シングル「Kirakira」インタビュー

藤原さくら、生活の充実がもたらしたポジティブなモード 「未来を待ち遠しく感じられる自分でありたい」

 昨年10月に通算3枚目のオリジナルフルアルバム『SUPERMARKET』をリリースしたシンガーソングライターの藤原さくらが、早くもニューシングル「Kirakira」をリリースする。この曲は、APOGEEの永野亮をプロデューサーに迎えて制作された。ニューオーリンズのハネたセカンドラインビートを基調としつつも、色とりどりの楽器が散りばめられたカラフルなポップソングに仕上がっている。永野による精緻なアレンジを、ある意味では突き崩すほど躍動的でエモーショナルな佐瀬悠輔(Gentle Forest Jazz Bandなど)のフリューゲルホルンも、楽曲に強烈なコントラストを放っている。

 『SUPERMARKET』でやりたいことをとことん追求し、歌詞では自己の内面を深く掘り下げた藤原さくら。あれからおよそ半年が経った今、どんな心境でいるのだろうか。延期になっていた中野サンプラザ公演と、大阪、福岡での公演を目前に控える彼女に話を聞いた。(黒田隆憲)

光がキラキラと降り注ぐイメージ

ーーアルバム『SUPERMARKET』をリリースして以降、さくらさんはどんな日々を過ごしていましたか?

藤原さくら(以下、藤原):コロナ禍でずっとライブが出来なかったので、しばらくはスケジュール的にもゆとりがありました。とはいえ、あまり大きな休みもなく動き始めてはいましたね……。本当は、1月16日に中野サンプラザでワンマンをやる予定だったので、そこで新曲があったらいいなとは思っていたんです。そのために、12月末〜1月の初めくらいから曲は作り始めていて。自分でLogic Proを使ってアレンジなどもしていきたいと思っていたので、その練習も兼ねていろんなタイプの曲を作り貯めていました。

ーー『SUPERMARKET』は、「いろんな角度から何でも好きなことをやり切りましょう」というテーマで作ったアルバムでしたよね?

藤原:はい。そこでやり切ってしまって、「次にどういう曲を作ろう?」って。作曲は続けていたのですが、歌詞は全然書けなかったんです。それで今、自分はどんなことを考えているのかな? と自問自答したときに、「今はすごく満ち足りているんだな」ということに気がついて(笑)。

ーーそれはいいことですね(笑)。

藤原:とりあえず今は、次のアルバムのことは考えずに1曲ずつ配信していくのがいいのかなと。しかも1曲ごとに思いきり振り切った、今までにやったことがないアレンジなどにも挑戦していけたらいいなと思ったんです。その最中に中野公演が延期になったので、「じゃあもう少し曲づくりをしようか」という話になり、かなり曲を作り貯めた中からの1曲が、今回の新曲「Kirakira」でした。まだLogic Proで作り込む前の、弾き語りの段階のデモをスタッフに聴かせた瞬間「これで行こう」となりました(笑)。

ーーそれだけインパクトのある曲だったのですね。プロデューサー、共同作曲者としてAPOGEEの永野亮さんを起用した経緯は?

藤原:今回は、「日本語でポップな曲を作ろう」と。そこにはもちろん「カッコ良さ」も入れたかったですし、しかもライブでやるなら前向きな楽曲がいい。だったらまた、永野さんと一緒にやれたらいいなあと思ってお声がけしたら、かなりタイトなスケジュールの中「もちろん!」とおっしゃってくださって。

 永野さんとは、『Someday/ 春の歌』(2017年)と「はんぶんこ」(同)でご一緒して以来だから、もう4年近く経つんですよね。でも、そのときの手応えみたいなものを覚えていて。APOGEEはもちろん、永野さんのソロのアルバムも大好きだし、この曲は永野さんのソロ曲「Path」(『はじめよう』収録)みたいな明るさをたたえつつ、ちょっと今っぽいというか、『SUPERMARKET』を踏襲するようなヒップホップ的なビート感もほしくて。その旨を打ち合わせの段階でお伝えしました。

ーーなるほど。

藤原:しかも、最近引っ越しをしたんですけど、そしたらもうなにもかも楽しく感じて(笑)、「すごくハッピーな曲が書けると思います」という話も永野さんにもしました。

ーー今回、メロディは永野さんと共作したんですよね?

