スカート、ゲスト招いたツアー最終公演 清々しさが胸を熱くした2018年バンド形態ライブ納め
澤部渡のソロプロジェクトであるスカートが、10月31日にリリースしたシングル『遠い春』を携え、全国6都市を回るワンマンツアーを11月より開催、そのファイナル公演を12月19日、東京・キネマ倶楽部で行なった。スカートのライブをバンド形態でやるのは本年最後とあり、会場には多くのファンが詰めかけた。
かつてのグランドキャバレーを改装した、昭和の趣があるレトロなキネマ倶楽部。そのステージが暗転し、佐藤優介(Key)、シマダボーイ(Per)、岩崎なおみ(Ba)、佐久間裕太(Dr)を率いた澤部が現れると、割れんばかりの拍手がフロアから巻き起こる。そんな中、まずはスカートの代名詞とも言える初期名曲「ストーリー」からライブはスタートした。丸襟の白シャツを、一番上のボタンまでしっかり留めたいつもの出で立ちの澤部が、トレードマークである爽やかなブルーボーイ・カラーのリッケンバッカー360を軽やかにかき鳴らしながら、緩急自在のリズムの上で切々と歌い上げる。
「こんばんは、スカートです!」と、簡単に挨拶すると間髪入れずに「さよなら!さよなら!」へ。躍動感あふれるシマダボーイのコンガと、複雑なシンコペーションを繰り出す佐久間のドラム、その隙間を縫うような岩崎のスラップベースがダンサンブルなリズムを構築していく。サビでは一転、縦ノリの8ビートが開放感と焦燥感を同時に煽り、その瑞々しいまでの“青さ”は初期The Style Councilのようだ。続く「いい夜」は、そこからさらにテンポアップ。目まぐるしく変化していくストレンジなコード進行が、XTCもかくやと言わんばかりのパンクチューンだ。
「ツアー最終日にお越しいただき、ありがとうございます。新しいシングルから1曲やります!」と紹介したのは、くだんのシングル『遠い春』から「いるのにいない」。アコギに持ち替えた澤部が、バックビートを強調したアップテンポでジャジーなリズムを刻む。さらに、そこからシャッフルの名曲「ランプトン」へ。ディミニッシュ・コードを駆使した泣きのメロディと、ジャカジャカと三連符でかき鳴らされるパンキッシュなアコギ、浮遊感たっぷりのメロディが三位一体になって聴き手の琴線を揺さぶりまくる。そして、「大阪公演から(セットリストに)組み込んだ」というタイトル未定の新曲へ。こちらはメジャー7thのアーバンな響きとラテンパーカッションの躍動感が見事に融合した、コーク・エスコヴェードの「I Wouldn't Change A Thing」や、Americaの「Ventura Highway」あたりを想起させる爽やかな楽曲だった。
「ここでゲストをお迎えします。Ropesからachicoさん!」
澤部が呼び込み、シェイカーを片手にachicoが登場すると、舞台は一気に華やぐ。ニコニコと笑顔を振りまきながら、「パラシュート」では照れ臭そうに笑う澤部と口笛をユニゾンした。そこからメドレーのようにつなげた「視界良好」では、フェンダー・テレキャスターを歯切れよくカッティングしながら熱唱する澤部の横で、伸びやかなハーモニーを披露。曲の後半で彼女がフロアに向け、ハンドクラップを誘うと会場はさらに一体感に包まれた。
「せっかくなので、古い曲もachicoさんとやろうと思って」と言って披露したのは「おばけのピアノ」。2013年のアルバム『ひみつ』の冒頭を飾るミドルバラードだ。さらに「ストーリーテラーになりたい」では、ベースの岩崎とachicoがキュートな女声ハーモニーを響かせ、オーディエンスは一気に幸福なムードへと包まれる。感極まったのか、岩崎がピョンピョンとジャンプしながらベースを弾くと、会場からは大きな歓声が上がった。そして、シングル音源にも参加した「遠い春」を伸びやかに歌い上げたachicoは、「楽しい夜を」と笑顔で挨拶しステージを去った。
「東京はスペシャルということで、さらにゲストを投入します!」
ここからは在日ホーンズから村上基(Tp)、ジェントル久保田(Tb)、橋本剛秀(Sax)が加わり、TVドラマ『忘却のサチコ』の同名オープニング曲を演奏。村上のアレンジによる、グルーヴィーなアンサンブルに思わず体が動き出す。続く「わるふざけ」は、スカートの1stアルバム『エス・オー・エス』に収録された人気曲で、イントロが流れ出した途端に大きな歓声が上がった。曲のブレイクから展開されたホーンセクションは、まるでポール・マッカートニーの「Take It Easy」後半部のような清々しさで胸が熱くなる。そんなホーン隊と共に演奏された名曲「返信」も、The Style Councilの「My Ever Changing Moods」のような、モダンで熱いブルーアイドソウルへとバージョンアップされていた。
「前からこの曲に、ホーンを入れてみたかったんです。やりたくて出来なかった曲も、ワンマンだと出来るから嬉しいですね」と言って演奏したのは、『20/20』から「オータムリーヴス」。クラリネットをフィーチャーしたノスタルジックなアレンジが、澄み切った師走の空気に優しく溶け込んでいくようだった。