wacci、「恋だろ」ロングヒットを経て届ける“バンドとしての魅力” 10年で培った広がりや新たな展望も明かす
「成功体験ができて、アレンジをメンバーに委ねる範囲が広がっている」
ーー「suits you」はゴスペル的な雰囲気もありますね。
小野：オルガンの入り方かな？ そのあたりは因幡に相談して、自分で打ち込んだフレーズをどうしたら上手く表現できるかを話し合って。
因幡：うん。僕は「風」「恋だろ」「まばたき」のアレンジを担当しました。
ーー「まばたき」はピアノがかなりフィーチャーされてますね。
因幡：ピアノでしかないですね（笑）。僕は“10周年”は意識せずに、そのときにやりたいことをやるようにしていて。それがバンドに必要だとも思っているし、スタンスとしては以前から変わってないですね。
村中：僕もけっこう好きなようにやらせてもらったんですが、特に「東京24区」は今だから形にできた曲だと思っています。もともとブラックミュージックが大好きで、ヒップホップなどもよく聴いていて。そういう要素をエッセンス的に出すことはあっても、がっつり押し出したことはなかったんです。「東京24区」で初めて、自分が好きな音楽を余すことなくやれたのかなと。小野くんには、この曲のためにシンセベースを買ってもらったんですよ。
小野：買いました！
村中：DAW上で音を作ることもできたんだけど、「実機のほうがいいよね」と言ってくれて。
ーー素晴らしい。「フレンズ」は村中さんが作詞・作曲・編曲を担当。こういうアッパーな曲も、村中さんの個性ですよね。
村中：テンポが速い曲の担当といいますか（笑）。明るさが出ちゃってますね。
横山：そうだね。僕はドラム以外の楽器ができないので、1曲全部をアレンジすることはあまりなくて。今回のアルバムでは「トータス」を小野くんと連名で編曲させてもらったんですけど、僕が構成やサウンドの雰囲気を伝えて、小野くんにそれを実際に音にしてもらうような役割分担で取り組みました。
村中：プロデュ—サーだね。
横山：「トータス」は自分たちのことを歌ってるところがあるんですけど、弾き語りのデモを聴いたときに、ロックバンドっぽいサウンドにしたいと思って。wacciには意外とロックっぽい曲が少ないんですけど、この曲にはそれが合うと思ったんですよね。「ギターロックでありつつ、ピアノもがっつり出てほしい」とか、けっこう無理なことも言ったんですけど、みんなに相談しながら形にして。この曲を10周年のタイミングのアルバムに入れられてよかったです。
ーー曲を書く段階で橋口さんのなかにサウンドのイメージがあると思うんですが、そのあたりのやり取りはどうしてるんですか？
橋口：曲ごとにかなり綿密に話し合ってますね。確かに楽曲を書いているときのイメージはなかなか拭えないんですけど、「ガラッとアレンジが変わって、よくなった」という成功体験も増えてきて、身を委ねる範囲も広がってると思います。それこそ「恋だろ」は、始ちゃん（因幡）がいい色をつけてくれて。最初はちょっと受け入れられないところもあったんですが（笑）、でき上がった曲はかなり始ちゃん寄りになってて。信頼感がさらに上がりました。柔らかさのなかにエモさがあるというか。
因幡：よかった（笑）。ドラマサイドからの要望も聞きながら、自分たちのオリジナリティも出せたと思います。
ーー「恋だろ」はアルバムの2曲目に収録されています。3曲目以降、「運命じゃない人」「まばたき」「痛い」「劇」とラブソングが続きますが、これは意図的なものですか？
橋口：ラブソングを並べるという意識はなかったんですけど、「恋だろ」でwacciを知ってアルバムを聴いてくれる人もいるだろうし、まず「恋だろ」を早めに聴いてもらいたいなって。あとは“今、自分たちが聴かせたい曲”を並べた感じです。いろんな景色やストーリーを思い描いてもらって、wacciのよさを感じてほしいというか。
村中：サブスクが主流とは言え、リード曲の前後の曲から聴いてくれる人も多いんじゃないかなと。
横山：この時代、15曲入りのアルバムってどうなんだろう？ とも思いましたけどね（笑）。
橋口：10代の若者はCDデッキを持ってないだろうし。
フェスのセットリストは“尖りたい”
ーーアルバムの1曲目に置かれた「風」にも、今のwacciの思いが反映されているのかなと思いました。〈今書いているこの歌が／また夢を叶えてはくれなくても〉というフレーズもありますが、こういう思いは今もあるんでしょうか？
橋口：ありますね。この前、これまでにリリースした曲を数えたら85曲だったんです。「別の人の彼女になったよ」「恋だろ」のように広がった曲もありますけど、その下には膨大な数の曲があって。書いてるときは「いい曲だ」と思っていても、思ったように聴いてもらえなかったり、リリースに至らない曲もたくさんある。そういう悔しさは常に抱えているし、「風」はそれがそのまま歌になっていると思います。歌を書くという行為に限らず、いろんな人に当てはまるだろうし、この曲を聴いて「自分だけじゃないんだな」と思ってもらえたらいいな。
