1st EP『RAFT』インタビュー

Suchmos TAIKING、みのに明かすソロプロジェクト始動の経緯 RADWIMPSや藤井風のサポートで受ける刺激も

 Suchmosのギタリストであり、藤井風やRADWIMPSといったアーティストのサポートでも活躍するTAIKINGが8月からソロプロジェクトをスタート。配信リリースを経て、12月15日に1st EP『RAFT』をリリースした。今回はプライベートでも親交が深く、YouTubeでもすでに共演しているみのをインタビュアーに迎え、プロジェクトスタートのきっかけからサポートでの活動から受ける刺激、バンドとソロでの違いなどを聞いた。日頃から仲の良いみのにだからこそ話せる本音も飛び出す貴重な内容となっている。(編集部)

ファンと一緒に何かをつくりあげる距離にいたい

ーーそもそもTAIKINGとは“町田ギタリスト飲み会”から定期的にお酒を一緒に飲む関係になったよね。同い年だったし、すごく仲良くなりやすかったな。こういう感じで一緒にお仕事で関わらせてもらうようになったのは、今年に入ってからだね。今回は僕がインタビュアーですから。

TAIKING:この関係値でインタビューされるって逆に慣れないな(笑)。

(左から)みの、TAIKING

ーー今回12月15日に1st EP『RAFT』をリリースするということで、ソロプロジェクトの方向性も段々固まってきたと思うんだけど、ここで改めてソロプロジェクトを始めた理由を聞いていいかな?

TAIKING:Suchmosがまだ活動していた2020年の春ごろ、コロナ禍になってライブが飛んで、バンドで楽曲制作できるように曲を書いてた時期があったんだけど、そのときに「これをバンドでやるのは違うな」みたいな曲が生まれたんだよね。

ーーバンドの方向性とは合わないってこと?

TAIKING:そうそう。そしてその後、Suchmosが活動休止になったから、じゃあ自分で歌っちゃおうかなって。あと、Suchmosはバンドとお客さんの距離が遠くなっちゃってたと思うんだよね。個人的にはもっと面白い形でファンのみんなとの関わりを再構築したいなと思って。ソロだったらある意味新人だから、面白いことができるかもっていう期待もあった。

ーー確かに、Suchmosっていう屋号を聞いたら「こういう音楽だな」っていうのが音楽ファンならなんとなく想像がつくくらいまでの大きいバンドになってたからね。

TAIKING:応援してくれる人たちと一緒に何かをつくりあげる距離にいたいって思ったんだよね。「こういう企画やったらみんな来る?」ぐらいのノリで活動したいなって。

ーーTAIKINGが今YouTubeでやってる、ドライブしながら語る企画もまさにそれだよね。Suchmosだけの段階だったら、こういう笑顔の人なんだっていうことを知らない人も多分いたと思う。そういう部分がソロになってどんどん開いていってるね。

TAIKING:コメント読んでると「ちゃんと運転しろよ」とかもあるんだけど(笑)。でもそういうのもいいなって思う。

ーー10月に配信された「走馬灯」は弾き語りのアコースティックな楽曲だけど、そういう親密な距離感の楽曲もSuchmosにはなかったよね。

TAIKING:そうだね。実は最初、EPじゃなくてアルバムを作ろうとしてたんだけど、その中に弾き語りがあったらいいなって思ったの。でも弾き語りって今の俺の曲の作り方的にあんまりないんだよね。「走馬灯」は20歳で書いた曲なんだよね。

ーーてっきり『THE ANYMAL』を出し終えた辺りから作り溜めていた曲を、断続的に出してるのかと思ってた。じゃあ曲を書いた時期は結構バラバラ?

