「DEAD END〜LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS & Campanella)」インタビュー

ミッキー吉野×STUTS特別対談 世代を超えたものづくりが投げかける、袋小路な社会へのひとつの提案

『西遊記』と『大豆田とわ子と三人の元夫』の共通点

ーーお二人にはいくつか共通点もありますね。ミッキーさんは20歳の頃にバークリー音楽院へ留学、STUTSさんも24歳の頃にニューヨークのハーレムで路上ライブを敢行と、ひとつは20代で海外に渡った点。もうひとつは、ミッキーさんはゴダイゴとして『西遊記』(日本テレビ/1978年)における「Monkey Magic」「ガンダーラ」及び『西遊記Ⅱ』(日本テレビ/1979年)における「ホーリー&ブライト」、STUTSさんはまだ記憶に新しい『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系/2021年)における「Presence」と、それぞれ画期的なテレビドラマのテーマを手掛けられている点です。

ミッキー:そうですね。「Presence」にはドラマ主題歌の新たな潮流を感じました。共感する点もたくさんありましたね。

STUTS:恐れ多いです。あのドラマは坂東祐大さんが手掛けられた劇伴も含めて、制作の皆さんが一丸となって音楽で新しいことを試みたドラマで、自分がその一部になれて本当に光栄でした。オファーを受けた当初は「上手く出来るかな?」とかなり悩みましたが、結果反響も大きくてうれしいですね。

ミッキー:毎回主題歌が楽しみなドラマなんて素敵だものね。

STUTS:おそらく全てを自由に任せてもらえていなかったら、仕上がりも結果も全く違っていた気がします。僕を信じて任せてくれたドラマのプロデューサーさんやスタッフの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

ミッキー:自由にやらせてもらえるというのは一番大事だよね。僕もそうだった。主題歌や劇伴は自由にやらせてもらえると大抵いい結果を生む。つまり、自由にやらせてもらえないものは大抵結果も良くない(笑)。

STUTS:『西遊記』の時はどんな感じだったんですか?

ミッキー:当時としてはかなり自由にやらせてもらえたんじゃないかな。そもそも全英語詞なんてあの時代のテレビ主題歌としては異例だったし。挿入歌まで英語詞でしたからね。サウンドもシンセサイザーやコンピューターを駆使したポップスの先駆けでした。円谷プロでラッシュ(編集前の映像素材)を観た時、「これは完全にコンピューターでやったほうがいい」と僕が言い出しちゃったんだけど、当時はMC-8というシーケンサーで1分のデータを作るのにも一晩かかった時代だった。しかもアナログだから一人が数値を読み上げて、それをもう一人が全て数字で入力するんですよ(苦笑)。

STUTS:うわぁ。

ミッキー:微調整してもどんどんチューニングが狂っていくからもうキリがなくて(笑)。とても苦労しましたね。テレビでは他にも鶴田浩二さん主演の『男たちの旅路』(NHK/1976年)というドラマの劇伴は自由にやらせてもらえましたね。映画では大林宣彦監督の一作目(『HOUSE ハウス』)の劇伴も思い出深いです。大林さんからのオファーで映像よりも先に音楽を作って、その音楽に合わせて大林さんがフィルムを撮った。そういう出会いと経験がいまの自分を作ってくれた。STUTSくんも、いま映画の劇伴の機会に恵まれたら、絶対に良い作品を作るんじゃない?

STUTS:僕も映画音楽はやってみたいです。いくつかコラボレーションとして映像に音楽を付けたことはあるんですが、物語全体に音楽を付けるのはまだ経験していなくて。ミッキーさんのように素敵な出会いに恵まれるといいのですが。

ミッキー:絶対にやったほうがいいですよ。STUTSくんはいま30代だよね? これはお世辞や説法なんかじゃなくて、本当に、40代に入ったらもっと良くなるはずですよ。僕も40を過ぎた頃、ようやく本当の意味でのオリジナリティがジェネレートされ始めた。僕は10代の頃から、いま聴き直してもちょっと難しいなと思う曲を数え切れないほど書いていました。でも、その頃はまだテクニックもマインドも背伸びばかりで、その難しい曲を表現し切れなかった。でも、きっとその頃、どこかで目指すべき音楽家としての姿を、自分自身に約束したんだと思うんです。STUTSくんにもきっとそういう瞬間があったんじゃないかな。

