〈愛してるよ Myra, Myra 腕の中で my love, my love〉（「Myra」より）

　一度聴いたら離れないこのワンフレーズのキャッチーさと、聴き手を包み込むようなやさしい歌声が支持され、TikTok上で若者を中心に人気を集めるシンガーソングライターのTani Yuuki。この「Myra」が昨年から今年にかけてTikTok上でバズを巻き起こし、ナオト・インティライミや天月 -あまつき-といった有名アーティストらもカバーしたことで、今その人気はさらに拍車がかかっている。SNS発のヒット曲が次々に生まれるようになった令和の音楽シーンを象徴する新世代ミュージシャンの一人だ。

　Tani Yuukiは、自身で作詞・作曲・編曲すべてを手掛けるマルチクリエイター。中学生時代にアコースティックギターを祖父から貰ったのをきっかけに音楽を始め、現在は作詞から作曲、サウンドメイクまで一人で行い、ピアノまで弾きこなすマルチな才能を発揮している。そんな彼の音楽の魅力は、まずそのクセのない美しい歌声だろう。例えば、「Myra」における歌い出しの〈ねぇ 朝目覚めるとね〉には、彼がすぐそばに居るような、落ち着きのある親近感がある。日常感や温もりを感じる優しい声質だ。

　かと思えば、主に高音で発揮される線の細い一本の糸のような透き通る歌声も持っている。YouTubeチャンネル・THE FIRST TAKEにて公開された「Myra / THE HOME TAKE」のラストで響かせる美しいファルセットがその良い例だろう。胸を締め付けつような切なさと、自然と耳に溶け込むような透明感があり、聴けば一瞬で魅了される繊細な高い声質だ。低い音程では聴き手に寄り添うような優しい歌声を響かせ、高音ではこうした美声を披露する。