uchuu; Kに聞く、最新テクノロジーとコラボした表現に挑む理由「最先端の人と混じり合いたい」
「まだ見ぬテクノロジーや前衛的な手法は、古き良きものとは違ったロマンがある」
ーー新体制になり、バンド表記も「uchuu;」に変更してから初のアルバムとなりますが、制作自体はいつ頃からスタートしたのでしょうか。
K:昨年9月にリリースしたEP『KEEP ON』を作っている段階から、アルバムの構想のようなものは考えていて。その次に出したEP『WHITE』で弾みがついた感じですかね。この2曲が持つ温度感、グルーヴ感を軸としたアルバムにしたいなとは思っていました。
ーーEP『KEEP ON』には、2013年のアルバム『Weltraum;Gate』に収録されていた「TimeLINE」を、今のメンバーでリアレンジしたバージョンがあって、この2つを聴き比べることで、uchuu;がどこへ行こうとしているのかがよくわかりますね。
K:そうですね。今までの僕らは、最終的に「ロック」のフォーマットに落とし込むということをしてきたんですけど、今回はサウンドではなくアティテュードとしてのロックは受け継ぎつつも、サウンド面ではかなりエレクトリックなアプローチというか。ダンスミュージックに寄せつつ、それでいてウォームなサウンドを目指しました。
ーーその変化は、メンバーチェンジしたことによる必然なのか、あるいはKさんの中で既にそういうモードになっていたのか、どちらだったのでしょうか。
K:今のメンバーに落ち着いてからこそ、こうしたサウンドへのアプローチができたというのもありますが、僕の中でも変化はあったのかもしれないですね。というのも、曲の作り方が今までとかなり違うんです。
ーーどんなふうに違ったのですか?
K:以前は「一曲入魂」というか(笑)、その曲が求めるアレンジに対して一つ一つじっくり取り組んでいたんですね。でも今作は、アルバム全体のイメージをまず重視して。「このアルバムにはこういう曲が必要だ」「じゃあ作ろう」みたいなやり取りもありました。結果的に、一つの楽曲に詰め込められた情報量がかなり減ったと思うんです。アルバム全体を通して聴き心地のよいサウンドというか、引き算ベースのアレンジになりましたね。
ーー「アルバム全体のイメージ」とは、具体的には?
K:アルバムのタイトルが『2069』で、これは1969年から100年後の世界ということなんですね。だから、1969年という時代のことはかなり調べたので、そこからの影響もかなりあったと思います、先人へのリスペクトも含めて。
ーーなぜ1969年だったのでしょう?
K:ここがポピュラーミュージックのターニングポイントだと思うからです。「ロックとは何か、ロックという言葉が生まれたのはいつだったのか」ということを突き詰めていくと、1969年の『ウッドストック・フェスティバル』にたどり着くと思うんですよ。しかも、あの大規模なロックフェスが、一体どんな経緯で開催されることになったのか、あの場には一体どんな人たちがいたのか。当然音楽だけでなく、当時のカルチャーや社会情勢についても調べましたね。
ーーそうやって「調べ物」をするのは好きな方?
K:好きですね(笑)。調べても調べても、キリがないような「飽くなき探求」みたいなものにロマンを感じるというか。答えがないことを調べていって、自分なりの答えを見出していくことが楽しいんですよね。
ーー子どもの頃からKさんは、Led Zeppelinなど当時(60年代)のロックをよく聴いていたんですよね。そのことも、1969という時代にこだわる理由だったりしますか?
K:それもあるでしょうね。ロックって結局、1960年代からそんなに進歩していないと思うんですよ。歌われる歌詞や、アプローチの仕方は時代によって変化していきますが、楽曲の構造やサウンドってそんなに変わってない。確立されてしまったことがとても多いんですよね。
ーーその一方で、uchuu;は最新テクノロジーを、自分たちの作品に積極的に取り込んでいます。例えば、DMM VR THEATER YOKOHAMA(世界初の常設型3Dホログラム専用シアター)で演奏したり、『WHITE』のリード楽曲「FLY」のMVは8Kカメラを使って撮影したり。
K:「新しいものへの期待感」って、人間誰しも多かれ少なかれ持っていると思うんですよ。まだ見ぬテクノロジーとか前衛的な手法というのは、古き良きもの、残ってきたものとはまた違ったロマンがあるというか。アルバムタイトルを『2069』にしたのも、「2069年になっても残っていてほしい音楽」を目指したからなんです。
ーー今から51年後、一体どんな世界になっているんでしょうね。
K:割と変わってないんじゃないかなって思うんですよ。でも……木々が溢れる世界になっていて欲しいですね(笑)。高層ビルがひしめき合ってて、車が空を飛んでいて、という世界ではなく。
ーーちなみに今回の新曲「BOY」では、VFXを用いてのMV撮影を行なったそうですね。
K:まだ完成してないので、どうなってるのかよく分からないんですよね(笑)(注:インタビュー実施は4月初旬)。でも、ディレクターのHiRo(FantasticMotion)さんは著名なアーティストのMVも手掛けている方で、音楽への理解もすごくあって。僕は『スター・ウォーズ』がめちゃくちゃ好きなんですけど、HiRoさんは「いつか『スター・ウォーズ』の仕事に関わりたい」っておっしゃっていて。そういうところでも話が弾みましたね。どんなふうに仕上がるのか楽しみです。
ーー最新テクノロジーを積極的に取り入れてきたことで、曲作りの仕方も変わりましたか?
K:「こういう映像がハマったらいいな」とか、考えながら曲を作ることもあります。今作でいうと、「After Goodbye...」はまさにそういう曲でしたね。自分の中で登場人物のイメージがあって、相関図もあり、時系列はこうなってて……みたいなことを、実際に紙に書き出したんです。詞先で作る曲の場合、映像のイメージが最初に出来上がっていることも多くて、たまにそういうことをしていますね。過去曲でいうと「Yellow」もそうでした。ベンジャミン赤井さんという、関西のクリエイターとディスカッションしながら作りましたね。