「6人一人ひとりの役割をAYAMEに託して歌ってもらう」（EREN）

ーーアルバムのなかで「あかり」や「equal」は、コロナ禍に生きる人の迷いとか、断絶、閉塞感が表現されているように感じたんですが、どうでしょう？

EREN：いや、そこはコロナ禍になる前から同じようなことを思っていて。それが結果としてコロナ禍と重なったという言い方の方が正しいかもしれないです。僕はハーフで、コンプレックスを抱えて過ごしていた幼少期があるんですね。見た目で判断されて、自分は（人と）違うんだって思わされることに悲観的になってた。だから「equal」は、そう言われる人に対して「みんな一緒だよ」「そんなに君は違わないよ」っていうことを歌いたかったんです。

ーー「あかり」はどうですか。〈世界は今赤信号だらけだ〉とか〈僕らの心だけが自由だ〉というフレーズがとても印象的でしたが。

TKT：これもそんなにコロナ禍を意識して作ったわけじゃないんです。結果的にコロナ禍に重なっているのかなとは思いますけど。

SEIYA：客観的じゃなくて主体的ですよね。つらい人がいるから応援する曲を作りたいとかじゃなくて、自分たちが感じたままなんですよ。もちろんコロナ禍の影響はあるんですけど、コロナで大変な人たちのために作りたいっていうよりは、同じ世界に生きて、こういうことが起きたときに、僕らはこういうことを感じたんだよっていうことに近いんです。

ーー先ほど、「Me」が今作の基盤になったという話もありましたけど、どういうタイミングでできたんですか？

EREN：バンドのなかで軋轢が起きたときぐらいだったんです。そのときにTKTと、音楽の力で自分たちの未来を変えていけばいい、っていうことをすごく話したんです。そういう願いがテーマでしたね。TKTやAYAMEと集まって一緒にデモを作ったんですよ。「もうこの曲で世界を変えられる！」くらいに思ったんですけど、そのあとメンバー間での軋轢が起きてしまって。しばらく間をおいて、またみんなで頑張っていこうって思えたときに「Me」を改めて聴いて、満場一致でこれを今回のアルバムで推していこうってなったんです。

ーー状況が変わって、それぞれの聴こえ方が変わったのかもしれないですね。

EREN：「Me」は信頼という言葉がすごく合うような気がするんですよ。例えば、「あかり」は6人でメッセージを強く出すっていうテーマの曲なんです。でも「Me」は、AYAMEに託したよっていう見せ方になっていて、それが信頼感というか。6人の一人ひとりに役割があって、そういう想いをAYAMEに託して歌ってもらう。唯一、そういうスタイルの歌ですね。

ーーサウンド面で言うと、いままでにない挑戦も多いですね。「ケセラセラ」はジャジーで怪しげな雰囲気だったり。

EREN：ゴシックですよね。ダークファンタジーというか。

ーー制作の過程で大きくアレンジが変わったと言ってましたね？

EREN：以前のアレンジも気に入っていたんですけど、アルバムのリリースが近づいてきて、まだやれることがあるんじゃないかと思って、SEIYAにもう1回アレンジを投げたんです。もっとハロウィンでファンタジーな感じにしようぜって。ベルみたいな音でアメリカのホラー映画の導入みたいな音を入れていきましたし、ストリングスの音にもこだわっていて。エフェクティブにしたかったんですよ。まだ曲ができてない状態で先にバイオリンのテイクをもらって、それをパソコン上でいじってるんです。クラシックな音を加工していくというか。

RINA：他の曲とは録り方が全然違いましたね。箇所ごとに刻んで録るというか。

EREN：そうやって録ったものが、こうやって返ってくるんだっていう感じだよね。ボーカルRECも、普通はちゃんとした（録音用の）コンデンサーマイクで録るんですけど、今回は自分たちの家で、1万円ぐらいのライブ用のマイクで録ったんですよ。それだとふくよかさは出ないんですけど、瞬発力が出るというか。

AYAME：強さが出るよね。

EREN：そう、勢いがある。AYAMEも伸び伸びと歌っていて、メンタルって場所によってこんなに変わるんだなって思いましたね。

いまこの瞬間を大事にするからこその「まあいっか」

ーー「まあいっか」はライブ映えしそうな攻撃的なダンスロックで。このバンドのテクニカルな強みが発揮されています。

EREN：バイオリンは泣きながら弾いてたよね？（笑）

RINA：はい、血と涙の結晶です（笑）。

EREN：（バイオリンの）ソロを入れたいから考えてきてと言って、1個考えてきてくれたんですけど、グッとこなかったんですよ。

RINA：曲に合うように頑張って考えたんですけど、（曲の）大事なところを聴けてなかったんです。それで、「悩んでる人が“まあいっか”ってなれるような曲」というコンセプトを改めて話して。ERENくんと一緒に作ったところもあるので、そこは自信作です。