TAIKING:「走馬灯」がダントツに古いね。当時から、どんな形でもいいからとにかく世の中に出したいなって思いながら10年寝かせてた。20歳のとき、高校の友達が亡くなったんだよね。そのとき生死に関して色々考えて、「自分もいつかは死んでしまうから、その時にいい走馬灯を見たいな」って思った。だから“いい走馬灯を見るために今を頑張ろう”っていう曲が書きたくて、この歌詞を書いたんだよね。

ーー死っていうネガティブな題材ではあるんだけど、直前の刹那をポジティブに切り取るっていうのはすごく面白い切り口だよね。この曲だけではなくて、TAIKINGの音楽はどれもポジティブ。Suchmosの中でも陽の部分を担っているっていう種明かしがソロプロジェクトでされてる気がする。

TAIKING:結局、陽の方が楽しくていいよねっていうシンプルな考えだね。「仕事疲れたな」っていう飲み会よりも「イエーイ!」っていう方が楽しかったりするじゃん。『RAFT』だと、「Humming Birds」は2020年の4月くらいにできたかな。割とソフトな感じで。

ーーギターを弾く身からすると、アコースティックで「Humming Birds」っていうタイトルだと、ギブソンのハミングバードで弾いてるのかなって想像しちゃうんだけど。

TAIKING:いや、マーチンで弾いてる(笑)。もちろんハミングバードでも弾いてみたんだけど、音が重いから、もうちょっと綺麗な感じがいいなって。

ーーなるほど(笑)。ソロをやるにあたって、Suchmosでは顕在化してなかった自分の音楽性が出てきた感覚はある?

TAIKING:人の解釈によると思うんだけど、J-POPっぽい部分がソロになって一気に出た感はある。まぁ「STAY TUNE」もJ-POPでしょっていう人もいると思うから、一概には言えないけど。

ーーこんなにポップなメロを書く人なんだって思った人は多そうだね。あとギタリストって声がざらついてるイメージがあるんだけど、TAIKINGは優しい声を持ってるよね。

TAIKING:コンプレックスでもあるんだけどね。メジャーな曲だと割と歌えるんだけど、マイナーの曲だとかっこいいフィールが出るのに、この声で歌うとかっこよく決まらないっていう悩みがある。ボーカリストじゃないっていうのはあると思うけど、声の質的にマイナーが向かないんだよね。2ndシングルの「VOICE」はマイナー調の曲だから、めっちゃ苦労したもん。これで大丈夫かなみたいな。

ーー僕はあれが一番好きな曲ですよ。自分がギターを弾くっていうのもあるかもしれないけど、まずギターのアンサンブルが面白い。さっきも言ったようにそこでSuchmosのそういう部分を担ってたんだっていう種明かし的な面白さもあるし、曲に乗っかってくる声が今までと全然違うところもすごく好き。

TAIKING:ほんとに? 嬉しい。ちょっと自信になるわ。マイナーの曲も書きます(笑)。

ーーTAIKINGは、ギターのスタイルや作曲の面でいうとマイナーを得意としてるじゃん。でもソロプロジェクトではマイナーが苦手って自分で分析してるんだとしたら、それは面白いよね。

TAIKING:Suchmosの場合は曲がほぼマイナーだから、ギターもそれに合わせたリフやフレーズに、ソロパートもマイナーに特化してたけど、自分が歌う曲ではマイナーが苦手だからメジャーの曲ばっかりだね。でもギタリストとして得意な部分と、自分のソングライティングとして合ってる部分が違う方向にあるから、そこを共存させるのに毎回苦労してる。自分のソロではボーカルっていう感じじゃなくて、 「ギタリストが歌ってる、面白いな」みたいな角度で見てもらいたい。あくまでも“ギタリストとしてのソロプロジェクト”でいたいから、ギターの音をできるだけたくさん入れるっていうのがテーマだったりするんだよね。もちろんフレーズは考えなきゃいけない瞬間もあるけど、基本的には俺から出てくるフレーズをラフに弾いてる。練習しちゃうと、「これは誰の曲なんだろう」みたいな感覚になっていくこともあるし、できないことを残しておくのもありだと思う。曲調や曲は違っても、ギターは全部の曲を通して「この人のギターだね」ってわかる感じになればいいなって。

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