2020年にアーティストデビューした中島由貴は初のシングル『Day of Bright Sunshine』をリリースした。表題曲は新たな一歩を踏み出す、背中を押すような明るく前向きな1曲。カラフルに描かれる世界を弾む歌声で表現し、聴き手の心を躍らせる。一人称が登場しない歌詞であるにもかかわらず旅や冒険の様子が鮮明に思い浮かぶのは、情景豊かな歌詞のためだけでなく語りかけるように歌い上げる中島の歌声があるからこそだろう。陽に当たって輝く自然の息吹を感じる楽曲は、これからの季節にもぴったりだ。

　一方でカップリングの「Snow Tears」は冬の楽曲。歌いだしはリズミカルに〈マフラーで隠したのは　耳が少し熱いから〉と声を弾ませるが、サビに向かうと〈だまってる横顔が　いつもよりも痛いよ〉と切なさが混ざる。〈白く真っ白く　積もる恋に　最初の一歩を踏み出せば　汚してしまうかな〉と葛藤を描いていく歌詞は、冬のぬくもりと寒さ、恋がもたらす熱さと痛みが混ざり合っているかのよう。感情を繊細に汲み取りながら物語を進めていく中島の歌声と、曲中での温度感の変化を楽しめる1曲だ。

　1〜2月は、声優アーティストが初の試みに挑戦した新譜がいくつも生まれた。それぞれ幅広い音楽を奏でる一方で、制作への参加や突き詰めた表現で声優たちのパーソナルな部分も反映された作品に注目してもらいたい。

※1：https://natalie.mu/music/pp/ogurayui13