「Signal to Real Noise」第十二回

Bialystocks、あくまで作品が主体の“制作集団”としてのスタンス 2人の音楽的ルーツから紐解く

「灯台」の光はその街に暮らす人たちにも当たる瞬間がある

――新曲の「灯台」は菊池さんの作曲で、ヒップホップ的なビートが軸にありつつ、やはり後半へ向けての展開が印象的です。

菊池:コール・ポーターの曲とかによくある、曲の4分の3くらいにグッと来るポイントが必ずあるのが好きで、自分の曲にもできるだけそういうポイントは入れたいと思っているので、曲の流れはすごく意識してます。この曲は最後のサビに行く前をどうしようかなと思って、それでCメロを作った感じです。

――Cメロを経て、後半のサビで歪んだギターが入ってきて、ラストのファルセットでピークに達するような仕上がりになっていますが、アレンジに関してはデモの時点で作り込むんですか? それとも、スタジオで実際に録音する中で変わったりもするんですか?

菊池:レコーディングまでにアレンジが間に合わなくて、とりあえず入れたい楽器だけ決めて、スタジオで考えながら録ることも多いです(笑)。この曲も全体の流れだけは頭の中に入れつつ、最後はスタジオで一気に「これだ!」っていう感じで仕上げましたね。

――この曲はドラムが神谷洵平さんで、他の楽器は菊池さんだそうですね。そこはやはり制作集団的な考え方で、曲ごとにそれに見合ったプレイヤーを呼んでくるわけですか?

甫木元:そうですね。もともとは菊池の知り合いのプレイヤーに参加してもらうことが多かったんですけど、最近はライブもいろんな人とやっていて、そこもガチッと決めすぎず、いろんな引き出しを用意しておくことが大事かなと思っていますね。

――「I Don’t Have a Pen」の歌詞は音重視だったとのことですが、「灯台」は全編日本語詞で、意味性もあるように思います。ただ、明確なメッセージがあるというよりは、もっと余白があって、ロードムービー的な印象もある。そのなかに死生観や光と影、出会いと別れといった両面性が常にあって、今回の歌詞はその部分がいつも以上に素直に出ているようにも感じました。

甫木元:最初にこの曲を聴いて思い浮かんだのが、暗闇の中を船が行き交っていて、そこで灯台の光が360度回転しているようなイメージだったんです。で、ラスサビに行く前の場面転換は、暗い海の水平線があの世とこの世の境目に見えるような感じ。ここ数年ずっと灯台を撮影していたんですけど、灯台の光が360度回転してるって知らなかったんですよ。海だけじゃなくて、陸側も照らしてるのを知って、それがすごく面白いなと思って。

――陸側も照らしているんですね。僕も知らなかったです。

甫木元:光を目印に船が帰ってくるだけじゃなくて、そこの街に暮らす人たちにも光が当たる瞬間があるっていうのが面白いなって。「灯台」がそのままタイトルになるとは思っていなかったですけど、そのイメージをどこかで使えないかとはずっと思っていて。

――11月には監督として2作目の長編映画『はだかのゆめ』の公開も決まっていますが、あの作品とのリンクもあったりするのでしょうか?

甫木元:いや、映画の中に灯台は出てこないんですけど、『はだかのゆめ』も生と死がテーマになっているので、死生観みたいなことで言うと、地続きではあると思います。

――Bialystocksの歌詞全般の根底に死生観がある印象もあります。

甫木元:ここ数年は自分の周りでそういうことが起こりやすかったので、自分が体験したこととか見たことはかなり反映されていると思います。ただ「実体験をそのまま書いている」というよりは、何かに変換して書こうとは思っていて。自分の思いの吐露だけにならないように、風景に置き換えたりすることで、聴いた人にも共感……とまではいかなくても、自分の触れた感覚が他の人にも分かる形で伝わればいいなと思っています。

Bialystocks - 灯台【Music Video】

――まさに、聴き手がそれぞれの心情を重ねられる器のような楽曲になっていると思います。最後に、『はだかのゆめ』は劇伴もBialystocksとして手がけられているそうですが、それはどんな経験でしたか?

甫木元:普段の曲作りとほとんど差はなかったですけど、普段はメロディがメインになるのに対して、映画は映像やストーリーとの関係性がメインになる、みたいな感じですね。台詞がボーカルっぽくなることもあって、どんどん引き算されて、「音楽いらないね」ってなることもあったり(笑)。なので、「劇伴だから」といって特別意識したことはないです。「ミュージカルが好き」と言っておきながら、必ずしも音楽が主導権を握って引っ張るわけではなく、映像がメインにあって、音楽には何ができるかを探っていく感じでした。

――やっぱりBialystocksは制作集団であって、あくまで作品ありき。それが曲なのか、映像なのかによっても、自然とアプローチが変わるわけですね。

甫木元:そうですね。なので、自分たちのエゴを出したくてやっているわけではないんです。

■配信情報
「灯台」
9月2日(金)配信
配信リンク:https://lnk.to/todai

■ライブ情報
『Bialystocks - Live 2022 "音楽交流紀 2" (2022.07.09)』
9月3日(土)OPEN19:30/START 20:00
(アーカイブ:9月9日(金) 23:59まで)
・視聴券:1,000円(税込)+システム手数料
チケット発売:https://w.pia.jp/t/bialystocks-pls/
インバウンドチケット発売:https://w.pia.jp/a/bialymusic22-engpls/
販売期間:8月24日(水)22:30〜9月9日(金)20:00まで

『Bialystocks 第一回単独公演 於:大手町三井ホール』
2022年10月2日(日)大手町三井ホール
OPEN17:15/START18:00
チケット5,500円(税込・自由)+ 1DRINK
※SOLD OUT

About Bialystocks
https://lit.link/bialystocks

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