TENDRE、“音楽の道”を歩んできたことを肯定する感動のステージ 河原太朗の両親とも共演果たしたツアーファイナル

 TENDREが11月21日、全国ツアー『「PRISMATICS」Release One-Man Tour 2022』最終公演をZepp DiverCity(TOKYO)にて開催した。

 2010年代後半に日本の音楽シーンに同時多発的に現れた、ブラックミュージックからの影響を多分に受けたアーティストたちは、メジャーからインディーズまで幅広い領域にそれぞれ成果を残してきた。2017年に活動を始めたTENDREも、その一人である。活動開始からこれまでの5年という月日の中で着実に成長してきたTENDREは、グルーヴ感のある心地よいサウンドと、ソウルフルかつまろやかな歌声で多くの人々を魅了している。この日も極上の音楽が序盤から会場を包み込んだ。

 開演すると、サングラスと黒の革ジャンを装い、クールに決めたTENDREがステージに登場。「ついに来ちゃいましたツアーファイナル!」とテンション高めに叫ぶと、会場から大きな拍手が起き、そのまま1曲目の「FANTASY」のイントロが鳴り始めた。

 流れるようにして「RIDE」「LIGHT HOUSE」へ。TENDREのライブに足を運ぶといつも感じるのが、演奏陣の見事さである。TENDREこと河原太朗は、ギターや鍵盤に加えてサックスまで操るマルチプレイヤーとして知られるが、このステージ上で特別な才能を持つのは彼だけではない。ドラムはShe Her Her Hersの松浦大樹、ベースはBREIMENでも活躍する高木祥太、サックスは象眠舎やCRCK/LCKSとしても活動する小西遼、コーラスにはTempalayのメンバーでもあるAAAMYYY、キーボードにはピアニストの宮川純、パーカッションに元bonobosの松井泉と、サポート全員が第一線で活躍するミュージシャン。こうした腕利きのプレイヤーたちがグルーヴを自在に操り、うねりを起こす。とりわけサックスの小西はフルートやシンセサイザーなど複数の楽器を曲ごとに使い分け、多彩な表現で作品の世界を色付けしていた。

 続いて「crave」「DISCOVERY」「MISTY」と披露。音源より深いグルーヴに、さらに各々のアドリブも利いていて自然と体が揺れてしまう。ここでTENDREは「はじめて鍵盤から離れてみました」と話す。確かにいつもはキーボードの前に座って歌っている印象があるが、この日はマイクを片手にステージ上を軽やかに移動する場面が多く見られた。それだけバックの演奏陣を信頼しているということなのかもしれない。

 リズミカルな曲が続く前半。ここまでをダンスパートだとすれば、ここからはサイケデリック〜スピリチュアルパートとでも言うべきか。次の「OXY feat. AAAMYYY」と「CHOICE」は、精神世界に深く深く潜っていくようなサウンドに酔わされた。ここで一旦メンバー紹介を挟み、和気藹々としたやり取りで空気を和ませる。

高木祥太

 後半の始め方も素晴らしかった。「CLOUD」と「NOT EASY」といった穏やかかつムーディーな楽曲で空気を作っていく。TENDREは、新世代ジャズやサウスロンドンの音楽シーンと共鳴した音を鳴らす存在として評論家筋からの支持も厚い。だがこのパートは、どちらかと言えば70年代ニューソウルの雰囲気。ヴィンテージな質感があり、埃の被ったレコードに針を落とすようなワクワク感があった。

 そこから徐々にアクセルを踏むようにして人気曲「DOCUMENT」を披露。オーディエンスの空気に火がつく。間髪入れずに「HAVE A NICE DAY」「SUNNY」と続けていくと、会場がぐいぐいと温まっていくのを感じた。強い個が集まり、足し算以上の何かを生む魔法のようなステージ。演奏陣も負けじと熱を帯びていく。しかも曲と曲をシームレスに繋ぐことで熱を冷まさない。「HOPE」「hanashi」そして本編ラストの「PRISM」へと美しい流れを見せると、会場全体が大きな拍手で包まれた。

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