『大人になって』インタビュー

odol ミゾベ&森山が語る、“美学とらしさ”「ポップスを一人ひとりのものとして捉えている」

「一人ひとりのものになる音楽」(ミゾベリョウ) 

――前にThe Cureのロバート・スミスが「たとえ何万人いても君らは一人なんだ」みたいなことを言っていて。ART-SCHOOLの木下理樹がその言葉にすごく共感したという話をしていたんですよ。つまり一体感を目指して、みんなのものになるというポップスはあるけれど、それとは別に、一人は徹底的に一人である、だからこそ繋がりあえるというポップスもある。odolは後者を追求しているように思うんです。そういう話を聞いてピンとくる感じってあります?

森山:かなりあります。「GREEN」という曲を作って、その概念に辿り着いたような感じがあって。究極に普遍的なものは個人的、主観的なものでしかないという、一つのあり方として見つけたというか。哲学の話じゃないですけど、結局主観でしか世界は語れなくて、だから何かをみんなで共有するのは本当の意味では無理で。でも、共有することができないという主観はみんなに共通しているはずっていう。そういう話を『視線』の時期にしてたんです。

ミゾベ:メンバーもそうだし、僕と森山でもそういうことを深く話してたので。もともと音楽を始めたときから、ライブ会場でみんなと一体となって楽しむとか、運動会を学年みんなで盛り上げるぜ、みたいな感じじゃなかったので。みんなのものというよりは、一人ひとりのものになる音楽。そういう音楽のあり方が、自分にとってピュアなので。何も意識しなくても、そっちの方向に行くんだと思います。

森山:そういうポップスのあり方を僕らが共通認識として言葉で持ってると、いろんなことが上手くいきそうな気がします。ポップスを一人ひとりのものとして捉えている人たちが集まっているバンドだと思うので。

――先ほど言った「Overthinking and great Ideas(O/g)」という対バンツアーの話も聞ければと思います。これはどういう意図や狙いなんでしょうか。

森山:このタイトルは、さっきも話したんですが、僕たち主催のodolらしいイベントを作っていきたいよねっていう話があって。でも“odolらしい”ってなんだろうみたいなことを2週間くらいずっと考えちゃって。全然いいイベントタイトルが浮かばず、せっかくメンバーも揃ってるのにずっとカフェにいるみたいな時間があって。そういう時間自体がodolだとよくあるし、しかもその時間を大切にしているということに気付いたんですよ。それに対して、ライブっていうのは思考じゃない形で回答が得られるような場所だなと思っていて。ある意味では自分たちのためのイベントだし、お客さんにとってもそういう場になればいいなっていう。

ミゾベ:それで、音楽や音楽に向かうスタンスで、僕らがシンパシーを感じるような、出てほしいなって思っていた人たちに声をかけたんです。そうしたら、みなさん「いいですよ」って出演して頂けることになりました。

――ちなみに、最近インスピレーションを受けた、よかったなと思う音楽ってどのあたりですか?

森山:ごく最近で言ったら、小袋成彬さんの『分離派の夏』。メンバーの(Shaikh)Sofian(Ba)が宇多田ヒカルさんが好きで「マジでヤバい」って言っていて。確かにそうだなって思います。あとはもう少し前で言うと、全員に共通していそうなものだと、アウスゲイルはけっこう聴いています。

――秋のアルバム発売に向けて曲を作っているという話もありましたけど、1曲1曲、実験性の高い曲が今まさに沢山できつつあるという感じなんでしょうか。

森山:そうですね。実際にそういう曲もできてきているし、新しいことをやりたいっていうのはずっと変わらないので、いろんなことを試しながら作っていってるって感じですね。

――先ほどマネージャーさんに、デモ段階の曲を少し聴かせてもらったんですけど、マーチングバンドの感じが入っていたりと、かなり新しいサウンドになりそうですね。

森山:あれは雄大な感じがあって、いい曲になるんじゃないかなって思ってます。あの曲も普通にメロディとコードができて、そこからデモを一度完成させたんですけど、なんか違うなって思っていて。でも、大サビの部分はすごく輝いてるから、そこを活かしたい、っていうメンバーの気持ちもあって作りました。フラットな状態というか、かなり正直に作れた曲なんじゃないかなって思ってます。1stアルバムに「生活」っていう曲があって。「生活」はいまだにライブで演奏するし、代表曲の一つだと思ってるんですが、あれもフラットな状態で作ったんですよ。あのときのテーマは“名曲を作ろう”っていう話で。フジロックのROOKIE A GO-GOに出ることが決まって、そこで演奏する曲を作ろう、という。そういう感じがまたある。名曲になる予感がしてます。

(取材・文=柴 那典/写真=下屋敷和文)

odol『大人になって』

■リリース情報
odol 2018年第2弾配信シングル『大人になって』
ダウンロード&ストリーミングにて発売中
<収録曲>
・大人になって

■ライブ情報
『odol LIVE 2018 “O/g”』
6月3日(日)宮城・仙台 spaceZero
ゲスト:iri/集団行動
6月9日(土)愛知・池下 CLUB UPSET
ゲスト:mol-74/集団行動
6月16日(土)福岡・graf
ゲスト:Predawn/STEPHENSMITH
6月17日(日)大阪・CONPASS
ゲスト:mol-74/集団行動
8月3日(金)東京・表参道 WALL&WALL
ゲスト:世武裕子

6月24日(日)東京・渋谷 WWW X『DRIP TOKYO@WWW X』
W:雨のパレード/PAELLAS
7月8日(日)愛知・名古屋 CLUB UPSET『UKFC on the Road 2018』
7月29日(日)新潟・苗場スキー場『FUJI ROCK FESTIVAL’ 18』

■プロフィール
福岡出身のミゾベリョウ(Vo/Gt)、森山公稀(Pf/Syn)を中心に、2014年東京にて結成。
現代のアートロックと言える先進性とオリジナリティ、日本語詞の歌と美しいメロディから生まれるポピュラリティを兼ね備えたロックバンド。
全楽曲の作曲をしている森山公稀は、現在東京藝術大学に在学中であり、舞台や映像作品の劇伴なども手掛けている。また、他アーティストへの楽曲提供も行なっている。

2014年7月、『FUJI ROCK FESTIVAL’14 ROOKIE A GO-GO』に出演。
2015年5月、1st Album『odol』をリリース。
2016年5月、2nd Album『YEARS』をリリース。タイトル曲「years」が日本郵便『ゆうびん.jp/郵便年賀.jp』のWeb CMに起用される。
11月、早川知輝が加入して6人体制となる。
2017年1月、新木場STUDIO COASTにて開催された、TWO DOOR CINEMA CLUB来日公演のオープニング・アクトを務める。
9月、1st EP『視線』をリリース。
現代のアートロックと言える先進性とオリジナリティ、日本語詞の歌と美しいメロディから生まれるポピュラリティを兼ね備えたロックバンド。
2018年3月、配信シングル『時間と距離と僕らの旅』リリース。
5月、配信シングル『大人になって』リリース。
7月、『FUJI ROCK FESTIVAL’18』に出演が決定している。

■関連リンク
odol オフィシャルサイト
odol オフィシャルTwitter
odol オフィシャルInstagram

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