BTSメンバーたちも順次入隊へ、兵役による休止期間も人気勢力図に変化なし? 活動やグループの在り方がファンダムに及ぼす影響

 10月15日、HYBEと釜山市による2030年の万博招致イベントである、『WORLD EXPO 2030 BUSAN KOREA CONCERT BTS <Yet To Come>in BUSAN』公演が行われた。そして公演終了後、BTSメンバーの兵役に関して所属事務所から公式のアナウンスがあった。

 BIGHIT MUSICは「(1992年生まれで最年長の)JINは10月末のソロシングルのリリースのスケジュールが終了次第、(兵役義務履行)手続きを開始する予定です」と明らかにした。韓国では兵役法の元で1951年から施行されている兵役義務制度により、国家によって「健康」とみなされた18歳以上の男性は、一般兵であれば1年6カ月の兵役義務を履行しなければならない。(2022年10月現在/※1)。所属の隊や隊長などによって期間の差はあるが、おおむね1年半〜2年程度の間、学業や商業活動を停止することになる。徴兵は28歳まで延期することができるが、2020年12月に大衆音楽歌手が韓国の文化的影響力を世界で高めたとして政府の勲章を受章した場合、兵役入隊を30歳まで先延ばしにできるという、いわゆる「BTS法案」が国会で可決された(※2、3)。BIGHIT MUSICによる今回の発表は、この「延期期間」の申請を取り下げて通常通り入隊への準備を進めるという意味だ。

 JINと同期の1992年生まれの韓国アーティストの中には既に除隊して芸能活動に復帰している者も出てきているが、BTSメンバーの入隊が延びていた背景には、2020年に「Dynamite」が米ビルボードHOT100の1位に浮上したことが大きかった。BTSが欧米圏で人気を博したことでK-POPの世界的人気の拡大に繋がり、国威宣揚および認知度改善に大きな影響を及ぼしたことが「芸術体育要員」の条件に当たるのでないかという議論が国会でもたびたび取り上げられるようになったのだ。「芸術体育要員」とは、現役兵として服務する代わりに2年10カ月間の間軍の芸術体育分野に従事し、当該分野の発展に寄与するという服務制度。2019年11月の兵役制度改正時にも芸術体育要員にK-POPアーティストのような「大衆音楽歌手」も含めるべきだという議論が出たが、最終的に大衆芸術家の分野は新設しないことになった。

 芸術体育要員はよく「免除」という表現が使われるために誤解を受けやすいが、「兵役義務がなくなる」ということではなく、先述したとおり「兵役の代わりの軍関係の職務につく」という兵役特例のことで、いずれにしろ一定期間の軍事訓練は必須だ。芸術体育要員に認定された場合でも、国家に有益であるとみなされる公演や大会には参加が可能だが、定められた基準に違反するような行為があった場合は資格が取り消されて兵役に転換される(※4)。

 また、現在対象になっている分野でも、スポーツの場合は大韓民国の選手団または南北統一チーム選手団のメンバーでなおかつ特定の大会に入賞以上をした者、クラシック音楽・舞踊・国楽のジャンルでも、対象となるコンクールや大会などが法律で厳密に規定されている。大衆音楽の場合、国家への貢献度以前にこのような「規定」を作ることが実質難しいということは大きいのだろう。実際、米ビルボードチャートは2022年1月にHOT100の集計規定を「デジタル音源のダウンロード購入の場合、1週間につきリスナー1人あたり1回のみの換算とする」と変更した(※5)。それまではデジタル音源の複数購入が容認されていたが、このレギュレーション変更により、集計ポイントの中で「ファンダムによる購入」の割合が大きいK-POPアイドルの場合、HOT100への上位チャートインは2021年以前よりもさらに難しくなっている。

 「彼(JIN)は、その後韓国政府の入隊手続きに従うことになります。BTSの他のメンバーも個々の計画に基づいて兵役を遂行する予定です」という公示の通り、現在入隊中の他のアーティスト達と同様に今後順次入隊、BTSもあるいは代替服務につく準備をしているようだ。

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