9thシングル『パスタ』インタビュー

伊藤美来、5年の音楽活動で確立した“自分らしさ” ゼロから試行錯誤で進めた初作曲の苦労も

 伊藤美来が、9thシングル『パスタ』をリリースした。表題曲は伊藤自身が作詞と初めて作曲を手掛けており、アーティストデビュー5周年を迎えたタイミングで新たな一面を見せる作品となった。

伊藤美来 / パスタ

 アニメ『五等分の花嫁』を筆頭とした声優業でのブレイクはもちろん、音楽活動においてもコンスタントに作品をリリースしてきた伊藤美来。アーティストデビューからの5年を振り返りつつ、音楽から得た成長、そして“作曲”という初めての挑戦への手応えなどを聞いた。【最終ページにサイン入り読者プレゼント&キャンペーン情報あり】

「作曲をする日が来るなんて思ってもみなかった」

ーー伊藤さんは10月12日にアーティストデビュー5周年を迎えたばかり。ここまでアルバム、シングルとかなり濃厚な作品を発表し続けてきましたが、ご本人の中で音楽活動に対する手応えや自信は得られましたか?

伊藤美来(以下、伊藤):本当にあっという間で、5年も続けてこられたのは不思議な感じもするんですけど、自信というよりは音楽に対する自分の意見や意思をちゃんと伝えられることになったのは大きい気がしていて。「もっとこうしたい。ああいう楽曲を歌ってみたい」という意見を出せるようになったのは、成長なのかなと思います。

ーーそれは、ご自身の中での「こういう曲を歌いたい」という好みがわかったということですか? それとも「アーティスト伊藤美来」としてこういう音楽性で、こういう曲があるといいなという客観視ができるようになったということでしょうか?

伊藤:どちらもあると思います。自分自身でライブをやりながら「こういう曲があったらいいな」と思いつつ、アーティストとしての方向性として「こういう音楽が合うんじゃないかな、喜んでもらえるんじゃないかな」というのもわかってきましたし。

ーーそのあたりはまさに、昨年12月発売の3rdアルバム『Rhythmic Flavor』に表れていた気がします。そのアルバムを携えて、今年3月には大阪と横浜での初ツアー『ITO MIKU Live Tour 2021 Rhythmic BEAM YOU』も実現。ここでの手応えはいかがでしたか?

伊藤:そのライブから2021年が始まったという気持ちが強かったので、そこで成功したからこそ今年も頑張ってこられたなと思いますし、自分の中でもファンの皆さんと会えない時間が思いを募らせた上でのライブでもあったので、思い入れも強く、今でも記憶に残るライブです。

ーー僕も横浜公演を拝見させていただきましたが、ライブ終盤に「これが私です、これが伊藤美来ですと胸を張って言えるような人間になってきた」とおっしゃっていたのが印象的でした。

伊藤:基本的には自分に自信を持てるタイプじゃないので、自信をつけるのにすごく時間がかかるんです。個人的には挫けそうになることがこの5年間で何回もあったんですけど、5年やってきて皆さんにちゃんと曲が届いていて感想をいただいたり、ライブで一緒に笑ったり泣いたりする姿を見て「続けてきてよかった」と思えたのは、本当に皆さんの声が届いてきて頑張ろうと思えたからですね。

ーーその声を受けてご自身の中での音楽性を確立させてきた5年間だったと。実際、ここ数作は“伊藤美来らしさ”というものがサウンドや楽曲を通じて感じることができるようになりましたし、ポップスというものを大切にしている感が作品を重ねるごとにより強く伝わるようになりました。今回の新曲でもその思いは随所から感じられます。

伊藤:ありがとうございます。やっぱり(2019年7月発売の)『PopSkip』というアルバムで「伊藤美来のポップスを見せていくぞ」みたいな作品を作ることができて、そこからより明確に「伊藤美来らしいポップス」を大切にして作っていこうという思いがチームの中でも強まっていったので、聴いてくださっている方にもそう感じ取ってもらえるのは続けてきた成果という気がします。

ーーその最初の集大成が『Rhythmic Flavor』であり、そこから2021年に入ってリリースした2枚のシングル(『No.6』『パスタ』)はより冒険感が強まった感を受けます。

伊藤:やっぱり『Rhythmic Flavor』を作ってから、より幅が広がったかなと思います。実際、これまでで一番大きなチャレンジが詰まった1枚だったので、そこからさらに新しいことにどんどんチャレンジする感覚で、特にこの1年はカップリング含めて新しいものを見てもらい、リスナーさんが飽きないようにと拘って作ってきました。

ーー今回のシングル「パスタ」でも、作曲という新たなチャレンジに挑んでいます。そもそも作曲のお話は、どういう流れで決まったものだったんですか?

伊藤:今回、ノンタイアップでアーティストデビュー5周年の記念になるシングルを作ることが決まり、いろいろ自由にできるということで5周年らしいチャレンジもしていきたいですねという話の流れで、「伊藤さんは作詞をされたことがありますけど、作曲はどうですか?」と言われて。「できるかなぁ?」というというところから始まりました。

ーーそもそもご自身でも作曲してみたいという意欲って、それまで持っていたんですか?

伊藤:なかったです(笑)。私の人生の中で作曲をする日が来るなんて、思ってもみなかったです。このお仕事を始めてからちゃんと音楽に触れるようになったタイプなので、バンド活動をしていたとか自分で曲を作ったことがあるとか、いろいろ音楽に詳しいというわけでもなかったので、曲の作り方もまったく知らなかったですし。

ーー例えば楽器を弾きながらメロディを作ったり、あるいは鼻歌で作ったりといろいろあるかと思いますが、伊藤さんはどのようなやり方でしたか?

伊藤:私は楽器が何も弾けないので、鼻歌を録音したものを渡すという形でした。今回は先に作詞をして、そこにメロディを付けていく形でしたが、最初は「歌詞を書いたことで、すでに伊藤さんの頭の中で流れてくるメロディがあると思うから、それが降りてきたら送ってください」という感じだったので……。

ーー「降りてきたら」(笑)。

伊藤:ふふふ(笑)。もう鳴っているだろうと。「歌詞を書くということは、自分の歌いやすいものがあると思うから」みたいな感じだったんですけど、それがまったくなくて(笑)。私は歌詞を文章として書くタイプなので、「あ、降りてこない……どうしたものか」というSOSを何回か出したことで「ではキーボードを弾いて好きな音から始めてみるとか、直感的に良いなと思った音階から決めてみるのもいいんじゃないですか?」とアドバイスをもらって、なんとか録音して送ってみたいな感じでした。

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