山下智久がニューアルバム『Sweet Vision』をリリースした。

　約5年ぶりとなる本作には、山下の主演映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』主題歌「I See You」、アジア各国で配信ストアチャート1位を記録した「Beautiful World」、Huluオリジナル『THE HEAD Season2』エンディングテーマ「Dancing in a Dream」、そして新曲となるリードトラック「Sweet Vision」などを収録。俳優としての活動とリンクさせながら、「自分が欲していた音」というコメント通り、アーティスト・山下智久の“現在”がダイレクトに感じられるアルバムとなった。

　この5年間における意識の変化、アルバム『Sweet Vision』の制作、将来のビジョンなどについて、山下自身に語ってもらった。（森朋之）

孤独な時間のなかで背中を押してくれた音楽

――5年ぶりのニューアルバム『Sweet Vision』がリリースされました。この5年のあいだにはコロナ禍があり、音楽活動が制限された時期もありましたが、音楽に対するスタンスに変化はありましたか？

山下智久（以下、山下）：たしかにコロナの時期は（活動が）難しかったですね。ただ、そういう時間を過ごせたことで、音楽で励まされる瞬間を自分自身も体感できて。孤独な時間を過ごしている時に背中を押してくれる音楽という存在が、自分のなかでさらに大きくなった気がしますね。

――映画、音楽など、自分自身が携わるエンタメを通して、人々をエンパワーメントしたいという気持ちも？

山下：エンタメの力で何かを変えたいということとも少し違っていて。もちろん、作品が持っている力、音楽が持っている力はあると思いますが、僕ができるのは、その時に自分が感じていることを表現するだけなので。今目の前にあるものに全力で取り組む、ポジティブな気持ちで作っていくことしかできないのかなという気がします。

――そのスタンスは、今回のアルバムにも繋がっている？

山下：そうですね。ポジティブな方向が自分にも合っているし、ちょっと暗い世の中だったというのもあって、“光”を意識していました。

――アルバムタイトルの『Sweet Vision』には、どんな思いが込められているんでしょうか？

山下：自分の人生を振り返った時に、「頭に浮かぶビジョンが現実を作り出していくんだな」と思って。僕自身、5年後、10年後の自分を常に思い浮かべながら行動を起こしているし、応援してくださっている方、このアルバムを聴いてくださった方にも「その気持ちを忘れないように」という思いも込めていますね。

――リード曲「Sweet Vison」には、〈人は綺麗なままじゃ　いられないのさ〉というフレーズもあって。すごくリアルですよね。

山下：「綺麗なままだと自分が綺麗であることにも気づけない」という意味もあるんですよ。そういう（現実を伝える）コントラストは、強いほうがいいのかな、と。自分が何を感じているのかも大事ですけど、やっぱり最終的には“人と人”だと思うんです。愛情だったり、友情だったり、人の繋がりがいちばん強い力になるのかなって。

――「Sweet Vision」の作曲とサウンドプロデュースはUTAさん。その他にも国内外のクリエイターが参加していますが、制作はどんなスタイルで行われていますか？

山下：曲にもよるんですけどね。（「Sweet Vision」は）UTAさんのスタジオに行って（一緒に制作する）ということもありましたし、作業しながら「この部分、こんなふうにできませんか？」と相談したり。今の時代、流行りって、あってないようなものだなと僕は思っていて。海外で昔のシティポップが取り上げられたり、国や世代によって反応する曲も全然違ったり。トレンドの移り変わりもすごいスピードだし、それを追いかけてもしょうがないというか、「正解がない」という感覚もあるんですよ。なのでシンプルに、今の自分が「心地好いな」と感じるものを意識して作っていますね。“自分が欲しいもの”がキーワードになっているというか。

――山下さん自身が心地好いと感じる“欲している”音楽のジャンルは、どんなものが多いですか？

山下：それも時と場合によりますけど（笑）、今は夏だから夏らしい曲だったり。最近気になっているのは、アフリカ出身のアーティストですね。友達に勧められて「いいな」と思って。そこから派生した曲を聴きながら探索してます。音楽の幅はもっと広げていきたいですね、横にも縦にも。いろんなジャンルを知りたいし、いろんな時代の曲を知りたいので。

――なるほど。アルバムの収録曲も多彩ですよね。トライバルなトラックの「A　Million Suns」だったり、「Sunrise」「Vision」などギターを取り入れた楽曲もあって。

山下：ギター、好きなんですよ。あとは「I See You」「Dancing in a Dream」のように（俳優として）海外で仕事をしたからこそ生まれた曲もあって。たとえば、「I See You」は、映画（『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』）のストーリーに寄せているというか。僕なりに作品を解釈して、（歌詞に）落とし込んでいる感じなんですよね。