですけど、それぞれが思う大切な人に置き換えて聴いてほしいなって思います。大事な友達、家族や恋人、パートナー――私たちならメンバーやモノノフさんだったりが当てはまると思います。人と人との愛情が詰まっている曲ですね。この曲は、6年か7年ぶりくらいに清竜人さんに書いていただいたんです。歌詞がかわいくて、私たちの曲でこんなに〈大好き〉とか〈愛してる〉という言葉が入った作品って、実はあんまりないんですよ。メロディもサウンドもキラキラしていてアップテンポですし、おもちゃ箱をひっくり返したような曲。清竜人さんワールドが炸裂するなかで、かわいい歌詞を恋愛に限らない、さまざまな捉え方をしていただけるように私たちなりに歌ってみました。
歌詞は、〈出会いは夢で 別れだけが現実だけど/その狭間で 私たちは一生友達でいよう〉というところがすごくきれいな言葉だなって。先日、番組の収録でガチャピンとムックに「ずっと友達でいようね」って言われて、そこでもふと思い出したフレーズで、思わずキュンとして泣きそうでした(笑)。大人になるとなかなか言わない言葉だし、そんなことを久しぶりに言われたら「ずっとお友達でいる!」って。相手に素直な思いを伝えるのって本当に素敵だなと思ったんです。
――そして、アルバムラストを締めくくる「idola」は8分越えの超大作ですね。
高城:「idola」は、アルバムの最後の最後で不思議な世界にグッと引き込まれるようなすごい曲ですよね。アルバムはポップな曲が多めだけど、それが「夢だったの?」と思わせるような感じもあるし、この先も続いていく覚悟のようなものも感じられる曲だなと思います。
百田:過去イチで難しい曲でしたね。このアルバムのタイトル曲なだけあって、想像しきれないほど壮大な世界観で、使われてる言葉もすごく難しいんです。だけど、この曲じゃないと締めくくれないと思うくらい、アルバムにおける存在感も感じました。この曲でアルバムを締めるというのも新たな挑戦だなと思いましたね。好きなパートは最後の〈大きく名前を呼んで〉というところです。アイドル活動をしてきたなかで、たくさんの方に名前を呼んでいただくんですけど、それって本当に幸せなことだなって感じるんです。日常では名前を呼ばれる場面がそう多くはないから非現実的でもあるし、あんなに名前を呼んでもらえるのはアイドルの特権だなって思ったりもします。これからもたくさん名前を呼んでもらえたらうれしいなとあらためて感じました。「idola」というタイトル通り、アイドルらしさが最後の最後にフレーズで込められていると思います。