STUTS:僕の大きな転機となったタイミングは二つあります。ひとつはビートを作りはじめた時、もうひとつは音楽一本でやっていこうと決めた時でした。そもそも僕はラップをしたかったんですが、ラップのバックのビートを作り始めたら、そっちの方が向いているのかなと気付いて。高校生の頃は医者になろうと思っていたんですが、途中で音楽にハマってしまって。大学を選ぶ時も、同じように音楽をやっている人にたくさん会えると思って東京の大学(※東京大学農学部卒)に進みました。でも、なかなか音楽だけに絞ろうという勇気が湧かなくて、普通に就職して、仕事をしながら音楽を続けていたんです。やがて1stアルバムをリリースすると、急にいろいろな方が自分の音楽を聴いてくれるようになったので、「ここがチャンスかもしれない」と思い切って会社を辞めました。あの時、音楽一本に絞ったことが自分の中では大きかったですね。

ミッキー:いい決断でしたね。自分が10代、20代の頃に何に感動して、何を感じたか。その頃の閃きを忘れなければ絶対に大丈夫。あとは亀田さんを見れば分かる通り、50代になると今度はリーダーシップが取れるようになる。判断も速いし、自分が全てを触らなくても、「ここはミュージャンに委ねよう」という判断も的確。亀田さんというプロデューサーの存在が今回この曲が成功した一番の大きな要因だと思います。なんてったって50代ってバリバリだからね(笑)。そりゃ歳を取れば身体のあちこちが動かなくなったりもするけど、表現力でいくらでもカバー出来ますから。表現者は歳を取れば取るほど楽しいことがいっぱい増える。そのためには長く続けることが一番だと思います。

STUTS:ありがとうございます。正直、僕は夢とか将来的なイメージといったものがそれほど具体的にはなくて。いまのスタンスを崩さずに、国内に限らず、いろんな方々と音楽を作って、ずっと続けていきたいという程度で。でも、ミッキーさんのお話を聞いていたら、ちょっと自分の未来に希望が湧いてきました。

ミッキー:全く心配ないですよ(笑)。何より、STUTSくんが他のトラックメイカーと大きく違う点は、ビートからメロディが聴こえてくることです。1曲しか一緒にやっていないけど、圧倒的でしたね。

ーーたしかにSTUTSさんのトラックは、ひとつの歌に対して、もうひとつSTUTSさんなりのメロディを乗せることでビートが生まれているような印象を受けます。

ミッキー:きっと自分の中で何らかのメロディが聴こえているんじゃないかと思うんだけど、そこはどうですか?

STUTS:それはあるかもしれません。その感覚は、MPCでライブをやり始めた辺りから備わったような気がします。自分のMPCのライブは、ドラム以外の部分を流して、その上に自分がドラムの部分などを演奏していくのですが、まさにドラムで歌うような感覚でライブしています。

ーーちょっと声楽の延長に近い感じもあるのでしょうか?

STUTS:そういう側面もあると思います。

ミッキー:要するにSTUTSくんというトラックメイカーは新しい時代のボーカリストでもありパーカッショニストでもありメロディメイカーなんだね。やっぱりメロディは基本ですから、そこを担えるのは強い。和音は環境やレイヤーみたいなものだから、メロディに応じていくらでも変えられるものなので。

STUTS:そこまで考えたことがなかったので新鮮です(笑)。ライブにおける“歌っているような感覚”が自然と制作に生かされていたのだとしたらうれしいですし、それに気付かせてもらえたのもうれしいです。

ーーこの曲で本格的なスタートを切った【KoKi】プロジェクトの今後も楽しみです。最後にミッキーさんから改めて今回のコラボについての総括をいただけますか。

ミッキー:今の世の中ってテレビのニュース見ていても、何だか変じゃないですか。全てがちぐはぐというか、ずっと何かがズレているような感じで。

STUTS:そうですね。昔と比べて良くなった部分もたくさんあるとは思いますが、以前はなかった歪みみたいなものが生まれているような気もします。

ミッキー:ものづくりって、究極的には国作りだから。僕は、いまの日本に足らない大きなひとつは、みんなでちゃんとものづくりをするということだと思っています。特に今回のような世代を超えたものづくりが、社会に対するひとつの提案のようなアクションに映ればという思いもある。STUTSくん、Campanellaさん、そして亀田さんのお陰で、「DEAD END ~ LOVE FLOWERS PROPHECY」は、世代を超えたものづくりの好例になったという自負があります。そういう意味でも、多くの人に聴いてほしい一曲だと胸を張ってアピールしたい。

STUTS:そんな風にこの曲が少しでも世の中に良い影響を及ぼしてくれるとしたらうれしいですね。

ミッキー:多くのリスナーに聴いてもらえるとうれしいです。今日はありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

STUTS:こちらこそ。ありがとうございました。

ミッキー吉野&STUTS対談記念プレイリスト
「DEAD END ~ LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS & Campanella」

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ミッキー吉野
「DEAD END ~ LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS & Campanella」
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■書籍情報
Godiego Anniversary Project
『45 Godiego 1976-2021』
2021年6月30日(水)
定価:5,500円(本体5,000円+税)
発行:株式会社KADOKAWA
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