作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第21回

作詞家 zoppが予想する、令和に求められる歌詞の傾向 「“低温の応援歌”がもっと増えていく」

「これからより必要とされそうなのは“自分を応援する歌”」

ーー令和ではどんな歌詞が流行ると思いますか。

zopp:宇多田ヒカルさんの「Movin' on without you」のMVのような、リアルではない相手を対象にした曲がもっと増えていくんじゃないでしょうか。映画ではロボットとの恋愛、などといったテーマも多いので、音楽にもその流れが入り込んでくる可能性があるのではないでしょうか。最近ではバーチャルなキャラクターのコンサートも増えていますし、もっと人気が出ていきそうですね。以前はアイドルなどに純真無垢なイメージや夢を抱いたりしていましたが、そのイメージが薄れてきて、いわゆるオタクだけでなく一般層の人もバーチャルな存在に流れていくんじゃないかなと思います。“デジタルラブ”というか。

ーーVTuberがアーティストデビューしている例も増えていますよね。

zopp:まさにそうですね。また、日本では歌い手の見た目も気にする傾向がありますが、VTuberの場合は実力があれば、キャラクターを通して人気を得られるので、門戸が広がりそうですね。

ーーバーチャルな存在を意識した歌以外に、今後増えていきそうな歌詞はありますか。

zopp:これからより必要とされそうなのは“自分を応援する歌”です。頑張らないといけない空気感がある一方、特に若者に頑張ることが苦手な人は多い。ウルフルズの「ガッツだぜ!!」が100とすると、30〜40くらいの“低温の応援歌”がもっと増えていくんじゃないかなと思います。「頑張れ」というより、「大丈夫」というスタンスで、背中を押すよりも肩を組んだり手をつなぐようなイメージですね。例えば、back numberは“低温のラブソング”というイメージがあります。恋愛はしているけど、どこか冷めている。あいみょんさんや米津玄師さんもそう。平成の初期は小室哲哉さんがカラオケで練習してもらえるようにとにかくキーを高くして、憧れの存在だったアーティストや曲を生み出していました。でも今は“共感系アーティスト”が多いので、その流れが続くんじゃないでしょうか。「世界に一つだけの花」のような、“ナンバーワンじゃなくてオンリーワン”というスタンスになりそうです。その先にもう一回、熱い歌やアーティストがくるかもしれませんね。

 平成のシングルTOP10もとても普遍的な曲が多いですが、令和のトップ10を見ても、歌っていることは普遍的なんじゃないかなと。あとは人間の寿命も延びていますし、セカンドライフに焦点を当てた歌詞も出てくるかもしれませんね。

ーースマートフォンの進化も歌詞に影響していくのでしょうか。

zopp:スマホは自分とは別のもの、相棒といったイメージでしたが、メガネや、身体にICチップを入れたりするようになったらまた変わりますよね。連絡手段は恋愛ソングに大切な要素。スマホが進化するとアイテムや方法論は変わりますが、感情は不変だと思います。

ーー平成はCDからMD、ストリーミングや配信と音楽メディアが大きく変化した時代でもありました。令和におけるヒットの指標はどう変わっていくのでしょう。

zopp:平成最後のヒット曲の一つ、「Lemon」(米津玄師)と「U.S.A.」(DA PUMP)を考えると、「Lemon」はドラマ主題歌ですが、「U.S.A.」はネットから広まった曲です。初期はまだテレビの影響があると思いますが、YouTubeやSNSから盛り上がってヒットする曲ももっと増えていく気がします。

(取材・文=村上夏菜)

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