藤原:そうなんです。例えば、『SUPERMARKET』収録の「生活」という曲でも共作に近い形というか、先にトラックを作ってもらって「こういうメロディの乗せ方もあるよ?」みたいなアイデアをVaVaさんに出してもらったことはあるけど、最終的にメロディは自分で考えていたんです。でも、今回は永野さんのアイデアもたくさん入っていて、自分だったら思いもつかないようなメロディが入っているのは楽しいですね。

ーー佐瀬悠輔さんによる、フリューゲルホルンのソロがとても印象的ですね。

藤原:カッコ良かったあ! 最初は全部、永野さんの打ち込みだけで考えていたんですけど、「生の楽器を入れたら面白いかもね」というアイデアをスタッフからいただいて。佐瀬さんは、これから控えているSUPERMARKETのライブにも出てもらうメンバーで気心も知れているし、打診したら快諾してくださいました。

ーー永野さんの精度の高いトラックに、佐瀬さんの躍動的なソロが入ることで絶妙なコントラストを生み出していますよね。曲に生命力が加わったというか。

藤原:本当にそんな感じでした。永野さんが「こんなふうに演奏してほしい」と譜面を作ってくれていたけど、間奏パートは自由に吹いてもらって。いいテイクばかりだったので選ぶのが大変でしたが、一番最初に吹いてもらったテイクに決まりました。それに合わせてまた永野さんがギタートラックを少し調整するというやりとりもあって。永野さんも、佐瀬さんのことをすごく気に入っていましたね。

ーー歌詞はどんなふうに書いていきましたか?

藤原:さっきも話したように、太陽の当たる家に引越しをしたことによって自分の生活、特に朝の時間帯がすごく充実し始めたんです。前の家は太陽が全然入ってこなかったので、改めて太陽の光の大事さを思い知ったというか(笑)。で、そこから光がキラキラと降り注ぐイメージがずっと頭の中にあって。あ、でも最初は「マーブル」というワードも思いついたんです。曲のタイトルも「マーブル」にしたら可愛いな、とも思っていて。

ーー「マーブル」ですか。

藤原:マーブルって、自分の中では「マーブルチョコ」のイメージなんですよ(笑)。マーブルチョコって丸いじゃないですか。「丸」って強いなとも思ったんですよね。なぜなら石ころみたいに転がっても、雨が降っても風が吹いても、どんな状態でもずっと形が変わらない。そこから「丸い」といえば「太陽」とか、「太陽」といえば「光」とか、頭に浮かんで来るキーワードをどんどん書き連ねていって。

ーーなるほど。僕の中では、「マーブル」といえば「マーブル模様」で、いろんな色が形を変えながら混じり合っているイメージなんですけど、それって様々な価値観の人が混じり合って世の中を作っていることの比喩にもなるな、と今話を聞いていて思いました。

藤原:あと今回面白かったのは、ずっとジャケットを描いてくださっている藤田二郎さんに、まだ歌詞がついていない状態のデモをお渡ししたら、そこからイメージを膨らませて描いてくださったジャケットの案の中に、マーブル模様をモチーフにしたデザインがたくさんあったんですよ。それは不思議だったし、ちょっと感動しましたね。「私のイメージが、言葉にしなくても音で伝わったのかな」って。結局、マーブル案は採用されなかったんですけど。

ーーされなかったんですか(笑)。〈きらきら〉〈からから〉〈くらくら〉など擬音を繰り返す歌詞も今まであまりなかったですよね。前回、「生活」のような曲を作った影響が表れているのかなと思いました。

藤原:それもあると思うし、自分が普段聴いている曲にローファイヒップホップみたいなものが多くなってきている影響もあるのかもしれない。コロナ禍で家にいると、そういう曲を聴きがちなんです。まあ、「Kirakira」はローファイヒップホップじゃないですけど(笑)。ちなみに最近は、Tajima Halの「Grape Choice」とかがお気に入りですね。