「DEAD END〜LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS & Campanella)」インタビュー

ミッキー吉野×STUTS特別対談 世代を超えたものづくりが投げかける、袋小路な社会へのひとつの提案

 ミッキー吉野が「DEAD END〜LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS & Campanella」を配信リリースした。プロデューサーに亀田誠治、フィーチャリングアーティストにトラックメーカー/MPCプレイヤーのSTUTSとラッパーのCampanellaを迎えた同曲は、1977年に発表されたゴダイゴの同ナンバーのセルフカバーで、現在展開中の「ミッキー吉野“ラッキー70祭”【KoKi】」プロジェクトの第一弾リリース楽曲である。

 閉塞感を打破せんとするパワーに溢れた同曲はどのようなアティテュードから誕生したのか。12月に古希(70歳)を迎えるミッキーと先頃32歳を迎えたばかりのSTUTS。年齢差37歳のリモート初対談が実現した。(内田正樹)

いまは袋小路(=「DEAD END」)みたいな時期

ミッキー吉野(以下、ミッキー):一昨日(6月23日)、誕生日だったよね。そして『Presence』のリリースも、いろいろとおめでとうございます。

STUTS:ありがとうございます!

ミッキー:6月生まれのミュージシャンって結構多いんですよ。ポール・マッカートニーとか。特にギタリスト。Char、ゴダイゴの浅野孝已、ザ・ゴールデン・カップスのエディ藩も6月生まれです。

ーーミッキーさんは6月生まれの方とご縁があるようですね。今回、お二人の顔合わせが実現した経緯を聞かせていただけますか。

ミッキー:今回の【KoKi】プロジェクトのプロデューサーでもある亀田誠治さんとのミーティングで、まずはこの「DEAD END~LOVE FLOWERS PROPHECY」という曲からプロジェクトを始めたいという希望を僕が伝えて。その時、亀田さんが「これは絶対にSTUTSくんがいい。必ず上手くいきます」と推してくれまして。

STUTS:まさかこんな機会をいただけるなんて驚きでした。本当に光栄です。ゴダイゴはもちろん存じていましたが、オファーをいただいて改めていろいろと音源を聴きました。どのアルバムもとても素敵でした。

ーートラックのやり取りについては?

ミッキー:まず僕がデモを作って亀田さんに渡して、そこからSTUTSくんのところに。「僕のピアノを残していただければ、後は何でも自由にやってください」と。だからその時点ではどんな完成形になるのか、僕にも想像がついていなかった。

STUTS:そうですね。ミッキーさんからいただいたLogicのセッションデータを聴いて、そこから考え始めました。途中、BPMも少し変えさせてもらったりしながら組み立てて。

ーーSTUTSさんは今回のように自由度の高いトラックメイクの場合、まずはデモを聴きつつMPCをいじりながらイメージを膨らませていくのですか?

STUTS:はい。特に今回はそうでしたね。デモのリズムトラックのみをミュートして、自分なりにMPCを叩きながら、どんなドラムパターンがいいかと考えて。奇をてらう感じというよりも、まずは気持ち良さを心掛けながらMPCを叩いてました。

ーーつまりMPCによるライブ感を大事に?

STUTS:取っ掛かりはそうでした。バックで流れているリズムやパーカッションはシーケンスで組んでいるところもありますが、キックとスネア、それとハイハットに関してはシーケンスをほぼ使っていません。まずは全て気持ちいいタイミングで叩きながら音を置いて、そこから音を重ねていき試行錯誤の段階に入りました。

ーーこれ、リズムのタイム感もかなり緻密にいじっていますよね?

STUTS:はい。気付いてもらえてうれしいです(笑)。

ーー最初と最後に聴こえる街の雑踏のようなSEは?

STUTS:渋谷と新宿に出掛けてフィールドレコーディングした音を使っています。

ーーSTUTSさんからトラックが戻ってきて、ミッキーさんは?

ミッキー:さらに刺激を受けて、自分のプレイを全部やり直しました。ゴダイゴのオリジナルよりテンポもちょっと上げて、さらにグルーヴを合わせて、ダイナミクスもエンディングのほうでがくんと落として。その時点で入っていた亀田さんのベースも弾き直してもらいました。申し訳なかったけど、そこもまたものづくりの醍醐味というか。これが単なる打ち込みだと、こっちも余計にガンガン弾こうと思ったり、もしくは反対にすごくフラットに弾こうとすると思うんだけど、STUTSくんの叩いたリズムはダイナミクスを付けやすいので、クライマックスをがくんと落として弾くとか、本当にプレイが楽しくてね。今回はコロナ禍ということでレコーディングは全てリモートでした。本当は直接セッションしたかったけど、耳だけを頼りに音楽を作っていくのも非常に有意義な経験でした。

STUTS:ミッキーさんの弾き直しがまた本当に素晴らしくて。自分がビートで叩いた思いがピアノやオルガンで全て拾ってもらえたような感覚で、さらにテンションが上がりました。音楽で会話が成立したような気分です。

ーーラップを入れるというアイデアについては?

ミッキー:僕からでした。ゴダイゴのオリジナルは歌詞のある歌モノでしたが、今回はインストにラップをプラスしたいというイメージが最初からありましたね。

ーー歌モノではなく、インスト+ラップにしようと思った理由は?

ミッキー:コロナ禍に加えて、昨年5月にはゴダイゴの浅野(孝已)が亡くなってしまい、実は僕自身、かなり気持ちがどんよりとしていた時期があったんです。このままじゃいけないなと思い、現状を打破するようなパワーのある音楽を作りたかった。だから最初にSTUTSくんに渡したデモではもっとピアノをガンガン弾いていたんです。いまは袋小路(=「DEAD END」)みたいな時期だけど、だからといってどんよりするとか攻撃的になるのではなく、世相を客観的に見つめ、その上で希望に繋がるような曲にしたいと思ったんです。

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