「あてもなく」で目指した歌

――なるほど。では、ここから今回のシングルの話に移りますが、アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』（フジテレビ“ノイタミナ”ほか）のエンディング・テーマとして書き下ろした「あてもなく」の場合は、タイアップ作品に導いてもらったパターンでしょうか？

Aimer：両方が重なったような感じですね。実はタイアップのお話をいただく以前から、こういう曲を作りたいと思っていたんです。「あてもなく」というタイトルは自分でもすごく気に入っているんですが、人生とは、生きていくとは、まさにあてもない旅だなと、歳を重ねていくにつれてより感じるようになってきたんです。人間って他の生き物に比べてシンプルに生きられないというか、考えなくちゃいけないことがたくさんありますけど、だからこそ、今笑っていられるかどうかが一番大切なんじゃないかなって。そういう素直な曲を自分の音楽人生のどこかで1曲作りたいなとずっと思っていたので、今回『王様ランキング』のお話をいただいた時に、そのタイミングが来たんじゃないかと思いました。

――いつか作りたいと思っていた楽曲のテーマと『王様ランキング』に対するイメージが重なったんですね。

Aimer：はい。『王様ランキング』の登場人物の皆さんにはピュアなエネルギーがありますよね。それぞれの事情があって、それぞれの道を進んではいるけど、根っこにあるものが素直なキャラクターばかりだというイメージがあって。 主人公のボッジとカゲの関係性も観ていて心が優しくなるし、ボッジの笑顔がすごく印象的。彼はどんなにつらいことがあっても、涙を拭って、周りの人に笑顔を見せますけど、そういうシーンを観て、彼自身が、他の人にも笑顔でいてほしいと思っているんだろうなと感じたんです。アニメサイドからは「今回は一話完結型でいろいろなお話が出てくるので、一つひとつを包み込めるくらい包容力のある曲がほしい」というオーダーをいただいてたので、トリッキーな言葉や、一読して理解できないような難しい単語は使わずに作ろうと思いました。

――確かに難しい言葉はありませんね。特にサビは繰り返しの表現が多いからシンプルで、同時に地に足のついた力強さ、包容力も感じます。

Aimer：〈大切な言葉が今 空を舞ってゆく〉というのは、サビにある言葉のことなんですよ。ここ数年、サビで歌っているようなことを自分自身に何度も言い聞かせながら生きているような感覚があるんです。デビューしてから今までの間には、個人的な出来事も、世の中全体に大きな影響を与える出来事も含め、予期せぬ出来事もたくさんありました。時には笑顔でいられないこともあるので、そういう時に、自分で自分にかけてあげられる言葉を持っておくのは大事だなと、年齢を重ねるごとに思うようになっていって。この曲を受け取ってくれた人にも、こういう言葉を自分自身に言ってあげてほしいかなと思います。

――レコーディングにあたって、どのようなことを考えましたか？　

Aimer：どういうふうに歌ったら一番伝わるだろうと考えるのがすごく難しかったです。言葉が普遍的な分、今まで以上にしっかり考えて、歌の研究家としての研究成果を思い切りぶつけないと届かないんじゃないかと思ったんです。

――それは感情を乗せられるかどうかの話ではなく、ボーカリストとしての技術の話ですか？

Aimer：そうですね。自分で技術だと言うのはおこがましいんですけど、「音の長さはどのくらいにしようか」とか「ここはどのくらい後ろに引っ張ろうか」といったちょっとした部分に、いつも以上に気を配りながら歌ったという感じでしょうか。そういうちょっとしたコントロールにしっかり気を配れているかどうか、そのうえで、聴いている人が気にならないくらい自然に、楽曲に馴染みながら歌唱できているかどうかによって、シンプルな言葉を心に響く言葉にできるかどうかって左右されると思うんです。

――つまり、自分の持つテクニックを駆使して最適な歌唱法を都度選びつつも、「この人はすごいことをしているな」と聴いている人に伝わらないほど自然な歌い方をしたいと。

Aimer：やっぱり自分が目指している歌ってそういうものなんだと思います。歌唱力を前面に押し出した歌ではなく、「この人の曲、なんか分からないけど、心に沁みるな」と思ってもらえるような歌を目指したい。そういう歌って決して派手ではなくて、むしろ地味だと思うんです。「もしかしたら誰にも気づかれないかもしれないけど、実はこういう歌い方をしています」という細かい選択の積み重ねなので。自分が目指したいのはそういう歌で、「あてもなく」は特にそういうアプローチが適しているだろうと思いながら、歌を設計していきました。

