Yogee New Waves、盟友Suchmosとの対バンだからこそ見えた等身大で誠実な姿

 中国ツアーで言葉の壁を感じたからなのか、東京でのライブにリラックスしている様子が伝わる。「今日はハッピーです。集まっていただいて」と、メンバーに笑顔が増えるとオーディエンスもより解放されて、「夜はこれからですから!」という角舘の言葉から滑り込むように鉄板ナンバー「Climax Night」と「HOW DO YOU FEEL?」が鳴らされる。特に「HOW DO YOU FEEL?」での粕谷哲司(Dr)と上野恒星(Ba)のタイトでしなやかなリズムと、さらにフロアを跳ねさせるパーカッション。親密さを伝えるこの曲が本質を携えたまま広がっていく頼もしさを体感した。

 中盤に角舘が話したSuchmosとの縁に連なる「結局、シティポップってなんだったんだろう」というMCが2019年12月のこの日の対バンを一つ象徴していた。彼いわく、Yogeeは山手線内生まれで、東京の退屈や息苦しさから抜け出すための音楽をやっていて、それがニヒリスト的感性のシティポップと呼べるけれども、茅ヶ崎のそれこそ「Life Easy」な感性のSuchmosはシティポップじゃないと、自説を披露。“シティポップ”というもはやカリカチュア化した言説を皮肉っているようでもあり、そういう部分でもこの日のYogeeは冴えているし等身大だった。

Yogee New Waves

 終盤もライブの定番ナンバーが立て続けに演奏され、「Bluemin’ Days」では〈花束をあげよう Suchmosに!〉と歌詞を変えたりして、楽しさを素直に表す。フロアも曲に乗せて自由に手が挙がり、一緒に歌っている人もいた。Yogeeの世界観を愛する人たち、そしてよりカジュアルに曲を好んでいる人たちのオープンなパワーがフロアの隅々まで広がっていたのが印象的だ。本編ラストの「Ride on Wave」では角舘が何度もパーカッションソロを要求し、オーディエンスもさらに熱を帯びていくのがわかった。ここまでバンドとオーディエンスが感情を爆発させるYogeeのライブを個人的には初めて見た気がする。相互にリミッターが外される理由がこの日の対バンというシチュエーションや、お互いに東京でのライブが久しぶりだったことも起因しているのかもしれない。Yogeeのアンコール、「Good Bye」はもはや普遍的なロックンロールの輝きに満ちていた。

Yogee New Waves

 いつだってステージの上で嘘はつけないと思うが、この対バンだからこそ結果的にここまでお互い誠実なライブを見せることになったのだと感じた。Yogee New WavesもSuchmosも単にステージアップしたというより、人としての度量の深まりを感じずにいられなかった。この素晴らしい夜は、しばらく記憶から消えないだろう。

(写真=Naruki Yamaguchi

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

Yogee New Waves オフィシャルサイト
Suchmos オフィシャルサイト

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