ーーBOBさんのドラムは一部打ち込みも取り入れてますね？

BOB：今回は打ち込みの曲もあるんですけど、ドラムを叩いてないからいい／悪いのではなくて、「こういうフィルにしたいからこうする」とか、考えることが多かったですね。AliAって自分の引き出しにないことを求められるんですよ。それをどう形にするか、毎回悩むんです。挑戦も必要だし。

ーーBOBさんにとって一番チャレンジングだった曲は？

BOB：「equal」ですね。ドラムは激しい方ではあるんですけど、僕が聴いてきたメタルとは違う速さが求められた感じだったから。

EREN：僕は「equal」のドラムが一番好き。あれはBOBにしかできない。

RINA：職人技ですよね（笑）。

ーー「equal」は壮大なバラードですね。BOBさんのドラムは力強いけど、深みもある。

BOB：「equal」は初期からやってたんですけど、アレンジは全然違ったんですよ。

EREN：一応、僕はコンポーザーみたいなポジションで制作を仕切ってるけど、こういうふうにやってほしいって伝えるとき、すごく言葉を選ぶんです。音楽的な言葉を使うと早いんですけど、この曲はBOBに眠る潜在能力を出したかったので、「俺はこういう気持ちなのに、お前はまだここに来ねえのかよ」「もっとカオスに」っていうメンタル的な話をしてました。BOBはすごく器用に叩けるんですけど、もっとフリーでいい。記録に残してないと、二度と叩けないぐらいのことをしたかったんです。サウンドプロデュースに入ってくださってる平出（悟）さんにも、この曲はメジャーアーティストがやらないような、ドラムがうるさいニュアンスでやりたいから、きれいに録らないでくださいって伝えてますね。

ーー作詞はTKTさんが中心ですけど、AYAMEさんが手がけた曲もあって。「まあいっか」「ケセラセラ」「天気予報」の3曲はテーマが近いですよね。

AYAME：そうなんですよ。「まあいっか」はコロナ禍で外に出るのが怖くなった時期に作ったんです。なんか難しく考えちゃってるなって。私たちには今しかないのに、もったいない。もっと簡単に考えようぜ、みたいな気持ちですね。どうにかなるっしょ、みたいな精神って意外と大事だったりするんですよ。よくSEIYAが「まあいっか」って言うんですけど。

SEIYA：それが軋轢問題のあとに僕が辿り着いたことだったんです。そんなに上手くいかないよねって。それは深いことだけじゃなくて、「これ、もうちょっと早くやっておけばよかったな」とか思うことって誰でもあると思うんですよ。でもまあいっか、みたいな。

AYAME：そうそう、過去のことをわざわざ掘り返すより、前に進んだほうが絶対に楽しい。そういうことを考えたときに、ERENくんと曲を作っていて出てきたメロディが「まあいっか」にしか聴こえなかったんです（笑）。

SEIYA：やべ、口癖を取られたなと（笑）

ーーこれはポジティブな「まあいっか」ですよね。投げやりじゃなくて。

SEIYA：バカボンのパパの「これでいいのだ」みたいな。

ーーアルバムの幕を開ける「天気予報」もそういう歌なんじゃないかと思います。

EREN：そう。僕たち、雨バンドってすごくイジられるんですよ。毎回ライブが雨なんで。

AYAME：それも別にいいでしょっていう。

ーー〈雨がやまないのなら／ずぶ濡れで笑っていようよ〉というフレーズが素敵です。

AYAME：ステージからお客さんを見てるときに思ってることなんですよ。一緒に歩いていこうよって、お客さんを思って書いた曲ですね。コロナでライブができなかったときに、次のライブで君になんて声をかけてあげられるだろうっていう想いが歌になってるんです。

ーー今回はいろいろな角度から『Me』について聞かせてもらいましたけど、ERENさんが最初に言っていた通り、本当に6人の総力戦で作り上げた作品だなと思いました。

EREN：そうですね。僕らは特別な関係性だと思うんですよ。一緒にバンドをやっていると、また同じことを繰り返すって無理だなと思うんです。それぐらい一つひとつの出来事が特別だし、素敵な時間だし、幸せなので。そうやって生きている時間をみんなとも共有したいんです。

■リリース情報
AliA 1stフルアルバム『Me』
12月22日（水）リリース／¥3,000税込
＜収録曲＞
1.天気予報
2.ノスタルジア
3.まあいっか
4.ケセラセラ
5.翼が⽣えたなら
6.100年に⼀度のこの夜に
7.impulse
8.equal
9.かくれんぼ
10.あかり
11.おにごっこ
12.SLIDE SUNSET
13.Me

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