また、曲中で印象的に登場する〈主役も脇役もそんなの関係ないさ きっと誰もが生まれながらに主人公〉という歌詞は、舞台役者に焦点をあてた本コンテンツの主題歌としても、それを歌うグループのメンバーたちへの心構えとしても、あるいは夢を追いかけるすべての人へ向けた普遍的な応援ソングとしても機能する秀逸なキラーフレーズだ。さらに、大石自身もアーティストとして邁進するミュージシャンであり、この歌の言う”主人公”のまぎれもないひとりであることを考えれば、この曲を通して作品ファンも、そして作曲者のファンも、多くの者がつながれる作りになっているだろう。

　大石と『A3!』の関係は深い。2017年のアプリのサービス開始時から主題歌「MANKAI☆開花宣言」や第二部主題歌「春夏秋冬☆Blooming!」を担当し、他にもいくつかの劇中歌（キャラクターソング）を作曲してきた。その間に「ようこそジャパリパークへ」のブレイクを経験しているため、彼の”ステージ”も変化してきた。いわば、作中のキャラクターたちの成長とともに、彼も音楽家としての成長を遂げている。

　コンテンツの規模拡大とともにキャラクターの成長、そして関わるミュージシャンの成長といった、複合的な魅力を実感できるのは非常に現代的。そういった意味で本作は、2020年らしい一枚と言えるだろう。

■荻原梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter（@az_ogi）