ーー〈今あげているこの声が／また僕を何者にもしなくたって〉というフレーズも印象的でした。wacciは今でこそ知られていますが、“何者でもない”という時期もあったはずなので。
橋口：いまだにそうですけどね。曲とバンド名だけが先に行ってる感覚があるし、僕ら自身はまだ何者でもないというか。
村中：うん。
橋口：そのギャップを埋めていって、バンドとしての魅力をちゃんと伝えられるようにがんばらないと。
ーー2021年には日本武道館公演があり、今年は「恋だろ」がヒット。とてもいい状況で2023年に入っていけますね。
橋口：今年の下半期は「恋だろ」が呼んでくれた縁、学園祭や音楽番組なども含めて一つひとつ向き合ってきて。ホールツアーが来年1月7日に終わるんですが、それ以降のことはあまり考えてなかったので、これからちゃんと話し合うところです。去年の武道館は満員にならなかったので、次回はぜひ一杯にしたくて。「恋だろ」が広がったことでそのチャンスが高まっていると思うし、みんなで足並みを揃えて進んでいきたいですね。それが今のwacciのビジョンなので、ほかのメンバーは言うことがないと思います（笑）。
小野：（笑）。この10年、自分たちがいいと思える曲を作って、1本1本ライブをやってきて。来年もそれを繰り返します。
村中：『日本レコード大賞』優秀作品賞の受賞もそうですけど、周りの方が喜んでくれる出来事が増えて。10年間、好きな音楽を好きにやってきたんですけど、これからはみんなに喜んでもらえることを増やすのが恩返しになるのかなと思ってます。
横山：今まで応援してくれた人たちに「このバンドを好きになったのは間違いじゃなかった」と思ってほしいですからね。
因幡：曲がメディアの力もあって独り歩きしているのは大変ありがたくて。その次はぜひ生の自分たちを見てもらって、空気の振動とともに曲を受け取ってほしいですね。それがもっと強い共感につながるんじゃないかなって。フェスはまさにそういうチャンスなので、もっと出演の機会を増やしたいです。
橋口：年末、『COUNTDOWN JAPAN』に6年ぶりに出させてもらうんですよ。セットリストどうする？ ちょっとは尖りたいんだけど（笑）。
村中：だったら全曲バラードでしょ。
ーーフェスで全部バラードはめちゃくちゃ尖ってますね。『レコード大賞』をはじめ、音楽番組への出演も続き、フェスもあり、忙しい年末ですね。
橋口：はい、忙しいです。
全員：（笑）。
村中：ありがたいよね。年末、こんなに忙しいことなんてなかったから。
ーー最後に橋口さん、「恋だろ」を超える楽曲を作らないといけない、という気持ちもありますか？
橋口：いえ、それはもう「別の人の彼女になったよ」で慣れているので（笑）。できるときはできるし、できないときはできないですから。超えるとか超えないって、こっちで決めることではないですからね。とにかく自分がいいと思う曲を書き続けて、それがヒットにつながればいいなと思ってます。
■リリース情報
wacci『suits me! suits you!』
2022年11月9日（水）
・完全生産限定盤（透明BOX仕様）［CD+BD+GOODS］12,000円
（デビュー10周年記念オリジナルクッション＋セルフライナーノーツ＆メッセージブック付き）
・初回生産限定盤A［CD+BD］7,000円
・初回生産限定盤B［CD+BD］5,000円
・通常盤［CD］3,000円
＜収録曲＞
CD ※全形態共通
01 風
02 恋だろ
03 運命じゃない人
04 まばたき
05 痛い
06 劇
07 夜を越えて
08 トータス
09 僕らの一歩
10 東京24区
11 インク
12 フレンズ
13 あなたがいる
14 suits you
bonus track 恋だろ | With ensemble
Blu-ray
・初回生産限定盤A / 完全生産限定盤
『wacci 10th Anniversary Special Live』
大丈夫
恋の宛先
まっぴら!
キラメキ
空に笑えば
ワンセット
ありがとう
君を見送る
別の人の彼女になったよ
感情
結
Baton
ここからはじめよう
Weakly Weekday
Ah!Oh!
最上級
リスタート
宝物
東京
歩み
チーム
・初回生産限定盤B / 完全生産限定盤
Music Video集
恋だろ
僕らの一歩
あの子
フレンズ
劇
まばたき
あなたがいる
東京24区
風
トータス
インク
どうかしている
足りない
元カノの誕生日