――歌詞の面では、〈僕はずっと 祈りの中にいたいだけ〉というフレーズが気になりました。

Aimer：確かにそのフレーズには、自分自身を投影させました。今、目を覆いたくなるような出来事が世界中で起きていて。「これから世界はどうなっていってしまうんだろう」「その中で自分が音楽を続けていく意味は何だろう」と考えることが増えてきているんですが、〈祈りの中にいたい〉というのは、ある意味、そういった出来事から自分自身を遠ざけたい、守ってあげたいといった願いだと思います。それは悪く言ったら現実逃避だし、もしかしたらそのくらい自分自身が傷ついているということかもしれない。

――だからこそ、サビで歌っているような、自分自身を肯定してあげる言葉が必要になると。

Aimer：そうですね。〈笑っていて〉という言葉は笑っていない人に言う言葉だし、自分と同じように傷ついている人はきっと世界中にいると思うんです。制作中とにかく大切にしたのは、この曲がちゃんと聴いてくれている人の心にやさしく響く曲であってほしいということ。そのために、強さも持っている曲だけど、それ以上にやわらかく歌うことを意識しました。SNSとかで様々な人と常に繋がっているような世の中だからこそ、傷ついている人や、傷ついた心のまま他の誰かを傷つけてしまう人ってたくさんいると思うんです。人間、生きていると考えなければならない複雑な問題が次々と出てくると思うんですけど、だからこそ、「今この瞬間、笑っていますか？」とこの曲を通じて誰かに問いかけられたらいいなと。たとえありきたりなメッセージでも、実はそれが一番大事なんじゃないかと。この曲を通じて聴いてくれた人のトゲトゲとした気持ちを包み込めたら、そして本当に大事なものの存在について心に直接問いかけられたらいいなと思います。

■リリース情報
『あてもなく』
発売日：2023年5月10日（水）
https://aimer.lnk.to/atemonaku_0510
・初回生産限定盤（CD+DVD）/VVCL2245-2246
価格：1,760円（税込）
「あてもなく」Music Video収録DVD同梱
三方背ケース仕様
・通常盤（CD）/VVCL2247
価格：1,320円（税込）
・期間生産限定盤（CD+DVD）/VVCL2248-2249
価格：1,760円（税込）
アニメ「王様ランキング勇気の宝箱」描きおろしイラスト使用ミニポスター＆三方背ケース仕様
アニメ「王様ランキング勇気の宝箱」ノンクレジットエンディング映像収録DVD同梱
【CD収録内容】
※4曲目に収録のトラックは、「初回生産限定盤・通常盤」と「期間生産限定盤」で異なります。
1.あてもなくアニメ「王様ランキング勇気の宝箱」エンディング・テーマ（作詞：aimerrhythm作曲：飛内将大編曲：玉井健二、飛内将大Strings Arrangement：室屋光一郎）
2.空噪wired（作詞：aimerrhythm作曲：百田留衣編曲：玉井健二、百田留衣）
3.Life is a song（作詞：aimerrhythm作曲：キクイケタロウ編曲：玉井健二、キクイケタロウ）
4.あてもなく-Instrumental-（初回生産限定盤・通常盤に収録）
4.あてもなく-TV ver.-（期間生産限定盤に収録）
All Songs Produced by玉井健二（agehasprings）

■アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』放送・配信情報
＜放送＞2023年4月13日よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて毎週木曜24:55～放送中
※放送時間は予告なく変更になる場合があります。
＜配信情報＞Prime Videoにて見放題独占配信、毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定
他各配信サイトにて配信予定

(C)十日草輔・KADOKAWA刊／アニメ「王様ランキング 勇気の宝箱」製作委員会

アニメ公式HP＆SNS公式サイト：https://osama-ranking-treasurechest.com
Twitter：@osama_ranking（https://twitter.com/osama_ranking）

Aimerオフィシャルサイト：https://www.aimer-web.jp/
AimerOffcial YouTube Channel：https://www.youtube.com/channel/UCR1zT1s524Hbc85bdvno_8w